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脳など神経にしびれ、多発性硬化症 薬増え治療に戦略

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NIKKEI STYLE

 脳や脊髄の神経に炎症が起こる多発性硬化症は、手足のしびれやまひ、視力の急激な低下などをもたらす難病だ。発症すると再発と症状の治まる時期を繰り返すため、再発をいかに抑えるかが重要になる。最近は国内で使える薬の種類が増え、治療の戦略が立てられるようになってきた。

「1、2、3、チャラーン」。3月上旬に都内で開かれた多発性硬化症の患者向け勉強会に、同症で闘病中の落語家、林家こん平さんがゲストで参加した。次女の笠井咲さんとともに登壇し、車いすから立ち上がって定番のギャグを大声で披露すると、会場から大きな拍手が起こった。

◇     ◇

こん平さんが多発性硬化症を発症したのは2004年だ。持病の糖尿病が悪化するなどして一時は生死の境をさまよった。その後、リハビリなどを続けて、約10年ぶりにテレビに生出演した。最近は落語会にも参加し、あいさつしている。

多発性硬化症は脳や脊髄、視神経などに病巣ができる。手足の感覚が鈍くなる、視野が狭まる、脳の認知機能が低下する、などが主な症状だ。男女比は1対3程度で、30歳前後で発症する例が多い。欧米に多い病気だが、近年は国内でも患者が増えている。国内患者数は推計で約2万人だ。

この病気は病原体などから身を守る免疫が誤って自分自身を攻撃してしまう。電気信号を伝える神経には電線に相当する軸索と、それを包む絶縁膜である髄鞘(ずいしょう)があり、素早く正確に情報を伝える。免疫の作用で髄鞘が壊されると、情報がうまく伝達できなくなり発症する。完治は難しいが、親から子に病気が遺伝することはない。

症状の経過により、大きく3タイプがある。再発と症状の治まる時期を繰り返す「再発寛解型」が最も多い。はじめから体の機能障害が進行・悪化する「一次進行型」、再発と症状が治まる時期を繰り返しながら途中から徐々に機能障害が進む「二次進行型」もある。

再発を繰り返すうちに神経自体が傷み、症状も悪化する。順天堂大学の横山和正講師は「長くつきあっていかなければならない病気で、早期の治療開始と治療の継続が重要だ」と話す。

発症しても初めは本人が気づきにくく、眼科や整形外科などの受診をきっかけに見つかる例も多い。診断では眼球運動や磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査を組み合わせて慎重に判断する。かつて多発性硬化症と同じ病気とみなされていた視神経脊髄炎は、同じ治療法だと効果がなく悪化する例もあり注意が必要だ。

◇     ◇

多発性硬化症の治療は、急性期ではステロイド剤の点滴などで炎症を抑える。症状の治まっている時期の再発予防が大切になるという。患者数の多い欧米と比べて国内の再発予防薬の選択肢は少なかったが、近年は種類が増えてきた。15年にはコパキソンが国内でも承認され「やっと薬が出そろってきた」(横山講師)。

病態や妊娠の希望などに合わせた使い分けもできるようになってきた。たとえば、免疫システムの調整のために分泌されるインターフェロンβを注射で補う方法がある。安全性は高いが、定期的な注射は本人の負担が重い。うつ傾向を引き起こす副作用もある。医師の判断で、負担の少ない飲み薬フィンゴリモドを使う場合もある。再発しやすい人には効き目の強い注射薬ナタリズマブが使われる。

治療中の女性では妊娠をためらう人もいる。東京女子医科大学の清水優子准教授は「治療法の選択に気をつければ、安心して出産できる」と呼びかける。どの薬も妊娠が分かったら利用を控える必要があるが、妊娠中は体内の免疫の状態が変化し、再発しにくくなる。

ただ出産後は急激な体調変化や育児のストレスなどで再発のリスクが高まる。「再発しやすい人は出産後速やかに治療を再開するのが望ましい」(清水准教授)

症状を和らげるには再発予防の治療とともに、リハビリが有効だ。症状の出ていない時期に実施し、運動機能回復を目指す。体温が上がりすぎると症状が出やすくなるため、過度な負荷は避けるのがポイントだ。

多発性硬化症の症状は外見から分かりにくく「無理をして再発する人もいる」(清水准教授)。疲れやすくなる症状が「怠けている」と職場などで誤解を招く場合もある。周囲に病気を説明して理解を得る環境づくりも大切だ。

◇     ◇

医療費の助成 重傷者のみに変更 早期治療妨げる恐れ

多発性硬化症は国の医療費の助成対象となる指定難病の一つだ。2015年の制度変更で、指定難病の種類は従来の110疾患から306疾患へ大幅に広がった。従来は助成が受けられなかった難病の人が制度を使えるようになった。

半面、「多発性硬化症では、申請に必要な条件が今までより厳しくなり、早期治療の機会が狭まる事態になっている」と国立精神・神経医療研究センターの山村隆・免疫研究部長は訴える。

新制度では、多発性硬化症の障害の程度を10段階に分けて示す指標「EDSS」で、4.5以上の障害がないと申請が通らない。自力で休まずに歩ける距離が約300メートル以下の状態だ。

発症初期に再発予防の治療を始めれば、病気の進行を遅くできる可能性がある。しかし「発症が分かったのに申請が通らず、早期治療をあきらめた患者もいる」(山村部長)。別の制度を活用する方法もあるが、従来と比べ本人の負担額は増えてしまうという。

多発性硬化症は若くして発症する例が多い。早期治療に失敗すれば働き手を失うことになり、社会的な損失となる。制度の見直しを求める声が関係者から上がっている。

(出村政彬)

[日本経済新聞朝刊2016年4月3日付]

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