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これまでにもお伝えしたとおり、「経営幹部」を外部から採用する企業が増えています。では、求人企業は経営幹部として迎える人材に対し、どんな要素を求めているのでしょうか。

経理・財務やマーケティングといった専門のビジネススキルとは別に、どんな素養を持つ人材が望まれているか、その力を身につけるにはどうすればいいかをお伝えします。

自らの頭で判断し、自ら動ける「自走力」

経営幹部の採用にあたり、多くの企業が注目するのが「自走力」です。「ハンズオンでやれる人がいい」などともいわれます。つまりは、上からの指示にそのまま従うのではなく、自分自身で考えて判断できる人、また、考えたことを人に任せるのではなく、自ら実践できる人を求めているのです。

大手企業で管理職を務め、中堅・ベンチャー企業に転職しようとする人は、この点でつまずくケースが多く見られます。

大手企業は優秀な人材が豊富であるため、リーダーは部に対して口頭で指示するだけでも事が運ぶもの。しかし、人材がそろっているとはいえない中小企業では、自らが行動を起こして具体的なやり方を示す必要があります。そうした意味で「現場感覚」を失っている人は、採用に至らないケースが見られるのです。

ビジョンを打ち出し、ストーリーを描く力

私は、「経営改革を手がけてきた」という方々にお話を聞く機会がよくあるのですが、これまでの経験を「ブツ切り」で話す人と「ストーリー」で話す人がいらっしゃいます。

ブツ切りで話す人とは「リストラを行いました」「BS(バランスシート)を軽くしました」「経費削減を徹底しました」といったように、やってきたことを羅列して話すだけで終わる人です。

一方、ストーリーで語る人は、目的や将来ビジョンを明確にした上で、そのためにどんな施策を打ち、どんな成果につながったかを一連の流れで伝えることができます。

前者の場合、トップから「やれ」を言われたことをそのまま実行した、とりあえず目先でできそうなことに取り組んだ、という印象を抱きます。対して後者には、中長期視点を持ち、自らストーリーを構築できる力が感じ取れます。当然、企業側は後者に期待を寄せるわけです。

しかも、収益を改善して財源を確保する一方で、新しいものをクリエートする取り組みを同時並行で進めている人もいます。リクルート・グループでは「そろばんとロマン」という言葉がよく使われるのですが、シビアにそろばんをはじきながらも、同時にロマンを抱ける事業を創造するストーリーを描けるということは、会社を率いる立場の人物には大切な要素といえるでしょう。

実際の経営幹部の転職においては、トップから「この課題を解決してくれ」と言われて入社したものの、よくよく分析すると真の課題は別の部分にあった、ということも珍しくありません。つまり、指定された課題にそのまま取り組むだけでは、成果につながらないこともあるわけです。そうした面でも、自分自身でストーリーを組み立てる力が欠かせないのです。

苦境に立たされても冷静に乗り切れる「胆力」

「胆力」という言葉があります。これは危機的状況に陥ったような場合にも、恐れたり動じたりしない精神力を指します。優れたエグゼクティブ・ビジネスパーソンは皆さん、この胆力を備えていると感じます。

転職し、新しい環境の中で事業推進や経営改革をしていくことには大変な苦労が伴います。これまでの会社では難なくこなせていたこと、うまくいっていたやり方が、まったく通用しないこともあります。

壁にぶつかっても折れることのないメンタルの強さ。それも欠かせない要素といえるでしょう。そうした胆力が身に付くかどうかは、いかに多くの修羅場を経験してきたかによるところが大きいといえます。例えばこれまで大手企業の一部署のみに在籍し、波風立たない環境で働いてきた人よりも、異動・転勤・子会社出向といった環境変化と戦ってきた人の方が望ましいと考える企業が多いのです。

経営幹部に求められる力は、日々のトレーニングによって養える

ここまでお伝えしてきた「求められる力」は、自分が日々意識することで磨くことができます。いずれ経営幹部のポジションを目指すなら、次のようなことを意識してトレーニングしてみてはいかがでしょうか

●すべての担当業務に関し、上からの指示をそのまま実行するだけでなく、その目的、各方面に及ぼす影響などを自分なりに考える

●失敗のリスクを恐れず、新しい取り組みにチャレンジする。その試行錯誤の経験を通じ、自分の中に課題解決法の「引き出し」を増やしていく

●失敗したことも、なるべく失敗で終わらせない。会社が許すかぎりは成功するまで続ける「成功体験」を積み上げる

●異動・出向・海外勤務などを拒まない。成長のチャンスとして捉え、「環境変化」を積極的に経験する

このように、「何事にも自分の考えを持ち、チャレンジし、徹底的にやり切る」というサイクルを回していくこと。それが「胆力」を磨くことにつながるのです。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は6月24日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
波戸内啓介(はとうち・けいすけ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
1989年リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西など、リクルートグループの代表取締役社長を歴任。2011年リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長に就任。
 株式会社リクルートエグゼクティブエージェント(http://www.recruit-ex.co.jp/)

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