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プロが明かす出世のカラクリ

評価の低いあの人が、なぜ出世するのか?(上) 出世する人は人事評価を気にしない(1)

平康 慶浩 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント

2014/12/9

PIXTA

 自分は仕事ができるのに、上司が評価してくれない、出世できていない。そう思う人は少なくないでしょう。人事コンサルタント、平康 慶浩著の「出世する人は人事評価を気にしない」。この本を読めば、出世のカラクリ、あなたの会社の人事を少し理解できるかもしれません。

◆大失敗している人、敵をつくりやすい人が 取締役になる不思議

 結果を出している人。あるいは、社内で評判のいい人。上司に気に入られている人。そんな人が会社の中で出世する、と思われがちだ。 でも実際のところは違う。

 いや、正しく言えば、課長手前までは「結果を出した人」や「評判のいい人」が出世することが多い。あるいは「上司のお気に入り」が出世することだってある。でも、そこからは違う。あなたの周りにもいるんじゃないだろうか。

 大成功もしているが、大失敗もしている。一部の人には好かれているが、別の人たちには極端に嫌われている。なのに、部長やその上の執行役員、取締役になった人がいるんじゃないだろうか。

 以前、私が人事評価制度の大改定を請け負った売上数千億規模の某企業がある。そこの取締役たちは、まさにそんなタイプの人たちだ。

 そのうちある一人は最初、外部から管理職として中途採用された。管理職時代の周りの評判は最高か最低かの極端なものだった。規模もビジネスも違う業界から転職してきて、しかも当時としては珍しい海外畑を歩んできていた。だから、「彼のような人材が新しいわが社をつくっていく」と期待される一方で、「グローバルかぶれ」と陰口をたたかれることも多かった。

 彼自身、性格的にも敵をつくりやすいところがあり、上司だろうが部下だろうが議論をふっかけては対立関係をつくり出してしまっていた。ビジネス上の議論で一度対立した後、それと関係ないシーンだからといってその対立関係を忘れられる人は多くはない。外資系だと「ビジネスでの対立と通常の人間関係は違う」という暗黙のルールがあるというが、そんなことはない。外資系だってビジネスで対立すれば、関係にしこりは残る。むしろそのまま引きずる人だって多い。この企業はもちろん日本企業だったので、当然しこりは多く残っていた。

 でも、彼はやがて社長になった。彼の性格はきついままだったけれど、悪い評判を広めていた人たちは一斉に口をつぐまざるを得なくなった。

 その他、あまり詳しく書くと差し障りが出るので概要だけを記すが、その会社では、他の取締役たちの多くが「挫折」した経験を持っていた。大失敗をして子会社に長く飛ばされていた人が常務取締役。大病を患って、出世競争から外れたと思われていた人が取締役になったりした。執行役員も大勢いるけれど、業績や人柄に波のある人が多い。

 なのに、業績はうなぎのぼりだ。株価もどんどん上昇している。

◆会社生活の中で、“競争のルール”は2回変化する

 一般的な出世のルールは学問的に理論づけられている。経済学者のエドワード・P・ラジアーがその理論を発表したのは、1980年代のことだ。ランクオーダートーナメント。トーナメント理論ともいわれるが、それが組織における出世の基本ルールだといわれている。

 日本語で要約するとこうなる。

「同じ階層(ランク)にいる人たちで、次の出世順位(オーダー)を競い合う、勝ち抜き戦(トーナメント)」

 それが繰り返されて、やがてトップにまでたどり着く。それがルールだ。

 なるほど。それだったら別に課長だろうが部長だろうが、競争のルールは変わらないんじゃないか。そう思うだろう。確かに、「誰かが選ばれる」という一点においては同じかもしれない。

 でも、選ばれる際の基準が、会社の中で2回、大きく変わる。

 最初の昇進基準の変化は、課長になるときに起きる。

 あなたがすでに課長になっているのなら、その基準の変化は実感しているだろう。

 例えば同期で一番早く係長に昇進した人が、課長のポストを前に足踏みすることがある。

 その理由が、課長になるときの基準の変化であり、管理職への昇進基準の実態だ。

 同期トップで係長になった人を思い出してみよう。彼あるいは彼女が選ばれた理由は、もちろん仕事ができるから、ということではあるだろうけれど、それをさらに具体的に考えてみれば、「仕事が速い」「仕事が正確だ」というものじゃなかっただろうか。もちろん実際はそんなあやふやなものではなく、各社に詳細な昇進基準があるが、総じて主任や係長に早く昇進する人にはそんな特徴がある。

 人事制度的に言えば、一般社員層の間の昇進基準は、今担当している仕事での評価結果に基づくのだ。平社員から主任、主任から係長に昇進するときなどだ。一般社員の間は、今担当している仕事で、周囲の人たちよりも優れている人が早く出世する。

 しかし管理職になるときには、別の昇進基準が用いられる

◆目の前の仕事で結果を出しても、ある日昇進できなくなる

 人事用語で言えば、一般社員の間(主任、係長などを含む)は「卒業基準」で昇進判断がされる。小学校のカリキュラムを終えたから中学校へ、中学校のカリキュラムを終えたから高校へと進む、というのと同じ理屈で、平社員を卒業して主任や係長になる。

 しかし、大学は違う。入試を経て、大学生としてふさわしい学力があるかどうかを判断される。

 管理職に昇進するときも大学入学と同じような判断がされる。これを「入学基準」と言う。

 拙著『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』(東洋経済新報社)にも書いたが、この時の視点の変化に対応できる人が管理職に昇進しやすくなる。目の前の仕事でいくら結果を出したところで、「上の役職」の考え方ができそうになければ、彼、彼女が出世することはない。一般社員と管理職との間にはそのような壁がある。

 管理職への昇進基準やプロセスについては、第3回で詳しく説明する。

◆一般社員の間は「卒業基準」、課長からは「入学基準」

 無事に課長になれたとして、その次の出世はなんだろう。課長になれば次長、そして部長を目指す人が多い。いわゆるラインマネジャーとしての出世だ。この時の昇進基準は、同じ管理職層の中だからといって、卒業基準ではない。平社員から主任や係長に昇進した状況とは違うのだ。

 20年も昔なら、「彼も課長になって10年になるからそろそろ次長に」という昇進基準を使う会社も多かった。しかし今、そんな基準を用いている会社はどんどん減っている。私の知っている限りで言えば、景気に左右されづらいインフラ企業とか公的機関、意外に保守的なマスメディア関連、あとは中堅以下のオーナー企業の一部くらいだ。

 その他の大半の企業では課長から次長、あるいは部長への昇進基準は、原則として「入学基準」だ。それも課長への入学基準よりもさらに厳しい基準を使う。その理由はもちろん、課長よりも部長のほうが、担当する職務が高度なので能力も高くないといけない、ということだ。

◆「職務主義」のもとでは、課長として優秀でも部長にはなれない

 さらにもう一つ現実的で、かつ近年増えている考え方が「職務主義」によるものだ。この考え方は、上場している大企業などではむしろ当たり前になりつつある。「つまり、優秀な課長が部長になるのではなく、部長の仕事にふさわしい人を部長に据える」という考え方だ。なぜこれが職務主義によって生まれるのかと言えば、「課長や部長の仕事=職務」をはっきりと定めるようになったからだ。

 実は一昔前までは、課長の仕事も部長の仕事もそれほど変わらなかった。単に年次が長い管理職が部長になり、若い管理職は課長だったりした。しかし職務主義のもとでは、課長とは最小の事業ユニット責任者であり、部長とは複数の事業ユニット=課を束ねて中長期での計画を策定する責任者、という区分を設けたりする。

 課長と部長とでは、仕事のレベルだけでなく、そもそもの仕事の内容まで異なるようになったのだ。そこで生まれた考え方が職務主義であり、人事制度としていうところの職務等級制度なのだ。具体的に何かといえば、担当している仕事の大きさによって給与やポストを定義しよう、という考え方だ。

 あたりまえだ、と思うかもしれない。でも多くの日本企業ではそうではなかった。

 「職能主義」があたりまえだったからだ。

[日経Bizアカデミー2014年12月9日付]

 日経Bizアカデミーのアーカイブ記事のうちの人気連載を再掲載しました。次回は5月28日(土)に公開します。平康氏の書き下ろしの新連載も合わせてご一読ください。

◇   ◇   ◇

平康慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年より現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。著書に『7日で作る新・人事考課』『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』がある。

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