1万円以下Bluetoothイヤホン、装着感と操作性で選択

通勤・通学の電車内で音楽を聴く用途で活躍するイヤホン/ヘッドホン。特に通勤ラッシュのように身動きが取れない状況下では、ケーブルの取り回しにも苦労する人が多いだろう。

そんな人におすすめしたいのが、スマートフォン（スマホ）に搭載されているBluetoothを利用したワイヤレスのイヤホン/ヘッドホンだ。

家電量販店で売られているワイヤレスのイヤホン/ヘッドホンは、大きく分けて3タイプに分かれる。

まず、標準的なイヤホンをBluetoothを使ってワイヤレス化したスタンダードなタイプ。同様に一般的なヘッドホンをワイヤレス化したタイプ。そして、イヤホンの一種になるが、激しい運動をしても外れない工夫がなされているスポーツタイプである。

Bluetooth対応のイヤホン/ヘッドホンで登場する、2つの用語を解説しておきたい。

まずは近距離無線通信「NFC」の対応だ。ワイヤレスのイヤホン/ヘッドホンの購入後、スマホとイヤホン/ヘッドホンのBluetoothをペアリングする必要がある。このとき、スマホと対応イヤホン/ヘッドホンをタッチするだけでペアリングを完結させる機能がNFCだ。ただし、iPhoneは非対応なので、あくまでもAndroidのスマホ専用の機能となる。

もう一つは、ワイヤレスの音質劣化を抑える高音質コーデックへの対応だ。iPhoneに向けた高音質化は「AAC」、Androidに向けた高音質化は「aptX」を用いるのが一般的。対応モデルでは製品パッケージなどで紹介されている。

なお、製品パッケージなどを見て特に記載のないものは、Bluetooth製品が対応している標準的な音声伝送方式「SBC」のみの対応だ。

以上を踏まえて、一般的なイヤホン、ヘッドホンとスポーツ用イヤホンから1万円以下で売れ筋の6製品をピックアップし、その実力をAV評論家である筆者が評価した。

なお、Bluetoothのイヤホン/ヘッドホンは、有線タイプのイヤホン/ヘッドホンと比べると音質では一歩劣る。そのため音質だけでなく、装着感や操作性なども含めた総合評価として各製品をレビューした。

スポーツ用イヤホンなどワイヤレスイヤホンを多数取りそろえるメーカー「JABRA」。そのスタンダードモデルだ。

耳元のイヤホン部にBluetooth通信部までも一体化しており、大柄だがシンプル。首元は左右をつなぐケーブルとリモコン部が首元に垂れることになるが、シャツの上からなら気にせず身につけられた。BluetoothのペアリングはNFC非対応で手動設定のみだ。

【音質の傾向】

特に「スポーツ用」と銘打っている製品ではないが、同こんされるイヤージェルと呼ばれるフックでイヤーピースが耳に正確に固定でき、ランニングなどにも向くタイプ。音質は高域までは伸びないが、中域に厚みがあり男性・女性ボーカルともにヌケよく聴ける。J-POPなどボーカルのメロディは聞き取りやすい。耳穴奥に装着できるため、重低音もダイレクトに届く。なお、リモコンの位置は個人的には扱いにくいと感じた。

スポーツ用途に特化してコントロールボックスをなくした、防水規格IPX4準拠の防滴仕様ワイヤレスヘッドセット。「アークサポーター」と呼ばれる、耳のくぼみにフィットする構造が採用されている。

リモコンは1ボタンで、押すたびに再生/停止、短く・長く押すパターンでボリュームアップなどの操作が可能だ。連続再生時間は8.5時間で、iPhoneで高音質に聴けるAACに対応する。

【音質の傾向】

発汗対策もした本格的なスポーツ仕様だけに、耳へのフィット感が抜群で、動いてもズレにくい。サウンドは特に高域を伸びやかに鳴らすタイプだが、最初にXperiaでの試聴をすると中域の音がこもって聞こえた。一方、AACコーデックによる高音質化の恩恵を受けられるiPhoneによるリスニングでは一変して音が鮮明になるため、iPhoneユーザーにすすめたい。

Bluetoothによるワイヤレス接続に加えて、騒音を約98%カットするノイズキャンセル機能まで一体化した多機能ステレオヘッドセット。手元で操作するリモコン部にマイクと操作ボタンが搭載されており、周囲の騒音に応じてノイズキャンセル機能を最適化してくれる。

BluetoothのペアリングはNFC対応で、aptX、AACの高音質コーデックも対応する。パッケージには13.5mmドライバーのイヤホンが付属しているが、一般的なステレオミニ端子を使っているので手持ちのイヤホンと差し替えも可能だ。

【音質の傾向】

高域と低域をキレよく鳴らすサウンドで、ジャズのような空間の広がりと楽器のキメ細かな音の再現性に優れる。声の帯域はやや楽器に埋もれがちだった。ノイズキャンセル性能はオフィスの騒音などをしっかり消していて、無音状態で身につけても心地よい。リモコン部を独立させたスタンダードな構造も、室内でのリスニングでは扱いやすかった。

アルミ素材のハウジングが美しく、見た目にも都会的な街使いを意識したデザインの40mmドライバーユニット搭載のヘッドホン。BluetoothのペアリングはNFCにも対応。iPhoneで高音質に伝送できるAACコーデックにも対応する。本体にボリュームや曲操作のできるボタンの他、マイクを内蔵し、ハンズフリー通話が可能だ。

【音質の傾向】

見た目以上に重低音を鳴らすパワー志向のサウンドで、空間を震わせるような重低音が強烈。男性/女性ボーカルの声の帯域は聞こえづらいが、高域もシンバルの金属音などは伸びる。クラブ系ミュージックなどとの相性は良さそうだ。なお、ヘッドバンドは小ぶりなので、頭の大きな筆者にはやや圧迫感があった。

直径30mmのドライバーユニットを搭載したスタンダードなモデル。Bluetoothによる接続はNFCによるタッチに対応、iPhoneで高音質に伝送できるAACコーデックにも対応する。再生・早送りなどの操作をするジョグスイッチとボリュームキーは右側のハウジングに搭載。連続音楽再生時間30時間は、今回紹介するワイヤレスヘッドホンのなかではトップだ。

【音質の傾向】

大口径ヘッドホンから繰り出される音圧感たっぷりの重低音と空間の広がりは、今回紹介するヘッドホンでもトップの情報量。シンバルの金属音もキレ良く鳴らすなど、クラブ系サウンドやJ-POPを聴くのにはベストマッチ。ただし、高域の音がキツく、ジャズやクラシックには不向きなようだ。

手持ちの有線イヤホンを接続してワイヤレス化する、大容量デジタルアンプ内蔵のBluetoothレシーバー。シャツの胸元などに取り付けられるクリップタイプとなっている。大柄なボリュームダイヤルと操作ボタンがあるほか、NFCによるワンタッチ接続、AAC/aptXコーデックによる接続と、機能性もトップクラスだ。

【音質の傾向】

本製品はイヤホンが付属しないため、手持ちのオーディオテクニカ製のハイレゾ対応イヤホン「ATH-CKR10」を接続して評価した。音情報の伝送に優れた高解像志向のサウンドで、低音にもパワーと厚みがあり再生能力は十分。イヤホンのワイヤレス化のみの機能と考えると本体は大柄だが、クリップ型で抜群に扱いやすい。なお、接続するイヤホンはケーブルの短いタイプがおすすめだ。

1万円以下からチョイスした最新6機種を比べた今回のレビュー。種類別に総括していこう。

まず、スタンダードなイヤホンモデルと呼べるのがソニーのMDR-EX31BNだ。このモデルは機種はBluetoothイヤホンであると同時に、騒音カット率約98%というノイズキャンセル対応が最大の魅力。音質もワイヤレスイヤホンとしては標準的で、実売価格6000円台後半であればお買い得感がある。

続いて、JABRAのSTEP WIRELESSとソニーのMDR-AS600BTだが、イヤホンとしてのフィット感に特徴がありランニング中にも外れにくい構造となっている。音質面ではJABRAは聞きやすいサウンド、ソニーはよりスタンダードなチューニングでiPhoneであれば十分よい音を引き出せた。JABRAのSTEP WIRELESSは5000円台と価格も魅力だ。

オーバーヘッドのヘッドホンタイプはソニーのMDR-ZX330BT、パイオニアのSE-MJ561BTの2モデル。オーバーヘッド型だけあって重低音の再生性能は圧倒的。パイオニアのSE-MJ561BTは低音のパワー重視、MDR-AS600BTは高域もきらびやかに鳴らすサウンドを求める人向けだ。

率直な感想としては、「音質がとても良かった」と素直には言えず、有線タイプのイヤホンとは音質差を実感してしまった。その中で、手持ちのイヤホンをワイヤレス化できるエレコムのLBT-PAR500AVはユニーク。音質にこだわる人にも使い甲斐のある商品と言える。

1万円以下の機種でイチオシを選ぶならソニーのMDR-EX31BNを挙げたい。通勤・通学の用途で胸元のポケットに入れて扱いやすい構造に加え、ノイズキャンセル機能が付いていることが一番の理由だ。次点は音質に妥協できない人向けにエレコムのLBT-PAR500AVを推薦したい。

（ライター　折原一也）

［日経トレンディネット 2016年5月27日付の記事を再構成］