「在日ファンク」、明るい歌詞と強力グルーブ
2ndアルバム発売、ハマケンの俳優業で話題
ファンクの帝王、ジェームス・ブラウン(JB)を敬愛し、"日本に在りながら"ディープなファンクを探求することが名前の由来の7人組バンド、在日ファンク。インパクトの強いバンド名にたがわぬ、体が自然と動き出す強力なグルーブに乗せ、ボーカルの"ハマケン"こと浜野謙太が毒やトゲのある言葉を繰り返す楽曲は中毒性が高く、耳の早い音楽ファンには知られた存在だ。
そんな彼らの2ndアルバム『レインボー』が5月に発売された。ファンクという、日本ではいまだマイナーの域を出ないジャンルを、より幅広い層に聴いてもらう工夫が今作には見られる。顕著なのが詞だ。「ファンクはグルーブやリズムが強いので、意味や重みがつり合う歌詞となると、前作収録の『根にもってます』のようなネガティブな単語のほうがハマるんです。ただ、自分の中にあるポジティブさを歌ってもいいものは作れるんじゃないかと。今回は照れを隠さずに、あえてそこにチャレンジしました」(浜野、以下同)
確かに本作には、好きな人を褒めちぎる『君のいいところ』や、環境や人に『いいこと』しようと訴えるアップチューンなど、今までにない明るい歌詞の曲が並ぶ。
新しい領域に踏み込めたのは、前作の『笑うな』でマニアックなファンクを存分に表現できたことが大きいという。「これぞ在日ファンクという音楽を前のアルバムでやり切ることができたので、今回は肩ひじ張らずに作れました。今作ではほぼ9割の曲を僕が書いたんですが、リード曲に選ばれたのはギターの仰木が作った『それぞれのうた』だったことに関しては、少し納得がいっていません(笑)」
また意識の変化のきっかけは、浜野が近年俳優として朝ドラ『とと姉ちゃん』などに出演していることも無縁ではない。昨年の連ドラ『ナポレオンの村』出演時には、共演したムロツヨシの演技に衝撃を受け、その影響は音楽にも及んだという。「ムロさんて、カメラが回っていない時もずっと面白いんですよね(笑)。音楽でいうならば、ムロさんは強力なグルーブをいつも保っているからこそ、お芝居中もアドリブが自然だし、いい演技ができているんだと思ったんです。それからは、ライブで恥ずかしくても観客の目を見るようになりました。僕からお客さんへの関係性を断っちゃうと、一緒に盛り上がれないですからね」
最近では、マーク・ロンソンとブルーノ・マーズのコラボ曲『アップタウン・ファンク』が全世界で大ヒットするなど、ファンクへの明るい兆しも見えはじめた。事実、念願だった「フジロックフェスティバル'16」への出演決定もそのひとつの表れだろう。テレビでの活躍や音楽シーンの潮流を追い風に、在日ファンクの音楽が広く響く好機がついに訪れたようだ。
(「日経エンタテインメント!」6月号の記事を再構成。敬称略、文・橘川有子)
[日経MJ2016年7月1日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。