ナチス・ドイツと〈帝国〉日本美術 安松みゆき著
雪村にひかれたヒトラー
日本美術のなかでは、江戸期の浮世絵や工芸品が、西洋人の興味をそそってきた。より古い仏像や水墨画などが、人気をあつめてきたとは言いがたい。
近世の版画などにかたよらず、日本美術の総体を西洋でも紹介したいものである。関係者たちは、日欧の別を問わずそうねがってきた。そして、その想(おも)いはようやく1939年になって実現する。ナチス体制が開催させたベルリン日本美術展で。
展覧会をおとずれたヒトラーは、雪村の「風濤図」にいたく心をゆさぶられたという。はたして、その真偽は。また、なぜ「風濤図」がうかびあがったのか。そもそも、ナチズムがバランスのとれた日本美術の紹介に貢献したことを、どう考えればいいのだろう。
★★★★
(風俗史家 井上章一)
[日本経済新聞夕刊2016年4月21日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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