趙名誉名人「日本製AI、創造性ある」 囲碁電王戦
序盤はめちゃくちゃ強い、僕より強い――。日本の最多タイトル記録をもつ趙治勲名誉名人(60)は19日、国内のAI研究者らが開発した囲碁ソフト「DeepZenGo(ディープゼンゴ)」と対局し、勝利した直後に上気した表情で言い切った。今春、米グーグルの「アルファ碁」が韓国棋士を破ったが、日本製AIがハンディなしで、公の場でプロ棋士と戦ったのは初めて。惜敗したものの中盤までははっきりリードしており、AIが示した布石の創造性に驚きが広がった。
第2回囲碁電王戦三番勝負の第1局として東京都内で打たれた。ニギリで先番(黒番)に決まった趙名誉名人は対局前、やや緊張した面持ち。「目(もく)はずし」という前例の少ない初手を打ち、AIの意表を突く作戦に出た。Zen側は開発者代表の加藤英樹氏が相手の着手をコンピューターに入力。しばらくするとモニター画面に表示される着手を盤上に並べていった。
中盤にさしかかっての力勝負になると、次第にZenがリードし始める。趙名誉名人は「(形勢は)悪いと思っていなかったが、気づくと悪くなっていた。Zenは布石や大局観がとても優れている」。苦しげな表情を浮かべ始め、ぼやきも漏れるようになった。
終盤のヨセに入ったところでZenに失着が出る。加藤代表は「あまり見慣れない局面になったので、着手すべき優先順位を間違ったようだ。(このような負け方は)これまでなかったので分析したい」。プロ側の223手目をコンピューターに入力したところ、モニターに表示されるZenの勝率が低下。加藤氏の判断で投了を告げた。
趙名誉名人は国内七大タイトルすべてを経験する「グランドスラム」を史上初めて達成し、世界戦でも活躍した名棋士。対局後、「布石がうまいのは創造性があるということ。(囲碁AIは人間に)見えない世界が見えている。対局して楽しい」と話した。囲碁電王戦の第2局は20日、第3局は23日に予定されている。初戦はプロ棋士が勝利したものの、AIがどのような戦いを繰り広げるかが注目される。
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