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レトルトビーフシチュー対決 セブンの濃厚さに賛否

日経トレンディネット

2016/6/24

日経トレンディネット

 おにぎり、弁当、サンドイッチのほか、各コンビニが力を入れているのがレトルト食品[注]。PB(プライベートブランド)商品として煮物やハンバーグといった総菜を中心に多数展開していて、これがおいしいと評判だ。前回のビーフカレーに続き、今回は高級感のあるビーフシチュー編を食べ比べてみた。

[注]レトルト(レトルトパウチ食品)は法律的に、加圧加熱殺菌することが必須です。ただし、金属箔の容器に入った食品をレトルトと呼ぶことが多いため、今回は商品形態を表す言葉として便宜上使っています。

■肉の大きさが3商品で異なる

 今回のコンビニ食品実食テストは、レトルトのビーフシチュー。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食で、コンビニ大手3社のビーフカレーをチェック。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。

 実食するのは以下の3商品だ。

○セブンイレブン「セブンプレミアム ビーフシチュー」(348円、税込み 以下同)
○ローソン「ローソンセレクト ごちそうビーフシチュー」(399円)
○ファミリーマート「ファミリーマートコレクション じっくり煮込んだビーフシチュー」(410円)

 各コンビニのPB(プライベートブランド)商品の中でも、ローソンとファミリーマートのビーフシチューは上位ラインに位置する。セブンイレブンのみ通常ラインだが、以前はセブンゴールド(金の~)にラインアップされていた。高級なイメージが強いビーフシチューは、コンビニ商品においてもやはり特別なメニューなのだろう。

 さらに、レトルトといえども今回紹介する商品はすべて要冷蔵。おいしさをキープし、かつ食中毒対策のためにこのような仕様になっているものと思われる。高温で殺菌すれば常温保存が可能になるのだが、素材の深い味わいが失われてしまう。作り方は通常のレトルト食品と同様に湯せん、またはお皿にあけてレンジで加熱する。

 3商品ともデミグラスソースの深い赤茶色をしているが、よく見ると色味が若干異なる。わずかな差ではあるがファミリーマートが一番色が濃く、セブンイレブン、ローソンと続く。しかしシチューの質感は、色の濃いファミリーマートがもっともサラサラしていてツヤがある。セブンイレブンはドロッとしていて、ローソンは2商品の中間といった印象だ。

 具材については、ローソンの肉が一番大きく、2~3切れ入っている。次にファミリーマートが大きく、こちらも2~3切れ。どちらも肉のほかににんじんとじゃがいもが入っていて、玉ねぎも小さいが確認できる。

 一方のセブンイレブンは、肉のカットこそ大きくはないが、その分入っている数が多い。肉の量が多いからだろうか、シチューの表面に油が浮いているのも他社にない特徴。野菜はじゃがいもしか確認できないが、シチューがドロッとしていることから野菜が溶け込んでいるものと思われる。

 また価格は、もっとも安いセブンイレブンと、もっとも高いファミリーマートでは税込みで52円の差がある。50円も違うとずいぶん印象が変わってくるが、やはり高いほうがおいしいのだろうか?

セブンイレブン「セブンプレミアム ビーフシチュー」 赤身比率の高い牛スジを使用した濃厚な味わいのデミグラスソースを、3日間煮込んで使用したビーフシチュー。1パックに牛肉が60gも入っているという。税込み価格348円
ローソン「ローソンセレクト ごちそうビーフシチュー」 ローソンセレクトのなかでも金色のロゴが使われている上位商品。赤ワイン仕立てのデミグラスソースを使用し、牛肉をしっかり煮込んだビーフシチュー。税込み価格399円
ファミリーマート「ファミリーマートコレクション じっくり煮込んだビーフシチュー」 軟らかく煮込んだ牛バラ肉にじゃがいもと人参を合わせ、赤ワインを効かせたデミグラスソースで仕上げている。肉の旨味、野菜の甘み、ソースのコクが際立つ。税込み価格410円

 ルーの色の違いは、味にも影響があるのだろうか? そして肉の大きさの違いはおいしさに関係があるのか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれのビーフシチューの特徴を見ていこう。

■セブンは濃厚、ローソンはやさしい味、ファミマはコクが深い

 各コンビニのビーフシチューを、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通りだ。

ビーフシチューの味覚分析の結果。セブンイレブンとローソンは塩味が強め。ファミリーマートは塩味が控えめでコクが突出している

 セブンイレブンとファミリーマートは棒グラフの長さはほぼ同じだが、それぞれ味覚の数値に若干の違いがある。セブンイレブンは塩味の数値が高い。同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「セブンイレブンは塩味がしっかりしていてコクもあり、まさにシチューの濃厚感がもっとも感じられる味付け」と分析する。

 一方のファミリーマートはコクの数値が高いのが特徴。これについて菅氏は、「塩味はセブンイレブンより控えめだが、コクが3商品でもっともある。味のインパクトは弱いかもしれないが、味わい深さは他社より抜きん出ている」と分析した。

 ローソンについては、「先味である旨味が弱く、塩分が強め。これにより甘味を引き立てる味の構成が、“やわらかい味”という印象になっている」と菅氏は解説する。

 では、味の印象に大きく影響する塩味と旨味のバランスについて下図で詳しく見てみよう。

ビーフシチューの塩味と旨味の関係。セブンイレブンは塩味も旨味も強い濃厚な味付け。ファミリーマートは塩味を抑えて味わい深く仕上げている

 セブンイレブンは塩味・旨味ともに利いた、濃厚な味付けだということがより鮮明になったはず。先味である旨味が強いので、食べた瞬間に口の中においしさが広がるインパクトのある味付けになっているのだろう。逆にファミリーマートは塩味控えめで、さらに旨味よりも後味であるコクに重点を置いていることから、後を引くおいしさを狙っているものと思われる。また、ローソンが旨味よりも塩味が強い傾向であることも分かったはずだ。

 これらの結果を頭に入れて、プロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合ったビーフシチューを選んでほしい。

■大森氏~家庭的な味わいのローソンが好み

 多くのメディアで活躍する料理研究家、大森麻里氏に実食をお願いした。どこのビーフシチューを食べているのか分からないブラインド状態で実食し、順位を付けてもらった。各コンビニのビーフシチューの感想は以下の通りだ。

大森麻里氏 大学在学中に女子大生料理研究家として注目を集め、その後さまざまなメディアで活躍。女性誌のコラムから飲食店のメニュープロデュースまで手がける。「コンビニおでんのつゆレシピ~おうちに帰ってもう1品!~」(東京ニュース通信社)など著書も多数

○1位 ローソン

 自身がイメージするビーフシチューの味に一番近いとの理由から、ローソンを1位に挙げた大森氏。ビーフシチューは家のご飯の中でも特別なメニューだったと言い、「いい意味でカレーとハヤシライスの中間というか、やさしくてあったかい家庭的な味」と話す。3商品では一番甘めで、「最初に甘味、あとから酸味を感じるバランスのよい味付け。肉と野菜のバランスもいい」とコメント。また肉も軟らかく、「全体的に脂っこくないので味も見た目も◎です」と高く評価した。

○2位 ファミリーマート

 2位と3位は僅差としながら、「やさしい味で食べやすい」ことからファミリーマートを2位に選出。「どこか和風っぽい味付けで、甘味と酸味のバランスがよく、口当たりが一番さらさらしている」という。そのため「パンよりもご飯に合うビーフシチュー」だと話す。「お肉は軟らかいのに、野菜の歯応えはしっかり残っている」ことも好印象だったようだ。

○3位 セブンイレブン

 セブンイレブンのビーフシチューは「よく煮込まれていて、味自体は本格的」と話すも、「お肉の量が多いからか脂っぽさを感じる」として順位を下げた。味については、「トマトの酸味が強くハヤシライスっぽい感じ」とコメント。また、「野菜が溶けてとろみが出ているのか、ドロッとしていて味も一番濃い」という。そのため「女性向きではないかも。でもお肉をがっつり食べたいときはコレな気もします」との感想を述べた。

○総評
 「コンビニのビーフシチューは初めて食べましたが、どれもおいしいですね。ローソンは昔から慣れ親しんでいる家庭的な味で、おうちのビーフシチューの味を求めていたので1位に選びました。ファミマとセブンはおいしさ的にはほぼ同じくらいで、単品で食べるならファミマ、パンと一緒に食べるならセブンかな。3商品とも味は全然違いますが、お肉は全部軟らかく、家庭でここまで作るのは大変。手間もかかるし少量ではなかなか作らないメニューなので、一人分を手軽に食べられるのはいいですね」


■茂出木氏~セブンイレブンはひと口目からおいしい

 洋食の老舗「たいめいけん」の3代目シェフ、茂出木氏に実食をお願いした。どこのビーフシチューを食べているのか分からないブラインド状態で実食し、順位を付けてもらった。各コンビニのビーフシチューの感想は以下の通りだ。

茂出木浩司氏 昭和6年創業の老舗洋食店「たいめいけん」の三代目。厨房に立つ傍ら、テレビ番組に出演するなどメディアでも大活躍。看板料理であるオムライス・タンポポオムライスをはじめ、創業以来の味を受け継いだ洋食の数々は絶品

○1位 セブンイレブン

 「味がしっかりしていて、ひと口目からおいしい」と、セブンイレブンを高く評価した茂出木氏。「肉は少しパサついているが、その分、肉の旨味がシチューに出ている」と話す。「赤ワインやケチャップなど調味料が利いていて、夕食のおかずに適した濃いめの味付け。単体で食べると塩味が強すぎるけど、パンにつけるとちょうどいい」とコメント。ただし「油が浮いているのが気になる」とも述べた。

○2位 ローソン

 1位と2位は「甲乙つけがたい」と話す茂出木氏。ローソンは「肉は一番やわらかくておいしい」という。ビーフシチューは煮込み料理なので肉がパサつきやすいが、「これはパサついていない。加熱が上手なんだと思います」とコメント。「とろみ加減もちょうどいいし油も分離していない。塩味もマイルドで食べやすい」と絶賛するも、「大人っぽい味付けだが少し苦味を感じる」ことから順位を下げた。

○3位 ファミリーマート

 3位のファミリーマートは、煮込みが弱いところが気になったという。「野菜の食感があるのはいいけど、少しとろみが弱いのでスープっぽい」と話す。肉に関しても「ちょっとパサついているのが気になる」とも。煮込みが足りないこともあり、「味もちょっと薄いかな」とのコメントを残した。

○総評
 「3商品ともレトルトの臭みもないし、苦味も抑えていて全体的にレベルが高い。冷蔵のレトルトでここまで味が出せるなら十分。レストランの手作りとまではいかないけど、ファミレスのレベルには達している。よく煮込まないとこんな色は出せないし、ビーフシチューは家庭で作るのは大変なのでお得感があります。その中でもセブンはさすがですね、コストパフォーマンスも高いし万人ウケする味。ローソンは僕が作る方向に近くて個人的には好みの味だけど、冷めると苦味が出てきたのが気になりました。ファミマはとろみも弱いのでもう少し頑張ってほしいですね」


(ライター 津田昌宏)

[日経トレンディネット 2016年5月30日付の記事を再構成]

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