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上村愛子×中西哲生 挑戦こそが人生を輝かせる WOMAN EXPO TOKYO 2016

2016/6/17

上村愛子さんと中西哲生さんを迎えて行われたトークセッション(東京都港区)

 女性のための総合イベント「WOMAN EXPO TOKYO 2016」(主催=日本経済新聞社、日経BP社)が5月21~22日、東京都内で開かれた。仕事や教養、健康・美容をテーマに講演などを開催。オープニングセッションでは、元モーグル女子日本代表の上村愛子さんとスポーツジャーナリストの中西哲生さんが、「挑戦」をテーマに語り合った。

登壇した上村愛子さん(左)と中西哲生さん(東京都港区)

 ――上村さんはオリンピックに5大会連続出場、全大会で入賞と活躍した。

 上村さん 結果は残せたが、そこに行くまでにかなり挫折があった。毎日、目の前に壁がある状態。それを壊して上っていくには、辛抱強く物事を続けられない自分の性格や考え方を変えなくては、と気づいた。

 ――変われたきっかけは。

 上村さん すごく悔しい思いをしたことだ。それまでは得意なことをできるのが幸せだったけれど、「どうやったらもっと上に行けるんだろう」と考え始めた。

 中西さん 悔しい思いは貴重。だからこそ変われたと自分を振り返っても思う。

 ――中西さんはサッカーの現役時代、キャプテンとしてチームをまとめた。当時の苦労は。

スポーツジャーナリストの中西哲生さん

 中西さん みんな価値観が違うので、同じ方向を向いてもらうのが一番難しい。試合に出られない人の不満をよく聞き、それを解消することで同じ方向を見てもらうようにした。一人ひとりに役割を与えることも大切。

 ――上村さんはどう自分をコントロールしていた?

 上村さん スタート台に立ったときは「失敗したらどうしよう」という考えは頭から消していた。今までやってきたことしか(本番では)でないので、目の前のゴールに集中してやろうと。すごくシンプルだ。

 ――挑戦から逃げたくなったことは。

 上村さん 一番つらかったのはバンクーバー(五輪)のあと。これ以上の努力はできないというぐらい準備をしても結果を残せず、次の4年が想像できなかった。どうしたらいいんだろうと本気で立ち止まった。1年ぐらいかかったが、周囲に支えられ乗り越えた。今でも悩んだときは、相談相手を探して話すようにしている。

 ――挑戦を支えた言葉は?

 中西さん 「言い訳を探さない」。僕は日本がワールドカップで優勝する姿を見たいと思っている。「それは難しい」という人もいるが、それだとできない言い訳を探す人生になる。でも「優勝できる」と思えば達成する方法を探す。できる方法を探す人生を生きたい。

■上村愛子さん 明日笑うため今日頑張る

元女子モーグル日本代表の上村愛子さん

 上村さん 「明日笑うために今日を頑張る」。毎日ポジティブに頑張れるわけではなく、苦しいときにこの言葉を思い出していた。目標としている日が来たときに「しっかり準備ができた」と笑っていたい。そんな思いが自分を高めてきた。

■中西哲生さん 自分でねじ巻き前に進む

 ――新しい挑戦をしたい人にエールを。

 中西さん 誰かが何かをしてくれるわけじゃないので、自分でねじを巻いて前に進むこと。それをやるのは明日ではなく今日。そう思えたら、可能性は無限大だ。

 上村さん 一歩を踏み出してよかったと思える日がいくつかあれば、人生は幸せだと思う。ぜひ、自分のやりたいことにチャレンジしてもらいたい。

▲池上彰さん×増田ユリヤさん▼

 ジャーナリストの池上彰さんと増田ユリヤさんのトークショーのテーマは「誕生するか? 米国初の女性大統領」。米大統領選を解説した。

■米大統領選、クリントン氏苦戦 女性の地位向上ゆえ

ジャーナリストの池上彰さん

 11月の本選挙は、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏の対決。クリントン氏は民主党候補の本命とされてきたが、バーニー・サンダース上院議員の追い上げで、候補者指名争いは苦戦を強いられた。

 池上さんはその理由を米国で政治を語る際に使われる「あなたはワイン派?ビール派?」という問い掛けで説明。エリートでお金持ちのイメージのワイン派は本来は共和党支持者、庶民的なビール派は民主党支持者を示すが、今回の予備選挙では、同じ民主党でワイン派(クリントン氏)対ビール派(サンダース氏)に分かれていると指摘した。

ジャーナリストの増田ユリヤさん

 4月にニューヨーク州で取材した増田さんは「クリントン氏の選挙事務所がウォール街にあるのに対しサンダース氏の事務所はブルックリンの倉庫跡地で、支持者の年齢、性別、民族も様々だった」と報告。経済格差に不満を持つ人たちの間で「サンダース氏への支持が草の根的に広がっていると感じた」と話した。

 米国初の女性大統領を目指すクリントン氏が、かつてのような支持を得られない現状について池上さんは「今の米国では性別より政治家として信頼できるかが重視される。女性の地位が向上したからこその選択だ」と指摘。「素晴らしい政治家を選んだら、たまたま女性だったという時代が来る。いずれ日本もそうならなければ」と話した。

■国谷裕子さん 失敗は最良の経験

講演するキャスターの国谷裕子さん(東京都港区)

 3月までNHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めた国谷裕子さんは、「女性が社会で輝くために、私が伝えてきたこと、これから伝えていきたいこと」と題し講演。自身のキャリアを振り返りながら、働く女性にメッセージを送った。

 「キャスター人生は、失意の底から始まった」と国谷さん。夫とニューヨークで暮らしていた30歳のとき、NHKから衛星放送のニュースキャスター就任を打診された。「ほぼ誰も見ていないから」と説得され引き受けたところ、その姿がプロデューサーの目に留まる。翌年、総合テレビのニュース番組の国際担当キャスターに大抜てきされた。

 ところが、数百万人が見ているという重責と経験不足で萎縮し、カメラの前でうまく話せない。「間違った日本語で視聴者の方からお叱りを受ける、不本意な毎日が続いた」。半年後に降板。人生初の挫折に誇りが深く傷ついた。

 挫折を挫折のままにしておくことはできない。そんな気持ちでいたとき、再びチャンスが巡ってくる。BS放送の『ワールドニュース』のキャスターを任された。1日3時間睡眠が当たり前という激務だったが、キャスターとしての経験を積めることがうれしかった。「仕事の失敗は仕事で取り返すしかない」。ようやくリベンジできる、という思いで仕事にまい進した。

 23年間にわたった「クローズアップ現代」のキャスター時代も病欠はほぼゼロ。日々、山のような資料を読み、毎回新しいテーマに食らいついた。いつも時間が足りないと感じていたが、最後は「時間が許す限りの準備はした、やるだけやったから大丈夫」と自分に言い聞かせていた。

 こうした経験から、会場を埋め尽くした300人以上の女性たちに「チャンスは突然やってきます。準備万端のタイミングということはない」とアドバイス。「そこまでやってきた自分を信じてチャレンジを積み重ねたら、失敗が自分にとって最もよき経験であったと思えるようになる」と締めくくった。

■菊間千乃さん 目標かなえるためには 今日できることをやる

講演する弁護士の菊間千乃さん(東京都港区)

 弁護士で、元フジテレビアナウンサーの菊間千乃さんは、「幸せキャリアの見つけかた」をテーマに講演した。花形とされる職業を辞めて弁護士を目指した理由や、司法試験に合格するまでに具体的に実行したことを説明。会場は満員で、集まった250人の参加者たちは、メモを取りながら話に聞き入っていた。

 菊間さんはアナウンサーの仕事にやりがいを感じながらも「テレビは物事を考えるきっかけにはなるが、変えることはできない」との思いから一念発起。「六法全書と自分の頭、気持ちがあればどこにいても人を助けられる」弁護士を目指して35歳で退社。3年後に司法試験に合格した。

 大幅なキャリア変更には不安もつきまとうが、「40歳でどちらが輝いているかを想像すれば、難しい決断ではなかった」と話す。

 将来の目標設定をしたら、「5年後、1年後、半年後にどうなっていたいか。そのために今日何をすべきか」を逆算して考え、実行することが重要と説く。

 司法試験の勉強をしていた期間は24時間の使い方を細かく定めた。「勉強は16時間、睡眠は6時間、食事は3食で1時間、お風呂でなくシャワーにするなどと決めて忠実に実行していた」と話すと、会場から驚嘆の声が上がった。

 これからかなえたい目標がある人たちには「遠い目標でも、かみ砕いて今日達成できることをやる。それを続けることで、毎日確実に目標に近づける」とエールを送った。

■IT女子、スキルの磨き方 一生懸命さ印象づける

登壇した吉浜佐知子さん(左)と真嘉比愛さん(東京都港区)

 働く女性のキャリアデザインのツボはどこにあるのか――。「Tech(テック)女子に教わる 自分でつくる自分のキャリア」と題したパネル討論では、IT(情報技術)企業で活躍する女性2人が登壇。専門性を武器にしやすいIT業界の特性を踏まえ、スキルの磨き方や転職の可能性などについて話し合った。

 コンピューターを自在に操り、ITに強い「テック女子」。スキルを生かした転職や在宅勤務のしやすさもあり、女性のキャリアデザインでは先駆的存在だ。テック女子同士の議論からは、「仕事をしながら学ぶとは」などといった論点が次々に飛び出した。

 日本IBMの東京基礎研究所で、デジタル関連の新技術を研究する部門の担当部長を務める吉浜佐知子さんは、「文系出身だが、手に職を付けようとITの仕事を選んだ」と自己紹介。「成長するために、大変な環境に身を置いてチャレンジしたかった」と、最初の職場から米IBMへの転職の経緯を振り返った。

 DATUM STUDIO(デイタムスタジオ、東京・渋谷)のデータエンジニア、真嘉比愛さんは「自分も転職したばかり。転職で新天地を求める技術者は多い」と応じた。

 転職や異動による環境変化への対応について吉浜さんは、「第一印象が大切だ。何でも一生懸命やれば価値を認めてもらえる」と話した。

 真嘉比さんは自身が社外で主宰している女性プログラマーのコミュニティーにも言及。「新しくチャレンジしたいとして参加する女性が、一般のコミュニティーよりも多い」として、「テック女子」の挑戦心にエールを送った。

 吉浜さんは「つい控えめになるなどいわゆる『女性らしさ』は世界共通の傾向だ」と、IBMグループの研修で各国の女性職員が集まった折の経験談を披露。「男性との考え方の違いを認識することが(職場の一員として)役立つ部分もあるし、組織による女性活用が進むきっかけにもなる」と指摘した。

 会場には幅広い職種の若手・中堅ビジネスウーマンが多数来場。キャリアについての先進的な考え方を学ぼうと、討論に耳を傾けた。

〔日本経済新聞朝刊2016年6月17日付〕

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