変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

孫正義氏が率いるソフトバンクグループが10日、東京証券取引所で2016年3月期の決算会見を開いた。1年前のこの席上で、孫氏は自らの後継者候補としてニケシュ・アローラ氏(48)を報道陣にお披露目した。今年59歳となる孫氏。「60代で後継者に会社を継承する」と公言している。ただ、この決算期では高齢の実力リーダーが実質的なトップにとどまる人事が目立った。超高齢化社会を迎える中、60代で孫氏は後継者に会社を譲れるのか。

「経営幹部のなかで一番会っているのはニケシュだ。この1年は彼から学ぶことの多い日々だった。(評価は)ますます、いや毎日高まっている」。孫氏は隣に座るアローラ氏をこう評した。

孫氏は19歳のときにライフプラン「人生50カ年計画」を立てた。20代で事業を興し、30代で軍資金をためる。40代で数千億円規模の企業にし、ひと勝負をかける。50代で数兆円の企業にし、ビジネスモデルを完成させる。そして60代で後継者に継承する。

筆者は孫氏が40代の頃からソフトバンクを取材してきたが、当時から「孫さんは大ぼら吹き」といわれ、2000年代までは何度もソフトバンク破綻説が流されてきた。しかし、ライフプランを公約どおりに実行。今も米携帯電話子会社スプリントの再建問題などを抱えるが、16年3月期の連結売上高は8%増の9兆1535億円と着実に成長している。

超高齢化社会を迎え、日本企業の高齢の実力リーダーは意気盛んだ。信越化学工業は社長交代を発表したが、90歳の金川千尋会長のカリスマ経営が続く。富士フイルムホールディングス(HD)も社長交代を決めたが、古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO、76)の立場は変わらない。

孫正義氏(中央)と後継者候補のニケッシュ・アローラ氏(右)

孫正義氏(中央)と後継者候補のニケッシュ・アローラ氏(右)

しかも孫氏の盟友でソフトバンク社外取締役のファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏(67)、日本電産社長の永守重信氏(71)といずれの創業トップも「ますます元気。後継者の影すら見えない」(両社の関係者)状況だ。「今の60代はまだまだ若い。とても孫さんが後継者に譲るとは思えない」とソフトバンク幹部も話す。

ただ孫氏は「僕は19歳のときの誓いを一度も変えたことがない」という。IT(情報技術)業界は日進月歩でイノベーションが進む。孫氏と同世代のスティーブ・ジョブズ氏はすでに他界し、ビル・ゲイツ氏は引退。主役は一回り以上は若い世代に移っている。

かつて孫氏はこうつぶやいたことがある。「後継者に譲るときの決断は僕にとっての一番難しい決断になるだろう」。まさに成功した経営者の最後の成否を分けるのが、後継者への継承だ。19歳の誓いを孫氏は守れるのだろうか。

(代慶達也)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック