人気のスティック掃除機 劇的進化遂げた注目の3製品
白物家電に注目する男性が増えている。これまではテレビやオーディオなどの「黒物家電」と呼ばれるものに関心を示し、冷蔵庫や掃除機、調理家電などの「白物家電」は女性に任せる、という傾向が強かったのだが、最近は白物家電売り場に男性の姿が目立ち、男性向けモノ雑誌でも白物家電が特集される機会が増えてきた。その理由の1つとして、調理家電にデジタル技術、掃除機にロボット技術など、男性が関心を持つ最新テクノロジーが続々と投入され、大幅に進化している点があげられるだろう。実際、最新の白物家電の「家電ゴコロ」は、男の好奇心をそそる新機能にあふれている。
今年も、夏のボーナス商戦に向けて、白物家電の新製品が次々に登場している。今シーズン、最も大きな変化が見られたのがスティック掃除機だった。ここ数年、徐々に存在感を増してきたスティック掃除機だが、今年5月、ダイソンがバッテリー駆動で40分稼働する新型スティックを発表。国産メーカーも次々に新モデルを投入してきた。最新技術という視点で見た場合、今年の注目度No.1の白物家電はスティック掃除機といっていいだろう。
そこで、今年登場したスティック掃除機から3機種を取り上げ、注目の機能を紹介する。最新のスティック掃除機は何が進化したのか。メーカーごとに取り組むポイントが異なるのも興味深い。
吸引力だけでなく持続時間も向上させたダイソン
少し前まで、掃除機というと、コンセントに接続する昔ながらのキャニスター型がスタンダードだった。しかし、現在では、ロボット型やコードレスなどさまざまなモデルが登場し、掃除のスタイルに変化が現れている。そんな中、掃除機市場における主役の地位に躍り出たのが、コードレスのスティック型掃除機だ。スティック掃除機はこれまでキャニスター型の補助、または単身者用という印象が強かったが、最近では、キャニスター型に代わるメーン掃除機として当然のように選ばれるようになっている。実際、掃除機のタイプ別売り上げを見ても、スティック型掃除機はシェアを伸ばし続けている。
スティック型掃除機は、いちいち電源コードを差すことなく、使いたいときに、使いたい場所でサッと使えるという利点を持つ。そのため、掃除にまとまった時間がとれないという人たちに支持されてきた。また、デザイン性が高いモデルが多く、いちいち押し入れなどにしまう必要もなく、リビングなどに出して置けるのも特徴。実際、家電量販店ではなく、セレクトショップから人気に火がついたモデルもある。
一方で、これまでのコードレススティック掃除機はバッテリーで駆動する関係で、キャニスター型と比べて吸引力が低かったり、駆動時間が短かったりといった欠点があった。しかし、状況は今、大きく変わりつつある。
その変化をけん引してきたのが、サイクロン方式の掃除機を生み出したダイソンだ。同社は、吸引力が低く実用性が低いと言われてきたコードレス型のスティック掃除機で、強力な吸引力を実現。スティック掃除機をメーン掃除機として使うトレンドを訴求してきた。
そのダイソンの弱点が駆動時間だった。同社のスティック掃除機は、高速回転する独自の「ダイソンデジタルモーター」を搭載することにより、吸引力は非常に高かったが、昨年のモデルまでは連続して利用できる時間が最長20分と短かった。このため、ピンポイント掃除には向くが、部屋全体や複数の部屋を掃除するのには適していなかった。そのため、キャニスター掃除機と併用して使っていた人も多かった。
しかし、ダイソンは今回、吸引力はそのままに持続時間を延ばした新モデルを投入してきた。
今年5月に発表された「Dyson V8」シリーズは新型モーターとリチウムイオンバッテリーを採用し、連続稼働時間は40分と、従来モデルの倍に伸びた。掃除中にバッテリーが切れる心配が少なくなったのだ。
従来モデルまでにあったその他の弱点も改善されている。
新型の「ダイソンデジタルモーターV8」は、吸引力をアップしながらも、運転音を約50%低減。特に気になる高音域の音が小さくなっており、早朝や深夜などの時間でも使いやすくなっている。
ダイソンのコードレス掃除機は、従来モデルでも、ワンタッチでゴミが捨てられるが、サイクロン部分とクリアビンの間が狭く、ゴミが引っかかることがあった。しかし、新型のV8では、サイクロン部分を引き抜くワンアクションでゴミが捨てられるように進化。より手軽にゴミが捨てられるだけでなく、また、サイクロン部、ダストビンなどを分解して、メンテナンスできるようになっている。
メタリック調の上質なデザインと、サイクロン技術を生み出したという歴史、そして他にはない最新の高速回転モーターの採用といった要素はまさに男性に刺さる部分。最新テクノロジーと"ハイパワー"にときめく男性におすすめだ。
パナソニックのスティックは「隙間掃除力」を向上
パナソニックが2016年5月に発表した「IT MC-BU500J」は、本体幅がコンセントタップ幅とほぼ同じ7.2cmしかない非常にスリムな掃除機。サイクロン方式を採用し、ハウスダスト発見センサーが約20μmのゴミまで検知して、しっかりと掃除することができる。
パナソニックで注目したいのは、隙間掃除に強いヘッドのメカニズムだ。
ボディー上部にあるグリップを持ち、手首をひねるだけで、ノズルが立ち上がる「くるっとパワーノズル」を採用。この状態ではノズルの幅が約5cmにまでスリムになるため、壁と棚の隙間などにそのままノズルを差し込んで掃除することができるのだ。これなら、いちいち隙間ノズルなどに付け替える手間がない。
未使用時は本体を壁に立てかけることが可能。上質感のあるスリムボディーなので、リビングの端などに出しっぱなしでも違和感はない。
電源ボタンを押す必要がないシャープのスティック
2016年5月に発売されたシャープの「FREED EC-SX520」はコードレス掃除機ながら、ヘッドに「パワーアシスト機能 e-ドライブ」を搭載するモデル。同じデザインを採用した前モデルの登場時にはそのフォルムが某有名ゲームに出てくる武器に似ているとネット上で話題になった。その未来的なデザインが「男ゴコロ」をくすぐってくれる。
ヘッド内にモーターを搭載しているため、ヘッドが自然に前に進む。掃除するときに力がいらないのが特徴だ。
注目すべきは使い勝手の良さだ。使っていない時に自立する「マジックバランス」という機能により、スタンドなどを用意したり、ソファなどに寝かせることなく、その場に立てかけることができる。さらに自立させると自動的に吸引を停止、本体を倒すと再び活動を開始するスタンバイ機能も搭載。掃除を始めるときもやめるときも、いちいち電源ボタンを押す必要がないのだ。
またバッテリーが2つ付属しているのも興味深い。両方を充電しておけば、電池を交換して使うことで最長60分の掃除が可能だ。
吸引力のダイソン、隙間掃除のパナ、手軽なシャープ
以上、登場した新型スティック掃除機の特徴を紹介したが、それぞれどんな家庭に向いているのだろうか。
吸引力がアップし、さらに稼働時間も長くなったDyson V8 Fulffyは、メーンの掃除機として使える機能を持つ。一般的な70~80平方メートルのマンションならこれ一台で家中掃除することもできるだろう。また、吸引力の高さは、ラグやカーペット敷きが多い家庭、またペットを室内で飼っている家庭などで力を発揮するに違いない。
パナソニックIT MC-BU500Jの最大の魅力は「狭い部分に強い」ということ。例えば、向かい合わせのソファや多くの棚などを置いた応接間、リビングにもサイドボードに、本棚など多く家具が並ぶという家は、隙間掃除に手間がかかるはず。ITはそういった空間に強い。広い部分はT字で掃除し、隙間の掃除はサッとI字に切り替えて掃除ができる。家具が多い家、そして、隙間掃除の手間を減らしたい人におすすめしたい。
ヘッドにパワーアシスト専用モーターを搭載し、さらに、使っている途中でも手軽に単体で自立させられるのが、シャープFREEDが便利な点。軽いスティック掃除機とはいえ、パワーアシストで軽快に走れるかどうかの違いは大きい。疲れたときや他にしなくてはいけないことが発生した場合も、サッと止めて立てて置ける。専用バッテリーを交換することで最長60分掃除できるスタミナも魅力。1台で家中をじっくり掃除したいといったニーズにも向く。
忙しい人のメーン掃除機に最適なスティック掃除機
このように、この夏、スティック掃除機の吸引力と使い勝手は大幅に進化した。
もともと、使う度に押し入れから出し入れしたり、コンセントを差したりする手間がなく、使いたいとき、ちょっと時間が空いたときなどに手軽に掃除できるのが、スティック掃除機のメリット。まとめて掃除する時間がとれないビジネスパースンに支持されてきた。そこに高い吸引力と持続時間、使い勝手の良さがプラスされた今、多くの人にとってメーンの掃除機として十分な機能を持つようになったといっていい。また、スティック掃除機は、ノズルを交換することでハンディ掃除機としても使えるなど、多彩なシーンで活躍できる特徴も持つ。
もし今、メーン掃除機の買い替えを考えているなら、ぜひスティック掃除機も候補にあげるべきだ。吸引力はそのままに持続時間を延ばしたダイソン。コンパクトなボディーに隙間も掃除しやすいヘッドを持つパナソニック。60分連続して使え、電源ボタンを押さずに掃除が休止・再開できるシャープ。あなたの好奇心に最も強く訴えかけてきたのはどのスティック掃除機だろうか。
(デジタル&家電ライター コヤマタカヒロ)
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