出世ナビ

職場の知恵

「こども食堂」全国に広がる 貧困や孤食に救いの手

2016/1/8

 「こども食堂」。全国各地にこんな名称の食堂が相次いで誕生している。経済的に厳しかったり、ひとり親で食事の支度がままならなかったりと、様々な事情を抱えた子供らに無料や低価格で食事を提供する場所だ。育ち盛りの子供に十分な栄養をとってもらうとともに、大人数で食卓を囲む楽しさを知ってもらう狙いもある。

 昨年12月21日、東京都練馬区内の区民館。午後7時すぎ、大広間のテーブルに温かい料理が次々と並んだ。

 「おなかすいた」「早く」。タンドリーチキンやリンゴのタルトなど、クリスマスムード満点のメニューを前に子供たちの目が輝く。「いただきます」の声とともにチキンにかぶりついた。

「ダイコンこども食堂」で、食卓を囲む子供たち(東京都練馬区)

 月に2回、この区民館にオープンする「ダイコンこども食堂」は、区内で飲食店を経営する只野公朋さん(39)が昨年10月から始めた。食材の大半は農家や個人から無料で分けてもらい、只野さんやボランティアが調理する。子供は無料、大人は一食300円。子供だけでふらっと立ち寄ることもできる。

 この日は大人を合わせ約20人が利用した。4度目という主婦(43)は、子供の病院通いに付き添うため夕食準備の時間がとれず「とても助かった」。育児の悩みを相談するなど親同士の交流の場にもなっているという。

 「親子連れが気軽に立ち寄れる地域の居場所として定着させ、貧困家庭を支援する拠点のひとつにしたい」と只野さん。今春にはさらに1軒を同区内に開く予定だ。

■首都圏で30カ所以上、各地でもオープン相次ぐ

 こども食堂は2012年ごろに都内で始まったとされる。昨年4月に発足した「こども食堂ネットワーク」によると、食堂は首都圏に少なくとも32カ所あり、半数が15年に開設した。経済的理由で十分食べられない子供に栄養バランスのとれた食事を提供するほか、大人数で食べる機会が少ない子の「孤食」を改善する狙いもある。

 取り組みは全国に広がる。宮城県ではNPO法人「TEDIC」(石巻市)が昨年11月、町内会などと連携し同県内初の食堂をオープンした。同法人の門馬優代表理事は「震災で失われた地域のコミュニティーづくりにも役立てたい」という。

 滋賀県でも昨年5月から、ボランティア団体や社会福祉法人などが連携し、県内11カ所で食堂を開設した。「さみしさやしんどさを抱える子供の居場所づくり」を目標に掲げ、2018年度末までに県内の小学校と同じ約230カ所の食堂を開くことを目指す。

 動きは今後も広がりそうだ。こども食堂ネットワークが情報を共有しようと今月11日にサミットを企画したところ、約200人の定員がいっぱいになり、関心の高さをうかがわせた。

 今後は知名度の向上が課題だ。子供や保護者が食堂の存在を知らず、支援の手が届かないケースも多いといい、ダイコンこども食堂の只野さんは「民生委員などの力を借り、本当に支援が必要な家庭に存在を知らせたい」と話している。

■子供の貧困 6人に1人、平均所得の半分未満で暮らす

 厚生労働省によると、平均的所得の半分未満で暮らす子供の割合は2012年に16.3%と過去最悪を更新した。子供の6人に1人が貧困状態にある計算。ひとり親世帯に限ると54.6%とさらに深刻になる。経済協力開発機構(OECD)の調査でも、加盟34カ国の平均値を上回る水準で推移している。

 文部科学省の調査では、経済的に困窮する家庭に自治体が学用品代などを補助する「就学援助制度」の支給対象となった小中学生の割合が、12年に15.6%で過去最高を更新した。13年にはやや減ったものの、経済的に苦しい家庭の子供は依然多いとみられる。

 家計は子供の食生活にも直接影響する。厚労省の研究班が13年に小学生約900人を対象に実施した調査では、標準的な所得の半分を下回る世帯の子供は「家庭で野菜を食べる頻度が低い(週3日以下)」割合が一般世帯の2倍、「インスタント麺やカップラーメンを週1回以上食べる」割合は2.7倍だった。

出世ナビ新着記事