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ニッキィの大疑問

マイナス金利、生活に影響? 減る利息、借りる人にはメリット

 

2016/4/11付 日本経済新聞 夕刊

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 マイナス金利政策というものが始まったそうね。金利がマイナスになると、わたしたちの生活にはどんな影響が出てくるのかな。

 マイナス金利をテーマに、舟山舞さん(38)と小沢麻里子さん(48)が清水功哉編集委員に話を聞いた。

 マイナス金利とは何ですか?

 「金利とはお金を借りるときのレンタル料のようなもので、普通はプラスです。それがゼロ未満になる異例の状態がマイナス金利です。例えば、年プラス1%の金利で10万円を借りれば1年後には元本の10万円に金利分(10万円の1%=1000円)をたした10万1000円を返す必要があります。一方、金利が年マイナス1%になると、1年後には元本から金利分の1000円を差し引いた9万9000円を返せばいいことになります」

 「日銀はこのマイナス金利を金融政策に採用しました。金融政策とは物価の安定を実現するための経済政策で、中央銀行(日本では日銀)が手掛けます。いまの日銀はデフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を早期に実現するため、金融機関が持っている国債などを買う見返りに、巨額のお金を供給しています。資金供給時には金融機関が日銀に持つ『日銀当座預金』にお金を振り込みます。その大半のお金にこれまで0.1%の金利を付けてきましたが、2月16日から新たに預ける分の一部金利をマイナス0.1%としました」

 「銀行は日銀当座預金にお金を預けたままでは0.1%分の金利をとられてしまいます。そこで、銀行同士がお金を融通し合うコール市場というところに、マイナス0.1%より少しでも有利な金利で放出しようとします。すると理屈のうえではコール市場の金利(無担保コール翌日物金利)もマイナス水準に下がります。銀行がお金を融通しあうコール市場の金利が下がると、それが様々な期間の金利に波及し、全体として金利が下がるのです。実際、長期金利の指標、新発10年物国債利回りもマイナスになりました」

 なぜマイナス金利政策を導入したのですか。

 「狙いの一つが円高防止でした。今年初めから、原油安や中国人民元の下落観測などを背景に世界的に金融市場が混乱しました。日本の円は『安全通貨』とみなされていて、市場が混乱すると買われる傾向があります。円高になると株価が下がり、景気も悪くなる。物価も下がる。そんな事態を心配した日銀は、円の金利をマイナス水準に下げて円の金利面の魅力を低下させ、円高を防ごうとしました。実際には米景気が減速しているとの見方からドル金利にも低下圧力がかかったことなどによって、円高を防げませんでしたが」

 「マイナス金利政策のもとでは銀行の様々な融資金利も下がります。さすがに貸出金利のマイナス化はないでしょうが、企業が投資を増やしたり、低金利の住宅ローンに借り換えて余裕ができた個人が消費を増やしたりする効果を日銀は期待しています。ただし、有望なビジネス機会が増えないと投資は拡大しないかもしれません」

 メリットを受けるのはどういう人ですか。

 「基本的にお金を借りるひとです。実際に個人向け住宅ローン金利が下がっています。主力商品の10年固定ローン金利が3メガ銀行で1%を割り込みました。住宅ローン減税(10年間、原則毎年末のローン残高の1%に相当する税金が戻る)を使い、10年間事実上マイナス金利でローンを借りられる人も増えそうです」

 預金金利もマイナスになりますか。

 「理屈上はともかく、実際にはならないと考えられています。銀行が社会的な批判を受けるからです。ただし、金利がかなり下がっているのは事実です。3メガ銀行の定期預金金利は1年物で0.01%まで下がりました。100万円預けても利息は年間たった100円。税金を引かれるとさらに減ります。自宅の『タンス預金』の方がいいと考える人もいますが、盗難や災害のリスクがある点には注意が必要です」

 「物価上昇による価値の目減りリスクも考えれば、少しでも有利な定期預金に預けるのが得策です。預入額などに条件が付くケースがありますが、ネット銀行や第二地銀などのネットバンキングには1年物の定期預金金利が0.2%程度の所もあります。そうした銀行を狙うのもいいでしょう」

■ちょっとウンチク
金融商品、手数料も考慮
 預金は銀行の代表的な金融商品だが、マイナス金利政策のもとで銀行は従来ほど預金集めに力を入れなくなる可能性がある。集まった預金を日銀当座預金に預けたり、企業や個人への貸し出しに振り向けたりしても、得られる金利収入が従来より少ないためメリットが小さいからだ。預金より投資信託や外貨預金、保険商品の販売で手数料を稼ぐことに熱心になっても不思議はない。利用者側でも円預金以外の商品に目を向ける人が増えそうだ。外貨預金の金利は低金利の円預金より高いことが多いし、外貨預金や投信はリスクはあるものの相場次第では値上がり益が期待できるからだ。
 以上の事情から、マイナス金利時代には様々な金融商品の購入時の手数料に従来より関心を持つべきだろう。投信の販売手数料は金融機関によって異なる例があるので比較した方がいい。外貨預金も為替手数料や金利を比べて選ぶべきだ。銀行が保険商品を売る際に生命保険会社から受け取る手数料も、今秋にも開示されると報じられた。
(編集委員 清水功哉)

■今回のニッキィ
舟山 舞さん 装置メーカー勤務。写真を使ったコーチング術「ポインツ・オブ・ユー」のトレーナー資格を持つ。「家での子どもとの会話にも役立っています」
小沢 麻里子さん 仕事は英語の通訳・翻訳。茶道、華道、ランニング、ダイビングと多彩な趣味を楽しむ。「地域ボランティア活動にも積極的に参加しています」

[日本経済新聞夕刊2016年4月11日付]

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