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脳卒中、がん…… 国民病からみる戦後社会

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 病は、時代と社会の相を映している。長らく日本人の代表的な「死病」だった結核や脳卒中が減り、1981年以降は、がんが死亡原因の1位に。高齢化に伴い認知症は増加の一途をたどり、感染症の脅威にも繰り返しさらされている。戦後70年を遡って「国民病」の変遷をたどると、病を生み出す背景と将来の課題が浮かび上がる。

脳卒中 治療法の進歩で減少

厚生労働省の人口動態調査によると、脳卒中は1951年から80年まで日本人の死因の第1位を占め、現在でも年間約11万4千人が亡くなる。寝たきりになる原因として最も多い。

脳の血管が詰まる脳梗塞のほか、血管が破れる脳出血、くも膜下出血の総称が脳卒中だ。戦後しばらくは脳出血が多く、51年の脳出血と脳梗塞との比率は28対1。脳出血は食塩や糖質の摂取が多すぎ、脂肪や動物性たんぱく質は少ないといった地域で多発していた。

山口武典・国立循環器病研究センター名誉総長(日本脳卒中協会理事長)は「私が医師になった60年頃は診断法も未発達で治療法は全くなかった」と振り返る。脳出血の最大のリスク要因は高血圧。その後の減塩指導や集団健診の普及、高血圧症治療薬の進歩などで70年代には死亡率が急減した。「塩分摂取量と死亡率の推移は見事に相関している」(山口名誉総長)

脳出血と脳梗塞の比率も70年代に逆転、現在では脳梗塞が脳卒中全体の4分の3を占める。脳梗塞のタイプも、高血圧に長期間さらされて細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」は減り、太い動脈が詰まったり狭くなったりする「アテローム血栓性梗塞」の割合が高まっている。山口氏は「食の欧米化で脂質異常症が増えたためで、心筋梗塞の増加と軌を一にする」と指摘する。

70年代にコンピューター断層撮影装置(CT)が登場し、脳出血はほぼ100%診断可能に。脳梗塞の診断も磁気共鳴画像装置(MRI)の発達で精度が高まった。脳梗塞では血栓溶解薬「t-PA」が2005年に認可され、発症から4.5時間以内に使えば血流を再開できるように。血管内治療で血栓を取り除く方法の研究も進む。

がん 患者主体、「付き合う病」に

1981年以降、死亡原因で1位のがんには現在も年間約98万人が罹患(りかん)し、約37万人が死亡する。人口10万人当たりの死者数も右肩上がりで増え、2014年は50年の約3.8倍。国民病の代表例だ。

国は07年、がんの罹患・死亡率の低下を目指してがん対策基本法を施行した。予防から治療に至るまで、総合的に充実させる施策を推進中だ。治療法でも手術支援ロボットや免疫療法など進歩はめざましい。今年1月には全ての患者の情報をまとめて集計、分析して対策に活用する「全国がん登録」も始まった。

胃がんによる死者は早期発見・治療が進んで大きく減少。大腸がんや肺がん、肝臓がんも集団健診の普及で90年代後半から少なくなっている。「50年前、がんの5年生存率はゼロに近かったが、今や全ての平均で50%以上。死に至る病から長く付き合う病に変わった」と小林博・北海道大学名誉教授(病理学)は語る。

がんや心疾患、脳卒中はかつて成人病と呼ばれたが、日々の生活が発症や進行にかかわることから96年に生活習慣病に改称された。脂質異常症や糖尿病などと関係が深く、これらは60年代から増え始めた。古閑美奈子・山梨学院大学健康栄養学部准教授(公衆栄養学)は「身体を動かすことが減り、食生活も欧米化傾向を強めたため」とみる。

栄養摂取量の変化が裏付ける。65年と2013年を比べると、1人1日当たりで動物性たんぱく質は25.9グラムから43.5グラムに、脂質は44.3グラムから77.1グラムに増加した(農水省の食料需給表)。

戦後、感染症から生活習慣病へと死因の中心が移り変わったことは「医療の提供者と受け手」という医師と患者関係にも変化をもたらした。日常的な予防などが重要な生活習慣病の治療は、患者自らが取り組む必要があるからだ。医師主導から患者主体の医療へ。「この流れはますます加速するだろう」。北大の小林名誉教授はこう話す。

感染症 国境越え脅威は続く

食糧事情や衛生環境が悪かった戦後間もなくは、感染症が最大の脅威だった。1947年の死亡原因の1位は結核。肺炎・気管支炎が2位、胃腸炎が3位と感染症が上位を占めた。

経済成長による栄養改善や治療薬の登場により、結核の死亡率は45年をピーク(人口10万人当たり280.3人)に急減し、70年は同15.4人に。結核予防法で医療費の公的負担を確立したり、集団健診やBCG予防接種を義務付けたりする国の対策も奏功した。

ただ「今も国際的には中程度のまん延国。保菌者の7割を占める60歳以上から若い世代にうつる恐れもある」と結核予防会結核研究所の森亨名誉所長は語る。

コレラやペスト、日本脳炎などの国内感染は60年代までにほぼ終息。世界保健機関(WHO)は80年に天然痘の根絶を宣言し、国連も「先進国では感染症は大きな問題でない」とした。

しかしこの頃から新たな感染症が現れ、克服したかにみえた感染症が再流行する異変が起きる。米国などでエイズが猛威を振るい、アフリカで発生したエボラ出血熱は2014~15年にも流行、緊張が高まった。

新型インフルエンザも世界的大流行(パンデミック)を繰り返している。東京医科大学の濱田篤郎教授(感染症学)は「人口急増で人跡未踏のジャングルまで開発が進み、新たな病原体に感染するようになった。人や物の頻繁な移動で病原体が短期間で世界に広がる中、今後も脅威は続くだろう」と話している。

公害病 高度成長優先で後手

高度成長期に入った1950~60年代、各地で工場のばい煙や汚水が深刻な健康被害を起こした。水俣病や新潟水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病を代表とする「公害病」だ。

熊本県水俣市で56年に公式確認された水俣病は「戦後の公害の原点」とされる。工場排水内のメチル水銀による神経系疾患で、公害健康被害補償法(公健法)に基づく認定者は熊本、鹿児島、新潟の3県で計約3千人に上る。今なお審査を待つ人も少なくない。

55年には富山県神通川流域に激痛を伴う奇病がみられると学会報告された。骨軟化症や腎障害が特徴で「痛い、痛い」と訴えることからイタイイタイ病と名付けられた。68年、政府は「上流の鉱山の排水に含まれるカドミウムによる慢性中毒」と発表。認定された公害病の第1号となった。

並行して3大都市圏で大気汚染の影響による健康被害も深刻化。三重県四日市市周辺では気管支ぜんそくや肺気腫などの患者が急増、「四日市ぜんそく」と呼ばれた。石油化学コンビナートから出る硫黄酸化物が原因だった。市は65年に公費で医療費を補償する初の制度を導入、国が69年に被害者救済の特別措置法を制定する流れを作った。

環境庁(現環境省)などで公害対策基本法や公健法の施行に携わったNPO法人「環境文明21」の加藤三郎共同代表(76)は「豊かさへの強烈な渇望が重化学工業を中心とした経済政策を優先させ、公害防止は後手に回った」と指摘する。

老年病 総合診療へ変革迫る

このままのペースでは高齢化がピークを迎える2025年には、700万人超が認知症になる――。厚生労働省はこうした推計を15年1月に発表した。12年時点の推計(約462万人)の約1.5倍に急増し、65歳以上の高齢者の5人の1人に当たる計算だ。

足腰が弱って歩行が困難になる運動器症候群(ロコモティブシンドローム)や肺炎、転倒・骨折など加齢に伴う傷病も増加している。骨粗しょう症や変形性膝関節症、変形性腰椎症について、いずれか1つ以上に当てはまる人は推計で4700万人に及ぶ。

「超高齢化の衝撃」は医療に変革を迫る。高齢患者は様々な疾患を抱えているケースが多く、従来の臓器・疾患別の診療体制では対応できないためだ。

1962年に国内外に先駆けて老年病学講座を立ち上げた東京大学。付属病院の秋下雅弘・老年病科科長(55)は「高齢者のための総合診療科として、全人的・包括的医療を目指している。処方される薬の種類が多く、調整や管理も欠かせない」と強調する。

かつて高齢患者は74歳以下が中心で、大半が日常生活を送る機能は維持していたという。最近は長寿化もあり、「機能が衰え、認知症を抱えた75歳以上が目立つ」(秋下科長)。同科の外来初診患者の6割は認知症で要介護の人も多い。

老年病科は東北大、名古屋大、大阪大など各地の大学病院も相次ぎ開設。専門診療科と連携して高齢者に多い傷病に対応している。

(編集委員 木村彰)

[日本経済新聞朝刊2016年1月17日付]

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