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アリス=紗良・オットさん グリーグとリストを語る

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NIKKEI STYLE

ドイツ人の父と日本人の母を持つドイツのピアニスト、アリス=紗良・オットさん(27)が9~10月に日本で連続ソロ公演を開く。9月には新たなCDも出す。ともにノルウェーの作曲家グリーグのピアノ曲が演目となる。公演ではリストの「ピアノソナタロ短調」も弾く。リストの超絶技巧の難曲を得意としてきた彼女だが、それとは対照的と思えるグリーグの音楽に引かれる理由は何か。グリーグの知られざる魅力を聞いた。

5月24日、東京の青山1丁目駅近くのユニバーサルミュージック合同会社の本社にアリスさんが現れた。佐渡裕さんの指揮によるオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団とベートーベンの「ピアノ協奏曲第1番」で共演する来日ツアーの空き日。流ちょうな日本語、自然体で気さくな身のこなしだ。ステージではいつも裸足でピアノを弾くアリスさん。「今日は靴を履いているんですね」と聞くと、「もちろん普段は履いていますよ。でも裸足でいるとリラックスした気分になる。音楽はリラックスして楽しむものなので、ステージでは裸足です」。

名門レコードレーベル「ドイツ・グラモフォン」から2008年に出したCD「リスト:超絶技巧練習曲集」でまず世界的に高く評価された。9月には新たなCD「ワンダーランド」(仮題)を出す。「不思議の国のアリス」を連想させる題名だが、演目はノルウェー国民楽派の作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843~1907年)の作品。サロネン指揮バイエルン放送交響楽団との「ピアノ協奏曲イ短調」に加え、「抒情小曲集」のピアノ小品などを収める予定という。「グリーグはリストとは全然違う。リストは派手な作曲家。グリーグは地味で無難すぎると思われがち。でもなぜか癒やされて気分が軽くなる」と話す。

グリーグは劇付随音楽「ペール・ギュント」や「ピアノ協奏曲イ短調」で知られる。「ペール・ギュント第1組曲」の1曲目「朝」は非常に有名で、テレビCMにも使われ、クラシック音楽の人気曲のオムニバスCDなどには必ずと言っていいほど入っている。しかしアリスさんは「あまり知られていない優れた曲が多い。もっとみんなに知ってもらいたい」と言う。

彼女は特にグリーグの「抒情小曲集」などのピアノ独奏の小品を「ミニマリズム」と指摘する。ミニマリズムは装飾や形態を必要最小限まで省略する美術や音楽の表現スタイル。1960年代の米国で台頭し、現代アートの芸術思想といえる。音楽ではミニマルミュージックと呼ばれ、代表的作曲家には米国のスティーブ・ライヒやジョン・アダムズらがいる。シンプルな旋律を微妙に変化させて反復する作品が多い。サティのピアノ曲やウェーベルンの前衛音楽にその起源をみる向きもある。アリスさんはグリーグのピアノ小品に現代音楽に通じるミニマリズムを見つけたようだ。

映像では、グリーグの「抒情小曲集第1巻作品12」から「妖精の踊り」の一部演奏を交えながら、グリーグのミニマリストぶりを説明している。AとBのたった2つの旋律パターンを繰り返すだけのシンプルな形式。静かにあっけなく終わる短い曲。グリーグが作曲活動を続けた19世紀後半から20世紀初頭は、オペラでワーグナー、交響曲でブルックナーやマーラーらが長大で大編成の作品を書いた時代だ。重厚長大の音楽芸術が全盛だった時代に、グリーグは静かでささやかな美しさに関心を示し、珠玉の小品を生み出す特異な独創性を備えていたといえる。

「グリーグが生きたのはマジックの世界だった」とアリスさん。「彼はペール・ギュントのような童話、メルヘンにすごく影響された。彼が暮らした場所には森や湖があって、スタジオジブリの宮崎駿監督のアニメ映画に出てくるような風景。森の妖精とか、ファンタジーのフィギュアが入っている曲がいっぱいある」

9月27日から10月9日まで日本各地で開くソロ公演では、グリーグの「抒情小曲集」の小品と「ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード」に加え、後半にはリストの大作「ピアノソナタロ短調」も弾く。超絶技巧の難曲ぞろいの印象が強いリストと、素朴でシンプル、ミニマリズムのグリーグがどうつながるのか。

「グリーグの『ピアノ協奏曲イ短調』を高く評価し、最初に初見で弾いたのがリストだった」とアリスさんは指摘する。リストは晩年には僧籍に入るほど宗教心が強かった。人気ピアニストで社交界のスターだったリストだが、そんな表面だけを見ていては分からない彼の内面性、心象風景が「ピアノソナタロ短調」にはよく表れているという。「リストはけして速くて派手な超絶技巧だけの、テクニックだけの作曲家ではない。速く弾くのは難しくない。私にとっての超絶技巧は音の美しさをどう奏でられるかです」。リストの深い内面性がグリーグの内省的で静かな世界とつながる。

幼少時から欧州のコンクールで優勝を重ね、高い実力を備えた若手ピアニストとして、日本でも人気が急上昇中のアリス=紗良・オットさん。「まずドイツ語で書いてから日本語に訳す」という形でエッセーも執筆している。「ロシア文学が好き。ドイツ語の文学作品ではシュテファン・ツヴァイクやカフカも読みます」という読書家の彼女。リストやグリーグをはじめ作曲家の意外な内面性を楽譜から読み解き、作品の深みを聴かせていけるに違いない。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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