英語で話をさえぎれますか?
デイビッド・セイン(11)
新人の伊藤君は真面目、上司の教えはきちんと守り一生懸命仕事をしています。「もし相手に間違いがあったら、きちんと正すように」と言われた伊藤君、倉庫に残った部品の総数を減らすように指示を与える社長の言葉をたびたびさえぎろうとします。伊藤君には理由があります。ただ、社長の教えを守っているだけなのです。でも社長、ここでイラッとしてしまいます。人の話をさえぎるのはむずかしい。
英語で話をさえぎれますか?
イラスト Dセイン
Tanaka: We have 200,000 parts in the warehouse, and so...
Ito: Um, excuse me, but I think the actual number is 200,030.
Tanaka: Okay, whatever. We have to cut this inventory in half to 100,000, and then...
Ito: Um… Sorry for interrupting, but that's not half.
Tanaka: Listen here. Please stop interrupting me.
Ito: But you asked me to chime in if you said something that wasn't accurate.
Tanaka: I know, but you don't have to nitpick!
Ito: Okay, I won't do it again.
【対訳】
社長: 我が社の倉庫には20万個の部品がある。だから…
伊藤: あのですね、実際の数字は20万30個だと思います。
社長: そうか、まあ、いずれにせよだ。この在庫を半分の10万個に削減しなければならない。それで……
伊藤: ええと、お邪魔して申し訳ないのですが、それは半分ではありません。
社長: ちょっと聞いていてくれ。私の邪魔をしないでくれ。
伊藤: でも社長は、もし何か不正確なことがあったら、話をさえぎるように言いました。
社長: 分かっている。だが、そんなに重箱の隅をつつく必要はないんだよ!
伊藤: 分かりました。二度としません。
解説)
▼ warehouse: 倉庫
▼ Um,: あのですね、ええと。
*人の話をさえぎりたいときのひと言。遠慮がちに言うのが基本です。
▼ inventory: 在庫、全商品
▼ Okay, whatever.: まあ、いずれにせよだ、いずれにしてもだ。
▼ cut in half: 半減させる、半分に削減する
▼ Sorry for interrupting.: さえぎってすみません。邪魔してすみません。
▼ chime in: 話に加わる、話を遮る
▼ accurate: 正確な、間違いのない
▼ nitpick: 重箱の隅をつつく、いちいちケチをつける
▼ I won't do it again.: もう二度としません。
*「二度と繰り返さないこと」を誓う言葉。
Mariko: Why in the world did you order 500 more parts?!
Ito: That's what Tanaka-san told me to do.
Mariko: You must have misheard him.
Ito: I thought it was strange, but that's what he told me to do.
Mariko: You should have asked him if that's what he meant.
Ito: I wanted to, but he told me not to interrupt him.
Mariko: Well, now the inventory is bigger than ever.
Ito: I'm going to be in hot water again.
【対訳】
まり子: いったい、なぜもう500個もの部品を注文したの?
伊藤: 社長が僕にそうしろって、言ったんです。
まり子: 聞き間違えたんじゃないかしら。
伊藤: ぼくも変だと思ったんです。でも社長がそうしろって言ったから。
まり子: もし、社長の言ったことが変だったら、きちんと尋ねるべきだったじゃないの。
伊藤: そうしたかったんです。でも社長が邪魔するなって言ったから。
まり子: ええと、今、うちの在庫は前より増えちゃったのね。
伊藤: また怒られちゃいますね。
解説)
▼ Why in the world did you order 500 more parts?!: いったい、なぜもう500個もの部品を注文したの?
*in the world: 疑問文を強調して「いったい全体」の意味。Why in the world…:一体全体なぜ…? Why on the earth…も同意語。
▼ That's what Tanaka-san told me to do.:: それが田中さんが私にするように言ったことです、すなわち「社長が僕にそうしろって、言ったんです」。
▼ You must have misheard him.: あなたは彼の言葉を聞き間違えたに違いない。
*must have + 過去分詞: 「~したにちがいない」という過去の推量
*overhear: 聞き損なう、聞き間違う
▼ You should have asked him…: 彼に尋ねるべきだった。
* should have + 過去分詞: 「~するべきであった(なのに~しなかった)という過去の義務を表すが、それほど強い義務ではない。
▼ …he told me not to interrupt him.: 彼は私に彼を邪魔しないように言った。
* tell…not to~: …に~しないように言う。
* not の位置に注目しましょう。
▼ I'm going to be in hot water again.: また怒られちゃいますね。
* be in hot water: 苦境にいる、ひどく怒られる
セインのビジネスひと口メモ
日米のビジネス会議の違いは、誰でも自由に話す機会が得られるかどうかではないでしょうか。アメリカでは、あまりその人のポジションなどにこだわることなく、比較的自由に発言することができます。ただ、遠慮は禁物。おとなしく発言の順番を待っていたら、強い人たちの間で、発言を回して、何も言えなかったなどということもあります。このような状況では、発言と発言の間に上手に言葉をさしはさむことが大切です。Dialog にもありましたが、Um…は効果的です。「ええと/あのですね」が効果的です。
逆に自分の発言が終わっていないのに、発言してくる人がいます。そのような場合にはLet me say one thing. 「後ひとつ言わせてください」Just let me finish what I'm saying. 「最後まで言わせてください」。
いや、それは生ぬるい。断固自分の発言の場を死守するというのであれば、Please stop interrupting me.「さえぎるのは止めてください」 Please don't interrupt me. 「邪魔しないでください」 I'm talking now. 「今私が話しています」Sorry, it's my turn.「失礼、今は私の番です」などと言えばよいでしょう。しかし、イライラした感が伝わることもあります。
Hang in there!
:D セイン
米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。