若冲生誕300年 小林忠氏が語る奇才の画業
江戸中期の絵師、伊藤若冲(1716~1800年)が今年生誕300年を迎えた。東京都美術館(東京・上野公園)で記念の「若冲展」が開かれるなど、異彩を放つ天才絵師の画業に一段と注目が集まっている。岡田美術館(神奈川県箱根町)の館長で江戸絵画史研究の第一人者、小林忠氏がその魅力を語った。
5月24日まで東京都美術館で開催中の「生誕300年記念 若冲展」では、若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と、宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の「動植綵絵(さいえ)」30幅が東京で初めて一堂に会した。若冲の人気はブームの観を呈しているが、初期から晩年まで約80点の代表作を集めた今回は決定版ともいえる展覧会となっている。
開幕前日の4月21日には報道関係者向けの内覧会が開かれ、今回の「若冲展」の監修者でもある小林氏が講演し会場を巡った。「動植綵絵」の「貝甲図」や「群魚図」などを前にして小林氏は「本物の動物や植物を非常に丁寧に観察し、専門家も驚くほどの忠実さで描いている」と説明した。現代の若者をも引き付ける魅力について会場で聞くと、「日本の古い美術にはない大胆で独創的なデザイン力にひかれるのではないか」と語った。
枯淡の味わいを醸す水墨画の数々も展示されている。その作品の多くが命あるものの生命力と祝祭感に満ちている。小林氏は「自然界ではあり得ないような光景もあるが、それらは仏にささげた絵、仏様の目線で捉えた動物や植物だと最近思うようになった」と話す。信仰の厚い仏教徒としての若冲の思想も体感できる展示となっている。
(映像報道部)
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