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和の芸能とIT競演で訪日客キャッチ 能:タブレットに英語訳/狂言:眼鏡型端末利用

2016/6/26 日本経済新聞 朝刊

観客に貸し出すタブレットにセリフの英訳を表示する(東京都新宿区の矢来能楽堂)

 能や狂言といった伝統芸能などで訪日外国人(インバウンド)の観客を開拓する動きが東京都内で広がっている。スマートフォン(スマホ)や眼鏡型のウエアラブル端末(スマートグラス)などIT(情報技術)を活用。セリフや解説の英訳や中国語訳を見ながら鑑賞できるようにする。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて訪日外国人を新たなファンとして取り込む。

 能の主要流派である観世流と宝生流は9月、初の大規模なインバウンド向け公演を都内で開く。矢来能楽堂(東京・新宿)と宝生能楽堂(同・文京)でそれぞれ2日連続、計4日間公演する。

 NTTコムウェア(東京・港)と組み、外国人の観客がタブレットに表示された英語などのセリフや解説を見ながら鑑賞できるようにする。能の進行にあわせ、スタッフがタブレットの親機でセリフの訳を表示する。親機の操作はサーバ経由で鑑賞者が手に持つタブレットの子機に連動する仕組みだ。

 両会場では30~50台程度のタブレットを貸し出す計画。セリフの外国語訳が流れるイヤホンガイドも100台以上用意する。公演時間は午後7時から9時ごろと遅めの時間帯に設定する。演目も上演時間が比較的短い「葵上(あおいのうえ)」を選んだ。初心者の訪日外国人でも能の鑑賞を気軽に旅行の日程に組み込みやすいよう配慮した。

セリフの英訳や中国語訳に加え、写真撮影ボタンもつけた(東京都中央区の明治座)

 明治座(東京・中央)は9月に始めるインバウンド向けの演劇で、観客のスマホに英語や中国語の字幕を表示するシステムを導入する。IT企業のエヴィクサー(同)が開発したシステムを採用する。観客にはあらかじめ専用アプリをダウンロードしてもらう。演劇の進行に連動し、0.1秒以内に字幕を表示する。

 アプリに写真撮影ボタンをつけたのも特徴だ。撮った写真は自分のスマホに保存できる。演劇などの公演では写真撮影を禁じるのが一般的だが、今回は交流サイト(SNS)上の宣伝効果を重視する。明治座の赤俊哉・IT戦略室長は「写真を撮ってフェイスブックなどでどんどん拡散させてもらいたい」と話す。

 公演時間も午後8時半から70分間と遅めの時間帯に設定した。夜間の外国人向けエンターテインメントが少ないとされる都内で、訪日客を取り込む。来年3月末まで100回程度公演する計画だ。

 スマートグラスに外国語字幕を表示するサービスを採用したのは、狂言の茂山千五郎家だ。5月に公演した「江東狂言の会」で外国人約10人を招いた。こちらもエヴィクサーの開発したシステムを導入したもので、観客の視野に外国語の字幕を流す。20年の東京五輪に向け、伝統芸能や演劇の世界でも外国人向けの新サービスが増えそうだ。

[日本経済新聞2016年6月23日付]

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