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コンビニ高級カレー対決 ルーのセブン、肉のローソン

日経トレンディネット

2016/6/21

(写真:中村宏 以下同)

日経トレンディネット

 おにぎり、弁当、サンドイッチのほか、各コンビニが力を入れているのがレトルト食品[注]。PB(プライベートブランド)商品として煮物やハンバーグといった惣菜を中心に多数展開していて、これがおいしいと評判だ。レトルト食品といえば、やはりカレーは見逃せない。そこで各コンビニのレトルトカレーを食べ比べてみた。

[注]レトルト(レトルトパウチ食品)は法律的に、加圧加熱殺菌することが必須です。ただし、金属箔の容器に入った食品をレトルトと呼ぶことが多いため、今回は商品形態を表す言葉として便宜上使っています。

■方向性が異なる3商品

 今回のコンビニ食品実食テストは、レトルトのビーフカレー。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食で、コンビニ大手3社のビーフカレーをチェック。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。

 実食するのは以下の3商品だ。

○セブンイレブン「セブンゴールド 金のビーフカレー」(288円、税込み 以下同)
○ローソン「ローソンセレクト ごちそうビーフカレー」(360
円)
○ファミリーマート「ファミリーマートコレクション じっくり煮込んだビーフカレー」(358円)

 各コンビニのPB(プライベートブランド)商品の中でも、上位ラインで発売されているビーフカレーを選択した。通常ラインでもレトルトカレーはあるが、こちらにはビーフという記載はない。やはり“ビーフ”は少し特別なカレーなのだろう。

 さらに、レトルトといえども今回紹介する商品はすべて要冷蔵。おいしさを維持し、食中毒を防ぐという意味においても各コンビニのこだわりが現れている。作り方は通常のレトルト食品と同様に湯せん、またはお皿にあけてレンジで加熱する。

 3商品のビーフカレーを見比べると、一般的なカレーのような黄色味ではなく、デミグラスソースのような上品&高級感のある色をしている。とはいえ、ルーの色は各コンビニで微妙に異なっている。セブンイレブンは赤味が強く、次にファミリーマートが赤い。ローソンは一番赤味が弱い。

 そしてセブンイレブンのルーはドロッとしていて油も浮いているため、日本のカレーというよりインドカレーのようなスパイスが利いたカレーに見える。対照的にローソンはドロッとはしておらず、かといってシャバシャバでもない。油も少なく、いわゆる日本のカレーのイメージに近い。ファミリーマートはその中間で、方向性としては欧風のカレーといった印象だ。

 具材については、ファミリーマートの肉が一番大きく、次いでローソンが大きい。ファミリーマートは肉のほかににんじんとじゃがいも、ローソンは小さめのにんじんとマッシュルームのスライスが入っているようだ。セブンイレブンはルーの色が濃く、ルー自体に玉ねぎらしき具材の凹凸があり、なかに入っている具材が見えにくい。ほかの2社に比べるとやや小さめの肉がいくつも入っているようだが、にんじんに見えるものもある。

セブンイレブン「セブンゴールド 金のビーフカレー」 専門店の本格的な味が楽しめるセブンゴールド商品。炒めた香味野菜を自家製の牛スープで煮込み、スパイスを2回に分けて入れてスパイシーに仕立てている。さらに黒糖とバターを加えてルーの風味をアップ。牛肉は圧力釜で加熱した後にじっくり煮込んでいる。税込み価格288円
ローソン「ローソンセレクト ごちそうビーフカレー」 ローソンセレクトのなかでも金色のロゴが使われているワンランク上の商品。22種類の香辛料をブレンドしたカレー粉、5種類の香味野菜のバターソテーを使用。さらにカカオを加えてほろ苦さを加えつつ、リンゴとバナナをブレンドしてフルーティに仕上げている。税込み価格360円
ファミリーマート「ファミリーマートコレクション じっくり煮込んだビーフカレー」 ファミリーマートコレクションのなかでもプラチナラインとして展開している商品。香味野菜などを加えて長時間炊き出したブイヨンに、赤ワインで煮込んだ牛肉、デミグラスソース、香辛料を加えて欧風カレーに仕上げている。牛肉も野菜も大きめにカットしてある。税込み価格358円

 ルーの色の違いは、味にも影響があるのだろうか? そして具材の違いはおいしさに関係があるのか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれのビーフカレーの特徴を見ていこう。

■セブンはインパクトが強く、ローソンは後味重視

 各コンビニのビーフカレーを、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通り。また、テーマがカレーなだけに辛味もチェックしたいところだが、実は味覚センサーでは辛味の分析はできない。ここでは辛味以外の味覚について棒グラフで分析結果を示す。

ビーフカレーの味覚分析の結果 セブンイレブンはしっかりとした味付け。ローソンはコクを重視、ファミリーマートは塩味がやや控えめ

 セブンイレブンは棒グラフが一番長いことから、味が強い傾向にあることが分かった。この味覚分析の結果について、同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「旨味もコクもしっかりとした味付けになっており、濃厚なカレー味が感じられる本格的なものになっている」と分析する。

 ローソンとファミリーマートは棒グラフの長さはほぼ同じだが、それぞれ味覚の数値に若干の違いがある。ローソンは旨味の数値が低いことから、菅氏は「旨味よりコク重視となっており、具材よりもルーのおいしさがポイントになるだろう」と分析。一方のファミリーマートの味覚分析の結果については、「セブンイレブンを追随するような味設計になっており、塩味が若干弱いため具の味が引き立てられ、ルーから具までさまざまな味を感じられるだろう」と菅氏は解説する。

 では、味の印象に大きく影響する塩味と旨味のバランスについて下図で詳しく見てみよう。

ビーフカレーの塩味と旨味の関係 セブンイレブンは塩味も旨味も強く、食べた瞬間においしさを感じるインパクトがある。ローソンは旨味よりも後味であるコクで勝負。ファミリーマートは塩味を抑えてバランスを重視

 セブンイレブンは塩味・旨味ともに利いた、インパクトのある味付けだということがより鮮明になったはず。先味である旨味が強いことから、食べた瞬間に口の中においしさが広がるのではないだろうか。逆にローソンは旨味よりも後味であるコクに重点を置いていることから、後を引くおいしさを狙っているのだろう。またファミリーマートが塩味を抑えたバランス型であることも分かったはずだ。

 これらの結果を頭に入れて、プロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合ったビーフカレーを選んでほしい。なお、審査員たちにはご飯と合わせてビーフカレーを食べてもらった。

■はぴい氏~フルーティな仕上がりのセブンイレブンが好印象

 たべあるキングのカレー担当メンバーとしても活躍するはぴい氏に実食をお願いした。どこのコンビニのビーフカレーがおいしかったのか、その順位を付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。

はぴい(飯塚敦)氏。主にカレーに関する記事を手がけるフードジャーナリスト。12年目を迎えるカレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」は総記事数約4300本を誇る。今年1月に発売した「カレーの本」(笠倉出版社)をはじめ著書も多数

○1位 セブンイレブン

 ご飯とルーの総合評価では「ダントツでおいしかった」というセブンイレブン。「家庭ではなかなか味わえないフルーティな仕上がり。チャツネの香りと玉ねぎの甘味がしっかり感じられて、特別なカレーを食べている気分が堪能できる」と高く評価した。食感についても「滑らかだけど炒めた玉ねぎの食感もあっていいですね」とコメント。ルーに油が浮いていることに関しても、「カレーは油も大事な要素。香りがあるのでマイナスではない」と話す。また、肉も好印象だった様子。「かみ応えがあって、肉を食べているな、という感じがします」と、3商品で一番おいしかったと述べた。

○2位 ローソン

 2位と3位は僅差としながら、「最後に苦味を感じる」ことが決め手となりローソンを2位に選んだはぴい氏。「このカレーは先に甘味、その後に辛さをのどの奥に感じて、最後に苦味で終わる。苦味があるとキレがよくなり、大人っぽい味になるんです」と苦味のメリットを話す。「これまで避けられていた苦味があることで、家庭風の味付けながらその先を行っている印象を受けました」とも。さらに肉も「大きくて食べ応えがある。かみ応えもあり、脂身もいやらしくない」とコメントした。

○3位 ファミリーマート

 残念ながら3位となったファミリーマートだが、カレールーのみは「レストランの王道カレーのような味で一番おいしい」という。3商品では一番スパイシーなうえ、「トマトの香りが強く、野菜の風味がもっとも感じられました」とコメント。「唯一じゃがいもが入っていて、じゃがいもやにんじんなど野菜自体もおいしかった」という。評価に大きく影響したのは肉で、「大きいけどちょっとパサついていて、肉の味も少し弱いかな。ビーフカレーなので肉は大事だと思うんです」とのこと。また、「スパイスは利いているけどバランス型の味付けのため一番甘く、かなりよくできているけどご飯と一緒に食べるとインパクトが弱くなってしまった」とも話す。

○総評
「ビーフカレーなので肉のおいしさは評価に大きく影響するのですが、とはいえカレーはソース(ルー)が決め手。ソースあっての具材だと思います。その両方でおいしかったのがセブンイレブンで、クオリティーの高さに驚きました。もう昔のレトルトカレーとは別物ですね。ソースはスパイスの香りが利いていて、全くレトルトっぽくない。肉もおいしく、具材も大きい。手作業でなければこのサイズの具材を入れることはできないんです。実際に食べてみると、3商品とも家庭の味ではなく、ごちそうとしてのカレーを目指していることが分かると思いますよ」


■茂出木氏~洋食レストランの味に近いローソンを高く評価

 洋食の老舗「たいめいけん」の3代目シェフとして店を仕切る茂出木氏に実食をお願いした。どこのコンビニのビーフカレーがおいしかったのか、その順位を付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。

茂出木浩司氏。昭和6年創業の老舗洋食店「たいめいけん」の三代目。厨房に立つ傍ら、テレビ番組に出演するなどメディアでも大活躍。看板料理であるオムライス・タンポポオムライスをはじめ、創業以来の味を受け継いだ洋食の数々は絶品

○1位 ローソン

 「日本の洋食として親しまれているカレーの味に近い。僕の一番好きな味」として、ローソンのビーフカレーを1位に挙げた茂出木氏。「方向性としては一般的なカレーの味で、スパイスも日本人好み」だと話す。肉についても「しっとりしていておいしかった。肉も大きくてちゃんとビーフカレーと呼べる」と高く評価。「スパイスも利いているけどやさしい味付けで、たぶんレストランのカレーを目指しているんじゃないかな」との感想を述べた。

○2位 セブンイレブン

 「チャツネの味や玉ねぎの甘味が出過ぎている。油も分離していてルーだけでは一番おいしくない」と、甘味の強いカレーソースに辛口評価。しかし、ご飯と一緒に食べるとその評価は一変するという。「辛いのか甘いのか、ルーだけ食べると味噌のような濃さで何を目指しているのか分からないけど、ご飯と合わせるとこの甘味がヤミツキになる」と話す。具材については「ルーが強いので肉はあまり目立たない。具材が詰まっていてキーマカレーのような印象」とコメント。好みが分かれる味付けとしながら、「スパイスが利いているのか、甘味は強いけど最後のキレがよく、もうひと口食べてしまう」と絶賛した。

○3位 ファミリーマート

 「たぶん目指しているのはレストランのカレー。色や見栄えはすごくいいけど、コクや旨味をあまり感じない」として順位を下げたファミリーマート。肉についても「少しパサついている」と話す。「3商品の中では一番スパイシー。でも味に深みが足りないので辛さだけが際立っている」ことから、「もっと辛さを抑えてマイルドにしたほうがいいかな」とのコメントを残した。

○総評
 「お店(たいめいけん)で出しているカレーは全然辛くないんです。りんごやバナナを使って甘口にしていて、懐かしい味なんて言われます。それに比べると3商品とも辛口で味がしっかりしていて、若い世代の人に向けたカレーだったなと思います。ローソンはレストランのカレーを目指して高級感を出している。日本人好みながら、家庭では味わえないワンランク上のカレーを手軽に食べられるところがいいですね。肉の調理もとても上手でした。セブンイレブンはすごく個性的で勝負している感じ。フルーティで最初は戸惑いましたが、この“攻め”の味付けは嫌いじゃない。ファミマもスパイスを利かせた王道の味付けでしたが、もう1歩というところですね」


(ライター 津田昌宏)

[日経トレンディネット 2016年5月23日付の記事を再構成]

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