「主犯」は加齢にあらず 女性の手の痛みに新説
「手の痛みは決して加齢や使い過ぎのせいではない」と話すのは四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンターの平瀬雄一センター長。「例えば指の痛みは利き手でない方にも出るし、最も使わない左のくすり指に多い。高齢者全員に発症するわけでもない」(同)
女性には手の痛みが出やすい時期が2回ある。一つは40代後半~50代、もう一つは妊娠中や出産後まもない時期だ。「出産前後のホルモンバランスが大きく変わるときに痛みを訴える人が多い。ただ、断乳して月経が戻れば、ほとんどの場合自然に消える」とNTT東日本関東病院整形外科の大江隆史主任医長。
40代後半~50代は更年期だ。更年期症状の代表はのぼせや多汗だが「一般的な症状はないのに手だけ痛むという人も少なくない」(平瀬センター長)
「女性ホルモンと手の痛みの因果関係はまだ証明されていない」(大江主任医長)が、平瀬センター長は、「発症には、ホルモン分泌量の多寡ではなく、減るときの"落差"が関係しそうだ」と指摘する。「子宮内膜症の治療でホルモン剤をのんだ人で、手の痛みが軽くなったという症例が多数ある」(平瀬センター長)。ホルモン剤の投与で、減ったホルモンが"補充"された格好になり、痛みの症状が緩和されるのではないか、というのだ。
実際、一般の更年期症状と同様に、ホルモンが低値で落ち着く65歳以降になると、手の痛みの発症数は急減する(下グラフ)。
「関節リウマチ」は血液検査で確認を
自己免疫疾患である関節リウマチは、第二関節から症状が始まる。そのため、特に第二関節が腫れるブシャール結節と間違えられやすい。「ブシャール結節では血液検査でMMP3は陽性でも、抗CCP抗体は陰性。にもかかわらずリウマチと誤診されるケースも」(平瀬センター長)。疑わしい場合はリウマチ専門医を受診しよう。
●CRP(炎症の程度)
●MMP3(骨破壊の指標)
●抗CCP抗体(リウマチに特有の抗体)
→すべての項目で「陽性」の場合、活動性の「関節リウマチ」と診断される
この人たちに聞きました
NTT東日本関東病院(品川区)手術部長、整形外科主任医長。日本整形外科学会・日本手外科学会専門医。東京大学医学部卒業後、同大病院助手、同整形外科医局長、名戸ヶ谷病院整形外科部長等を経て2015年より現職。ロコモの啓発にも注力
四谷メディカルキューブ(千代田区)手の外科・マイクロサージャリーセンター長。日本手外科学会専門医。日本形成外科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業後、渡米しHarry Buncke教授に師事。帰国後東京慈恵会医科大、埼玉手外科研究所を経て2010年より現職
(ライター 渡邉真由美、構成:日経ヘルス 黒住紗織)
[日経ヘルス2016年6月号の記事を再構成]
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