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会社の中での第二の出世は、転職によるキャリアアップです。

とはいえ、単純に統計上の割合だけで言えば、転職して出世=キャリアアップできる割合は1/3。あとの1/3は現状維持で、残る1/3は逆に落ち込んでいく、キャリアダウンの転職です。

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キャリアダウンのワナに陥らず、転職をキャリアアップにつなげるためには、会社側と個人側、それぞれの意思決定ロジックを理解しておかなくてはいけません。そのためにはそもそも、「転職で出世=キャリアアップ」するということの構造を確認しましょう。

転職とは価値と対価のアンマッチの解消

転職でキャリアアップするということは、労働者が提供する価値に対する対価を高めるということです。その対価が金銭なのか名誉なのか自由なのかは、場合によって変わりますが、いずれにせよ労働者が提供する価値と受け取る対価との関係を変化させることが、転職による出世の本質です。一言で言い換えるなら、労働市場におけるアンマッチの解消、となりますが、余計わかりにくいでしょうか。

例えば、新卒の段階でハードな営業系の会社に就職してしまい大変な目にあったけれど、そこで頑張っているうちに忍耐力が鍛えられるとともに、営業スキルも身についた。けれども今の会社では年功でしか昇進できないので、実力で昇進させてくれる会社に転職したら誰よりも早く昇進して、出世できて給与も増えた、というようなことが転職での出世です。

労働者が提供する価値を買いたたかれている状態から、適正な対価をもらえる状態に移行することなのですが、ではそもそも労働者が提供する価値とはなんでしょうか

実はこの部分に対する理解があいまいなままだと、転職で出世することはほぼ不可能です。多くの人たちはやりがいのある仕事を求めたり、あるいはよりよい人間関係を求めたりして転職します。しかしやりがいのある仕事に対して、それがどのような価値を生んでいるのか、というところまではなかなか思い至りません。もしその仕事が低い価値しか生まないとすれば、転職すると逆にキャリアダウンすることになります。好きなことを仕事にしたら食べていけなくなった、ということが生じてしまうのは、そもそも仕事の価値を理解していなかったから起きてしまう不幸なのです。

私たちが生み出す価値

自分が生んでいる仕事の価値を知り、その価値に対しての対価が低すぎる、と考えられる場合においてのみ、転職による出世は成功します

ただし自分が生んでいる仕事の価値は、自分がかけた時間や労力には比例しない点に注意しなくてはいけません。仕事の価値を定めるのは他人です。他人同士が集まって価値を決める場所を市場といいます。そして市場での価値は、求められる度合と希少性で決まるのです。

求められる度合が高く、希少性のあるものこそが最も価値が高くなります。これを「貴重品」と定義してみましょう。仕事の価値としての「貴重品」は時代によって変化します。現在であれば、データサイエンスやデータ工学、シミュレーション科学のスキルなどが貴重品に含まれるでしょう。ちなみに情報・システム研究機構による調査によれば、データサイエンティスト協会が定めたスキルレベル上級以上の人数は、2015年時点で日本中で20人程度。中級レベルでも3400人しかいないそうです。本当にこの人数しかいないのであれば、確かにとても貴重なスキルと言えるでしょう。

貴重品の数が増えてくるとやがて希少性が減ってゆきます。そうするとその仕事の価値は「必需品」に変わってゆきます。求められる度合は高いのですが、比較的入手しやすいものです。マネジメントやプロフェッショナルの仕事の多くはこの分類に属することになります。

必需品がたくさん供給されるようになると、やがて「汎用品」に変わってゆきます。ありふれていてどこにでもあるものが汎用品です。例えば昭和の時代、ホワイトカラー職種は当初貴重品でしたが、大学を卒業することが一般的になってゆくにつれ、汎用品に変わっていったと考えられます。

さらに供給が減ってゆくと逆に希少性が高まり、「珍品」になります。珍品はまた何らかのきっかけで求められる度合が大きくなると、貴重品に変わることもあるでしょう。

重要なことは、あなたの仕事がどのような価値を生んでいるのかを知ることです。

なお、今いる会社では汎用品の価値であっても、他社に行けば貴重品になることもあります。外資系コンサルタントが事業会社の経営企画に転職していくような事例がそれにあたります。

買い手の考えを知る

高い価値を生み出しているのに、十分な対価を得られない。そんな時に転職を選択すれば、転職を出世につなげることができます。

しかし対価を支払う側の会社は、どのような考えで対価を決めるのでしょう

ここで問題になるのが、人事制度です。

残念なことに、多くの日本企業では、労働者が生み出した価値に基づいて給与を決めていません。裁量の範囲や自由度も、労働者の生み出す価値と厳密に連動させている例はとても少ないのです。

「いやうちの会社では目標管理制度を導入していて、成果に連動して給与を決めているよ」という人も良く考えてみてください。いきなり去年よりも倍の利益を上げた人に対して、2倍の年収を与えることがあるでしょうか? 多くの会社では、「そんなことをしたら逆に不平不満が大きくなりすぎる」「バクチのような商売をする人ばかりになってしまう」として、本当の意味での成果連動型の人事制度の導入は行いません。

だから多くの日本企業では、長期間の貢献度を評価できる人事制度を採用します。その結果、転職する人に対して不利益な結果が生じることになります。

転職先の人事制度で決まるキャリアのアップダウン

転職の受け入れ先となる会社側の人事制度が影響するタイミングは、2回あります

1回目のタイミングは、転職者に対して条件を提示する時です

現在の会社では会社の中で平均的な対価である年収600万円しかもらえていないとします。そこでためしに人材紹介会社に登録してみたら、いくつも引き合いが来ました。なるほど、自分のスキルにはずいぶんと価値があるのだなぁ、と実感したとしましょう。

さて、この時受け入れ側の会社はこの人に対していくらの年収を提示するでしょうか。

今の年収が600万円だからそれ以上?

いえ、人事の仕組みではそのようには決まりません。少なくとも人事制度がしっかり機能している会社では、まずその人が社内のどの等級に位置することになるかを判断します。そしてそこで支払える年収の幅が算出されるのです。それが仮に650万円~800万円の幅だとすれば、おそらくこの場合には650万円の年収が提示されるでしょう。

しかしもし、適用する等級の年収幅が500万円~600万円だったら?

現在と同じ600万円という年収額を示したのなら、転職してきてくれる可能性はずいぶんと低くなります。そこでこの会社では、MAX年収600万円の等級に位置づけるけれども、中途入社だからということでこの人だけ特別に650万円の年収を提示します。転職する側から見れば、50万円の年収アップになるので、意気揚々と転職するのですが、ここから不幸が始まります。それが、人事制度が影響する2回目のタイミングで顕著にあらわれます。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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