コンビニの焼き肉弁当対決 炭火、あぶりで香ばしく
コンビニの看板商品といえば、やはり「お弁当」。時間帯を問わず手軽に購入できる"コンビニ弁当"は、遅い昼食にも週末の夜食にも大活躍。さらに、ひと昔前のコンビニ弁当はボリューム重視で大味なイメージがあったかもしれないが、現在はおいしさにも相当こだわって作られている。そこで各コンビニの人気定番メニュー、肉系弁当を食べ比べてみた。今回は牛カルビ弁当編をお届けする。
鉄板焼きではなく直火焼きで香ばしく
今回のコンビニ食品実食テストの対象は、ご飯の上に牛カルビを載せた丼スタイルの「牛カルビ弁当」。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食テストで、コンビニ大手3社の牛カルビ弁当をチェック。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。ただし、セブンイレブンの牛カルビ弁当は、実食テスト後にリニューアルしてしまった。このため、あくまで参考情報としての掲載と考えてほしい。
実食するのは以下の3商品だ。
○ファミリーマート「炙り焼 牛カルビ重」(491円)
○<参考>セブンイレブン「炭火焼牛カルビ弁当」(519円)
前述した通り、今回紹介するすべての弁当が丼スタイルを採用している。肉の脂や旨味、タレの味わいをご飯に染み込ませ、一体感のあるおいしさを狙っているものと思われる。
3商品を並べると、意外にも見た目が全く異なることが判明した。セブンイレブンとファミリーマートの肉は整然と並んでいるのに対し、ローソンは不均一に並べて肉の多さを強調している。タレの色はファミリーマートが一番濃く、次いでセブンイレブン。ファミリーマートは別添えのタレが付いているので、追いダレで味が調整できる。
気になる肉は、セブンイレブンが一番厚くて一枚一枚のサイズも大きいように見える。それに続くのがファミリーマート。ローソンは一枚ずつ肉が切れているのではなく、大小さまざまな肉をご飯が見えないくらいに盛っている。そのため弁当の見た目はいわゆる牛丼に近い。
そして3商品とも、鉄板焼きではなく直火焼きで仕上げているのも特徴だ。セブンイレブンとローソンは炭火焼き、ファミリーマートはあぶり焼きとスタイルは異なるが、いずれも直火焼きによる香ばしい牛カルビ焼き肉が味わえるはず。
また、セブンイレブンとファミリーマートには、もやし、人参、ほうれん草のナムルが隅に少量入っている。一方のローソンは副菜がなく、肉だけで勝負した"男前な弁当"となっている。
炭火焼きとあぶり焼きの違い、肉のカットの違いは、やはりおいしさに関係があるのだろうか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれの牛カルビ弁当の特徴を見ていこう。
ローソンは後を引くおいしさ、ファミリーマートは食べた瞬間の肉の旨さを狙う
各コンビニの牛カルビ弁当を、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通り。なお、分析はご飯を含めた全体の味覚を対象とした。セブンイレブンの分析結果も参考までに掲載した。
ローソンとファミリーマートの分析結果を比べると、棒グラフはファミリーマートのほうが長い。これはファミリーマートのほうが味が強いということだろうか。この味覚分析の結果について、同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「全体的な味の違いはあまりないが、ファミリーマートは旨味が強く、肉の味が強調されている印象」と分析。一方のローソンは、「濃厚さとコクのあるタレで、カルビの特徴である肉の脂に負けない味の構成になっている」と菅氏は話す。
ファミリーマートよりも棒グラフが若干長いセブンイレブンについては、「全体的に味わいが強く、他社よりも塩味が若干効いている。コクのあるソースで御飯がすすむタイプ」と菅氏は分析した。
では、味の印象に大きく影響する旨味と塩味のバランスについて、下図でさらに詳しく見てみよう。
改めてファミリーマートは旨味が強く、肉の味を際立たせた味付けであることが鮮明になったはず。先味である旨味が強いため、食べた瞬間においしさが広がっていくと予想できる。対照的にローソンは旨味よりも後味であるコクを強調した味付けで、後を引くおいしさを狙っているものと思われる。また、セブンイレブンが塩味が利いていることも確認できた。
これらの結果を頭に入れて、以下のプロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合った牛カルビ弁当を選んでほしい。
田辺氏~本能で旨いと思わせるセブンイレブンを大絶賛
音楽プロデューサーでありながら、"肉のマイスター"としてメディアでも活躍する田辺氏に実食をお願いした。各コンビニの牛カルビ弁当を食べた感想は以下の通りだ。
○ローソン
「やっぱり炭火焼きの香りはすごく武器になる」と田辺氏。ローソンの牛カルビ弁当は「肉が薄く、脂身の旨さもないし、肉自体には全く魅力がない」と話すも、「これを炭火焼きで頑張って補っている」という。しかし「まだタレが完成されていない」とコメント。「炭火焼きの香りは一番強いのに、思ったほどタレの味が濃くない。見た目的には焼肉弁当食ってるぞーって気が一番するんだけど……もっとガツンときてほしい」との感想を述べた。
○ファミリーマート
「タレが薄いというかライトというか……」と切り出し、「焼肉屋のつけダレを狙っているのか、カタチは焼き肉丼なんだけどまだ全然完成されていない」と、ファミリーマートの牛カルビ弁当を評価した田辺氏。肉に関しても「旨味がない。逆にあっさりしているともいえるので女性にはいいかも」とコメント。「カフェで焼肉丼があるならこんな味なのかな。焼き肉ボウルのような感じ」という。
○<参考>セブンイレブン
「タレが段違いでおいしい。例えるなら50年以上続く老舗の人気焼肉店の味」と高く評価。続けて「ご飯との割合を考えると肉の量は一番少ないんじゃないかな。でも、その分しっかりタレの味がついていて、肉自体も一番おいしい」と絶賛。「やっぱり肉・タレ・米・炭火焼きのコンセプトは素晴らしい。文句なしに旨い」とコメント。焼き肉弁当に潜むジャンクさや、若いときに食べた懐かしさから、「僕は高級焼肉も食べますけど、(この弁当は)"本当に高級焼肉が正解か?"って問いかけてくる。地元の悪い友だちみたいな感じですね(笑)。この焼き肉丼は"結局俺たちこれが好きなんだよ"って言える旨さがある」と田辺節全開で賞賛した。
「焼き肉丼を買う人が何を求めているのか。これをはき違えないで王道をいっているのがセブンイレブン。定番の弁当は王道が一番おいしい。ストレートを待ってるのに変化球は必要ないんです。セブンイレブンは炭火焼き肉の期待を裏切らない甘辛ダレで、しっかり味がついていて本能で旨いと思わせる。ローソンは肉をもっと頑張ってほしい。焼き肉丼は肉が主役なんだから、値段を上げてでもいい肉を使って厚めにすればセブンイレブンにも勝てるかもしれない。ファミリーマートは炭火焼きじゃないのが痛い。あの炭火で焼いたチャコールの香りは人間をダメにする旨さがある。あぶりをうたうならもっと焦げ目をつけてもいいと思いますね」
さわけん氏~セブンイレブンは炭火焼き感が一番強い
このコンビニ食品実食テストではおなじみ、「科学する料理研究家」のさわけん氏に実食をお願いした。各コンビニの牛カルビ弁当を食べた感想は以下の通りだ。
○ローソン
ローソンの牛カルビ弁当は「炭火焼き感があっておいしい」と話すさわけん氏。肉の厚さはセブンイレブンとファミリーマートの中間で、「その分かみ応えがあるのはいいけど、ご飯と一緒に食べると肉だけが少し残る」とコメント。「肉とご飯が一緒に消えていくのが丼の理想」だという。タレの味については、「少し甘めだけど、上品な焼き肉のタレの味。ご飯がすすむ」とお気に入りのようだった。
○ファミリーマート
肉については「肉がめちゃめちゃ薄い。でも軟らかいのでご飯とのバランスはいい」という。タレは「おなじみの焼き肉のタレの味です」とコメント。「醤油味が利いていて、濃いめ・甘めの味付け」だと話し、ファミリーマートが「焼き肉ではなく焼き肉丼としては一番丼っぽい味わい」とのこと。しかし、「タレはもう少しにんにくを利かせたほうがいいかな」とも述べた。
○<参考>セブンイレブン
「スモーキーで炭火焼きを食べている感じが一番強い」と香りを高く評価。「醤油ダレの味もいいし、そのタレが炭火で焦げた香ばしさもあってとてもいい」と絶賛した。肉についても「厚めだけど口に残らない。肉自体もなかなかおいしいですね」と好印象だったようだ。「肉の味も強く、タレもしっかりした味。そしてリアルな炭火の味・香りが感じられる」との感想を述べた。付け合わせのナムルは味が薄く、評価に影響はないとも。
「肉のクオリティーは、3商品ともあまり変わりません。そのなかではセブンイレブンが一番肉の味が感じられました。しかしどれも少し硬いので、もっとジューシーさがほしいかな。味付けも意外と全部おとなしい。焼き肉丼はタレの味と食感が大事なので、もっとしっかりとした味付けでもいいと思います。とはいえリアルな炭火焼きのスモーキーな香りや、あぶり焼きで肉に焦げ目をつけている点はとても良かったですね」
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2016年5月5日付の記事を再構成]
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