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次世代リーダーの転職学

プロが止める!「転職してはいけない人」の3つの特徴 ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

2016/6/10

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 「40代以上のミドル層はリストラ候補」と見なし、若年重視主義がまだまだ根強い日本企業。役職定年や配置転換など、新陳代謝を促すシステムは、人材不足といわれる今も静かに回り続けています。ただ、いくら居心地が悪くなったからといっても、すぐに転職をお勧めできない人も多数おられます。35歳以上のミドル世代専門に転職支援をしている立場から「転職してはいけない人」について触れておきたいと思います。

「大手企業、年収1000万円以上、転職経験なし」

 あくまで一般的傾向としての話ではありますが、転職の相談に来られる方の中で

●これまでの労働条件が比較的恵まれている方(企業規模・報酬・役職など)

●社外接点が少なく、転職などの経験値が少ない方

などは、いきなりの転職をお勧めしないことがあります。

 特に「45歳以上で大企業勤務、年収1000万円以上、転職経験なし」で、転職先に求める条件が「現状維持かそれ以上」という方とお会いすると、まずはじっくりとお話を伺った上で、転職をする前に考えておくべきことをお伝えしています。社内での役割の変更やそれに伴う処遇の低下、早期退職金制度など、ご本人からしてみると「期待感ややりがいを感じにくく、また居心地もよくない」という理由で転職を検討されるケースが多いのですが、社内での働き心地が低下したからといって、社外でそれが取り戻せる確証はどこにもありません。

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 「しまった。こんなはずじゃなかった」と思うことや、「あの時、辞めなければよかった」と後悔することもしばしばあります。特に、転職相談でお会いした時点でまだ退職しておられなければ、もう少し仕事を続けながら転職そのものの市場調査とリスク分析をしてみることを勧めるケースが多いのが実情です。

 個別にお話を伺って、ご自身のキャリアの市場での相場観を把握しておられる方、もしくはやりたいことが明確でリスクを取ることへの覚悟ができている方の場合は、その限りではありません。そういう方は、ご本人が後悔する可能性もきわめて少ないため、ご本人のご希望をかなえるべく、あらゆる方法を使って伴走させていただいています。

「今、ここ、自分」志向の転職活動

 転職した後で後悔する方の傾向として、「今、ここ、自分」志向というものがあります。

 この3つのキーワードが先行する状態は、なんらかの焦りを持たれているケースで、通常と比べても視野狭窄(きょうさく)の袋小路に入りかかっている可能性があります。

 1つめの「今」というキーワードは、「転職した瞬間から、一定以上の役割や報酬を求めてしまう」というケースです。

 「転職後すぐ部長以上の役割を担いたい」「入社した段階から前職水準の年収を確約してほしい」という方がおられます。こういう場合、相思相愛で最終面接まで進み、ほぼ内定が決まりそうな場面でも、条件面の考え方の相違で破談になることもあり、活躍機会を逃してしまう残念な事態になりがちです。

 守るべき家族や生活がある以上、特に経済面での安定性の確保が最優先されることは当然です。ただ、逆の観点から見ると、雇用する側にも「採用した人が必ずしも自社の風土や業務に適性を発揮して活躍してくれるかどうかわからない」というリスクがあります。

 特に、業界や職務に土地勘がある方であれば、自分なりに生み出せる成果もある程度見通せるはずなので、半年後や1年後にどれだけの成果を出せば、どんな待遇が得られるのかを確認しつつ、入社直後の、双方にとってのテスト走行期間は、いくらかの条件的譲歩をするということも有効な戦術になりえます。ぜひ「時間を味方につける」という考え方も視野に入れていただければと思います。

 2つめの「ここ」というキーワードは、主に求人案件の重要な選択肢となる、業界や仕事、地域を指しています。

 業界や仕事については、「今までやってきた業界」「今まで担当してきた職種」しか選択肢に入らないという“限定型”と、「絶対に考えたくない業界」「決して検討したくない職種」が多い“食わず嫌い型”があります。

 「これまで積み上げてきた経験という財産を手放したくない」という気持ちは、とても自然なものですが、「自分が気づいていなかった強みが発揮できる機会」や「自分の経験が意外なところで転用できる機会」まで潰してしまうのはもったいない、と思う場面は本当に多いものです。

 また、地域については、長く暮らしている地域や通勤可能な範囲に過剰にこだわる“テリトリー型”の活動を指しています。家族の介護や、健康に関することなど、やむをえないケースを除けば、エリアを広げるだけで選択肢が10倍以上に増えることもよくあります。

 3つめの「自分」というキーワードは、「自己の能力を固定的なものとしてとらえていること」を指しています。

 これも、時間を味方に付けられていない現象の1つですが、「自分の能力はこれ以上、進化も成長もしないもの」ととらえてしまうリスクです。

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 特定の分野での経験やスキル、知識を豊富に持っていることと、今後の自分の成長は本来は無関係なはずなのですが、経験値が高い人ほど、無意識のうちに上限値を決められているふしが見えることがあります。ここに自己評価のズレが重なると、求人を選択する基準にぶれが生じて、自分の力が必要とされ生かされる求人を見落としたり、逆に自分のキャリアが必要とされにくい会社ばかりに応募を続けたりしてしまい、やがてキャリアの迷子になってしまいます。

 ちなみに自己評価のズレとは、特定の環境やコンディションに依存していたこれまでの実績を拡大的にとらえてしまい、周囲の評価よりも自己評価を高めに自覚しているケース、逆にかなり応用範囲も広く、他業界から見てもかなり高い評価を得られる力量がありながら、ご自身で過小評価してしまっているケースなどです。

 先に異業界に転職した先輩や、異業種の知人・友人、転職コンサルタントなど、自身のキャリア価値を客観的にアドバイスしてくれる人を複数見つけて、転職市場における自分自身のキャリア価値を把握することを強くお勧めします。

「ルサンチマン主導型」の転職活動

 最後の1つはルサンチマン(恨み)主導型の転職です。

 昨今、企業のリストラ政策は過酷になってきています。経営陣の失策や怠慢、傲慢による倒産危機、経営不安によって、待ったなしのリストラも増えています。

 「会社がこうなったのは経営陣のせいだ。社命に従って何十年も歯を食いしばってがんばってきた自分たちには罪はない」という恨み節を言いたくなる気持ちの方もたくさんおられます。ただ、「だからあの会社に仕返ししてやるのだ」というような気持ちが先行して転職活動をしてしまうと、転職先の状態や、数年後のイメージを持たないまま、腹いせ的に同業他社だけを検討先にするなど、転職先選びの段階で目が曇ってしまうこともあります。

 転職活動は、あくまでも自分自身が生き生きと働ける次のキャリアを見つけるためのものであり、それだけを目的に進めたほうが、いい転職が実現できる確率は高まります。

 退職すると決めた以上は、自分自身を大切に、自分が気持ちよく働き続けることだけを目的に、最善の活動と選択をしていただきたいと思います。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は6月17日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
ルーセントドアーズ株式会社代表取締役
1965年、兵庫県生まれ。89年、関西大学法学部法律学科卒業、株式会社リクルート入社。2006年から13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。13年、リクルートドクターズキャリア取締役・リクルートエージェント企画グループGMを兼務した後、14年にルーセントドアーズ株式会社を設立。現在は、中途採用市場の積年の課題であった「ミドル世代の適正なマッチング」をメーンテーマと設定し、日本初となる35歳以上のミドルキャリア専門の転職支援サービスを運営している。
35歳以上の転職支援サービス「Career Release40」
http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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