通信料を無償に 格安SIM各社、地震被災者に配慮
格安SIM最前線
トピックス1 熊本のデータ通信を無償・無制限化
最大震度7を記録した4月14日夜の地震から、群発的に地震活動が継続。熊本県と大分県を中心に、甚大な被害が生じた「熊本地震」。今回の地震を受け、通信会社のいくつかは被災地域に住むユーザーへの支援策を打ち出した。支援策の内容や適用される地域は通信会社によって異なるが、主にデータ容量の無償追加や、毎月使えるデータ容量の一時的な無制限化が実施されている。
NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」、IIJの「IIJmio」、ケイ・オプティコムの「mineo」は今回の地震で災害救助法が適用された地域のユーザーにデータ容量を無償で提供した。一方、イオンリテールの「イオンモバイル」とDMM.comの「DMM mobile」は、熊本県内の全ユーザーに対し同様の支援策を行った(提供された容量はOCN モバイル ONEが5ギガバイト、残る4社は2ギガバイト)。
また、UQコミュニケーションズの「UQ mobile」では、4月と5月にユーザーが追加購入した容量をすべて無償で提供している(対象者は災害救助法が適用された地域のユーザー)。
通信インフラが打撃を受け、情報が錯綜(さくそう)・停滞する災害時において、コミュニケーションや情報収集の手段となるスマホの重要性は非常に高い。
格安SIMでは所定のデータ容量を使い切っても低速での通信が可能だが、高速での通信時に比べて利便性は格段に劣る。容量を追加したり上限を撤廃したりした今回の支援策は、自宅から離れて避難生活を強いられる人々に対し、普段以上に重い役割を担うことになったモバイルデータ通信をサポートするものだ。
平時の価格競争やキャンペーンばかりでなく、災害などの緊急事態において各社がどのように対応したのかも、しっかりと確認しておきたい。
トピックス2 遂に3000円の定額通話プランが登場
次は、料金に関するもの。「格安SIM」という名称は知っていても、具体的にどのくらい「格安」なのかはわからないという人も多いだろう。そんな人に向けて、「最安値」に関するトピックスを紹介する。
まずは格安SIMの弱点だった「通話定額プラン」に関するものだ。通話を定額にするサービスで意欲的な価格設定を行ったサービスが登場した。
格安SIMサービスはデータ通信を重視しているためか、大手キャリアのように「いくら話しても通話料は定額」という通話定額プランを提供している通信会社が限られている(記事「いまさら聞けない格安SIMのメリットとデメリット」参照)。せっかく格安SIMにしても、電話をかけることが多い場合、かえって通信費が高くなってしまう場合もある。
この通話定額プランに関して、4月1日から意欲的な価格設定でサービスを開始したのが、エックスモバイルが提供する「もしもシークス」だ。
「もしもシークス」は、音声通話SIMが月額1058円(税込み、以下同)、データ通信SIMは月額410円で、それぞれ月500メガバイトのデータ容量が使える格安SIMサービス。料金プランは、必要に応じて毎月のデータ容量を追加していく仕組みになっている。例えば、音声プランに月1ギガバイトを追加して、データ容量を合計1.5ギガバイトにした場合、1058円の月額料金に648円が追加され、毎月の料金は1706円になる。3ギガバイトを追加すれば、合計3.5ギガバイトまでのデータ通信が毎月2354円で使えるようになる。
このサービスで注目したいのは、国内宛ての通話料金が定額になるオプションが月額1944円で提供されている点だ。データ容量を追加しない場合、基本料金と合わせた毎月の料金は3002円(データ容量は月500メガバイト)となる。
また最初の5分間だけ通話定額になるオプションも、月額918円で用意されている(5分を超えた通話料は30秒当たり税別19.9円)。いずれも、通話料金が定額になるのは、もしもシークスが提供する専用アプリから発信した場合のみだ。
大手の通信会社で通話定額プランを契約する場合、NTTドコモとKDDI(au)は一番安くても月額7020円(データ容量は月2ギガバイト)、ソフトバンクは月額6372円(データ容量は月1ギガバイト)かかる。もしもシークスは、これら大手の半額以下の月額料金で通話定額が利用できるわけだ。
このように、もしもシークスの新プランと通話定額オプションは、すべての通話を定額にする方法としては、今のところ月額料金が最も安い。電話番号を変えずに通信会社を乗り換える「携帯電話・PHS番号ポータビリティー」(MNP)制度を利用して大手の通信会社から乗り換えれば、毎月の料金を大幅に削減できる可能性もある。
今後も定額制の通話料金を実現した格安SIMが増えることで、通話定額プランの選択肢が一層広がることを期待したい。
トピックス3 まだ止まらぬ最安値競争
格安SIMの一番の魅力は、何と言っても月額料金の安さだ。ひところより落ち着いたとはいえ、格安SIMの最安値競争からもまだまだ目が離せない。
4月1日、DMM.comの格安SIMサービス「DMM mobile」が月額料金の値下げを実施した。
DMM mobileでは月1ギガバイトの少ない容量から月20ギガバイトの大容量まで、容量別に10種類の豊富なプランを提供する。「業界最安値水準」を掲げ、どのプランも格安SIMの標準的な価格を下回っているのが特徴だ。
ただ今年に入ってライバルも登場した。2月にサービスを開始したイオンリテールの格安SIM「イオンモバイル」は、月2ギガバイトなど一部のプランにおいては、DMM mobileよりも安い月額料金を設定。料金プランの種類も月500メガバイトから50ギガバイトまで11種類と多く、DMM mobileにとっては強力なライバルが出現した形となった。
今回の改定により、DMM mobileの月額料金はイオンモバイルと同等か、これよりも安くなった。なかでも音声通話SIMの月5ギガバイトのプランは、格安SIMでも最も安い月額2062円まで値下げされている。
必ずしも安ければ良いというわけではないが、月額料金の改定やデータ容量の見直しが一度も実施されない格安SIMも多いなか、DMM mobileは業界のトレンドに合わせた積極的な値下げや、オプションサービスの拡充を行ってきた。今後の動向にも注目したい。
(ライター 松村武宏)
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