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「町は住民にしかつくれない」 復興目指す宮城・女川

ドキュメンタリー映画「サンマとカタール」、監督・乾弘明

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NIKKEI STYLE

4月14日から震度7の地震が2度も起こった熊本地方では、多くの被災者が不安を抱えながら避難所での厳しい生活を余儀なくされています。お見舞い申し上げます。まもなく公開される「サンマとカタール 女川つながる人々」は2011年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県女川町の復興を記録したドキュメンタリー映画です。監督として制作に携わった立場から、被災地のお役に立てればと思い、筆を執らせていただきました。

日本で震度7が記録された地震は1995年の阪神淡路大震災、その9年後の新潟中越地震、そしてさらに7年後の2011年には東日本大震災、あれから5年たった今回の熊本地震です。いずれも大きな被害を受けました。

日本に住む私たちは地震を避けることはできません。震度7が起こることを想定し対策を立てておくことが、国、自治体、企業、さらに私たちも必要なのです。もっと重要なのは被災後の復興。被災した地域によっては、不自由な生活や産業の停滞により住民が流出してしまい、被災前よりも厳しい状況で復興計画を進めなくてはなりません。

この映画の取材地である女川町も震災前には約1万人だった人口が、7000人ほどに減少しています。5年を経過した今でも住民の3割が仮設住宅で暮らしています。震災の傷は癒えてはいません。しかし女川町は毎年3月11日が近づくと、しばしばメディアに取り上げられています。それはなぜなのでしょうか?

女川町を2年以上撮影した映画を見ていただければ、メディアが注目する理由は「女川の人々」であることを感じてもらえると思います。良い町はそこに暮らす住民にしかつくれないのです。

「サンマとカタール」の企画は復興をテーマに震災の2年後にスタートしました。当初は中東のカタール国の支援によって建てられ、女川町復興のシンボルとなった大型冷蔵施設「マスカー」建設に奔走した男たちに焦点を当てる計画でした。

その中心人物である女川魚市場買受人協同組合の石森洋悦さんに取材を重ねていくうちに、石森さんから「すでに出来上がっているマスカーを軸にするのではなく、今まさに町づくりを必死に進めている若者たちを取り上げては」という提案をいただいたのです。女川町復興の起点となった「マスカー」をすでに軌道に乗せていた石森さんたちベテラン組は、未来の女川町の町づくりを40代をリーダーとした若者たちに託していたのです。

東日本大震災後、私はテレビ番組の取材で被災地を何度か訪ねていましたが、女川に行ったのは2014年の春が初めてでした。町の中心である駅建設予定地周辺は瓦礫(がれき)の撤去が終わり、何もない更地に土ぼこりが舞っていました。まさに復興へのスタートラインに立っている状態でした。

自分たちの町を自分たちの力で更地からつくっていくことなんて滅多(めった)にないことです。「震災なんてない方がいいに決まっている、でも町が壊滅的な被害を受けた以上、今の時代に合った未来を見据えた町づくりをゼロから始める」。彼らの強い意志に揺るぎは感じられませんでした。

もちろん受け継がれてきた歴史もあり、町民それぞれの思いもある中での町づくりは大変なことです。震災前の良いところ、悪いところを確認し選択し、とにかく前向きに進んでいく。それぞれの家業も震災前よりも進展させるため、寝る間も惜しんで動いていました。

当初は誰に絞ることなくリーダー的な若手の方々を撮っていましたが、震災後に始めたイベント「復幸祭」を追っていくことになり、実行委員長の阿部淳さんを中心に撮影しました。女川町の須田善明町長も重要な役割で出演されています。

町長が行政側、淳さんたちが民間側の代表で、民間と行政が絶妙なバランスを取りながら町づくりを担う。それを受け取る側の住民として阿部由理さん(ご主人は町役場の職員で、女川復旧に奔走するなか病に倒れ亡くなった)に取材させていただきました。長女の美奈さんは震災を経験し、父を亡くし、いつ終わるかもしれない人生を考え、本当にやりたいことに進んでいきます。

町の変わりゆく姿をとらえるため、女川町内の数ヶ所に定点カメラを設置しました。問題は、定点カメラを置く場所でした。当初町全体は更地なのですが、工事区域で日々変化してしまい、カメラを設置できる場所を選ぶのに苦労しました。最終的には町の人に協力していただいて、工事の入らない場所を確保させてもらい、2年間に及ぶ定点撮影をすることができました。

映像として記録を残していくことは、アーカイブとしての重要な意味があります。記録映像は過去を伝え、未来への指針になる力を持っています。震災後に一度更地になった町が新しく生まれ変わっていく姿を記録しておくことは、今後も必ず起こる震災復興の参考資料としても役立つと思っています。

町の復興は住民だけでは成し得ません。ぜひ女川町に足を運んで、美味しい魚介類を食べてください。それが女川の復興に直接結びつきます。まだお店は少ないですが、その分お酒好きが多い若きリーダーたちに出会う機会がたくさんあります。女川に行ったら夜飲みに行って彼らと話してほしいです。今の女川の最大の魅力は人ですから。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

改めまして、熊本地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災者のみなさまに、心からお見舞いを申し上げます。

これから先も心身ともに負担になる日々が続くと思います。東日本大震災から5年たった今年3月、女川町の阿部淳さんは「今も目の前にあることで一生懸命です。まだまだ通過点で、前を見ていないと倒れそうになります」と完成披露試写会で語ってくれました。

5年たっても女川町の傷は癒えていません。しかし阿部さんたちは震災復興を通じて多くの仲間と出会い、絆を強めたとも言います。そして震災前の女川町よりもさらに進んだ町づくりに日々励んでいます。

熊本地方で被災されたみなさまは、まだ復興に取りかかれる段階ではないと思いますが、"前を見て"進んでいけますことを心より願っております。

<プロフィル>
乾弘明(いぬい・ひろあき) 1963年北海道生まれ。86年『ニュースステーション』(テレビ朝日、以下同じ)でディレクターになる。自然、環境をテーマにしたドキュメンタリー番組の制作で高い評価を得る。2010年より『池上彰の学べるニュース』プロデューサー、『相葉マナブ』『しくじり先生 俺みたいになるな!!』など多くの番組を手がける。

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