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留学目安、年255~445万円 外貨建て運用や口座選別を

2016/6/4

 企業の国際化が進み、就職活動で語学力や国際経験が重視される中、留学する大学生が増えている。子どもが国内の大学から留学するなら、親は学費や生活費をそれだけ多く用意する必要がある。費用の目安を知り、早めに準備しよう。

 神奈川県に住む自営業のA子さん(51)は長男(18)が今春、国内の志望大学に合格した。国際関係の学部で、来年9月から1年間の米国留学を目指している。費用は授業料と滞在費込みで約300万円の見込みだが、実はすでにメドが立っている。息子の中学入学前後からコツコツ準備してきたためだ。

 共働きで会社員の夫の収入を家族の生活費に充て、A子さんの収入から毎月4万~5万円程度を外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)で積み立てた。「国内大学の学費を用意するだけでも大変だった。早めに留学資金の準備を始めて良かった」とA子さんは話す。

 海外に留学する大学生は増えている。特に目立つのは国内の大学に進んで、在学中に交換留学などで留学するパターンだ。日本学生支援機構の2014年度調査によると、こうした学生は約5万2000人とこの5年間で約2倍になった。行き先は米国、オーストラリア、カナダ、英国など英語圏が過半を占める。留学期間は3カ月以上1年未満が約30%となっている。

 一方、海外の大学・大学院に直接留学する人は減っている。例えば米国の学部・大学院で学位取得などを目的に学ぶ日本人は15年で約2万人と、この10年でほぼ半分になった。費用負担の重さなどから2年以上の留学を避け、一学期や一学年といった期間限定で学ぶ傾向がうかがえる。

■まずは自己資金

 ではどのくらいの費用がかかるのだろうか。留学仲介の留学ジャーナル(東京・新宿)によると、英語圏に一学年(約9カ月)留学するなら授業料と滞在費の合計で255万~445万円程度が目安になる。ただし国・地域、住居のスタイルによって費用は大きく変わる。

 例えば年間授業料。英語圏は日本国内(国立で約54万円、私立で平均約86万円)を上回るケースが多く「米国は人文・社会科学系の学部で州立大学は150万円程度から、名門私立は500万円以上のところもある」と留学ジャーナルの早本吉宏・東京本店支店長は話す。食費や家賃といった滞在費も一般的に地方は安く、都市部は高めだ。

 こうした留学資金の準備は早めに着手することが大切だ。まずは貯蓄や運用など自己資金で準備することを考えよう。ファイナンシャルプランナー(FP)の徳永なおみ氏は「早く始めれば、小さいころの習い事の費用を将来の留学用に回すこともできる」と話す。例えば小学校入学時点で毎月2万円の積み立てを始めれば、18歳時点で300万円程度が用意できる。

 自己資金で足りなければ、自治体や大学、財団などの奨学金が選択肢になる。返済の必要がない給付型を優先して探すといい。

 文部科学省と民間が共同で14年度に新設した海外留学支援制度「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」では現時点で年間1000人に奨学金(月10万~20万円)や渡航費などを給付している。一方、貸与型では日本学生支援機構で主に3カ月以上1年以内の留学を対象にした奨学金がある。原則として最大で月12万円を借りられる。

■1万円から購入

 日本円で留学資金を準備しても、実際に授業料や滞在費を払うときは外貨に替えておく必要がある。FPの村松祐子氏は「外貨で用意するなら外貨預金を考えがちだが、留学まで時間があるなら、外貨建てMMFを利用するといい」と助言する。

 外貨建てMMFは主に海外の公社債や短期金融商品で運用する投資信託だ。「一般的に為替手数料が安い例が多く、1万円など少額から購入できるので投資初心者が長期で積み立てるのに向いている」(村松氏)という。

 留学先で使う時期が近づいたら外貨預金口座に移す。FPの工藤清美氏は「現地で使うと、国内で開いた外貨預金口座で決済できる金融機関を選べば手数料が抑えられる」と助言する。例えばSMBC信託銀行のドル普通預金口座は「プレスティア外貨キャッシュカード」で米ドルをそのまま引き出せる。シティグループのATMなら引き出し手数料も原則無料だ。親名義の口座でも子ども用にキャッシュカードを発行できる。

 海外での使用は20歳以上からだが、ソニー銀行の「ソニーバンクウォレット」(ドルや豪ドル、ユーロなど11通貨対応)や住信SBIネット銀行の「Visaデビット付キャッシュカード」(米ドル対応)は外貨預金からの即時引き落としができる。ATM手数料はかかるが、ソニー銀行は1.76%、住信SBIネット銀行は1.5%だ。(川本和佳英)

■国内進学先の留学制度利用
 高額の留学費用を抑えるには、国内の進学先として留学制度が充実した大学を選ぶことも選択肢になる。早稲田大学、立命館大学、慶応義塾大学など留学する学生の多い大学では国内在学分の授業料を納めれば、留学先の授業料は免除する仕組みがある。
 例えば早稲田大学は400以上の海外大学と提携。2014年に半年以上の留学をした学生は約1500人で、このうち600人程度が留学先の授業料を支払う必要がないプログラムを利用した。「自宅外通学の学生なら、留学しても4年間の大学費用に大きな差は出ない」と留学センター所長の飯野公一教授は話している。

[日本経済新聞朝刊2016年6月1日付]

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