働き方・学び方

イチからわかる

人工知能で暮らし便利に?

2016/1/12 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 人工知能という言葉、知っているかしら? 最先端(さいせんたん)の技術の話なのだけれど、私たちの将来の生活を大きく変えるかもしれないの。
からすけ うん、聞いたことあるよ。でも、どんなものなのかイメージしにくいや。将来、鉄腕(てつわん)アトムやドラえもんが誕生するってことなの?

■運転や診断、人の代役担う

 イチ子 人工知能という言葉が生まれてから今年で60年目なの。1956年、米国での科学者の会合で使われたのが初めてよ。英語では「artificial intelligence」。「AI(エーアイ)」と略すの。

 からすけ そもそも人工知能って何? 人間とそっくりの機械のことかな。

 イチ子 はっきりした定義はないけれど、人間と同じように何かを推論したり学習したりといった知的な作業ができるコンピューターのことね。今の人工知能の研究は、人間が知能を使ってする仕事を機械にさせる取り組みが大半よ。アトムやドラえもんのように、人間と同じように感情を持つ機械をつくろうという研究は少ないみたい。

 からすけ 人工知能とロボットとはどう違(ちが)うの?

 イチ子 ロボットがいろいろな作業をするための装置や仕組み全体、いわばカラダだとすると、人工知能は体を動かすための脳みたいなものよ。ロボットは人工知能と切り離(はな)せないわ。ヒト型ロボットの「ペッパー」や掃除(そうじ)ロボットの「ルンバ」も人工知能を使って動くの。

■コンピューター進化が後押し

 からすけ なんで今、これだけ人工知能のニュースが増えているの?

 イチ子 半導体(キーワード)の性能向上などで情報の処理速度がどんどん速くなっているの。インターネットの発達で毎日やりとりされる情報の量も爆発的(ばくはつてき)に増えたわ。能力の上がったコンピューターが、膨大(ぼうだい)な情報を活用してすごいスピードで解析(かいせき)できるようになったのが大きいのよ。人工知能が新しい市場やサービスを生み出すと考えて、企業(きぎょう)や国が研究や開発に一斉に乗り出しているの。

<キーワード>
 半導体 電気を通す導体と通さない絶縁体(ぜつえんたい)との中間の性質を持つ物質。情報機器に不可欠な「産業のコメ」。
 シリコンバレー 米サンフランシスコ湾南岸周辺の通称。情報技術(IT)関連企業が多く集まる。

 からすけ 将棋(しょうぎ)で人間のプロに勝つくらい賢いんだってね。

 イチ子 そうね。2045年には人工知能が人間の能力を追い抜くと指摘(してき)する研究者もいるわ。英国の有名な宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士も、完全な人工知能ができれば人類の時代が終わると発言して注目されたわ。

 からすけ 今年はどんな話題があるの?

 イチ子 今月、トヨタ自動車が米国のシリコンバレー(キーワード)に人工知能の研究をする新会社をつくるわ。自動運転の車や高齢者を支援(しえん)するロボットなどを開発するそうよ。文部科学省も国内最大級の人工知能の研究拠点(きょてん)を設立するの。日本は米国などに比べて研究で出遅(でおく)れているから負けてはいられないの。

 からすけ 人工知能が発達すると何ができるの?

 イチ子 最近は一部の銀行が電話の応対業務を人工知能に任せ始めたわ。将来は窓口で接客をしたり、お客に合った商品の提案をしたりしそうよ。病院なら、生活習慣から病気の予防法を助言したり病名の診断(しんだん)をしたりするかも。米国の通信社ではスポーツや経済ニュースを書く人工知能が実際に使われ始めているのよ。人手不足の建設や介護の現場など、とにかく仕事や生活のあらゆる場面で活躍しそうね。

 からすけ 人間のやる仕事が減っちゃいそうだ。

 イチ子 野村総合研究所という会社と英国のオックスフォード大学の共同研究では、いま日本で働く人の49%が就いている職業は、10~20年内に人工知能が取って代わることができるとの結果も出ているわ。事務作業や単純作業を中心に、多くの仕事を人工知能が担う時代が来るのは間違いなさそうね。

 からすけ ボクが憧(あこが)れているパイロットの仕事もなくなっちゃう?

 イチ子 可能性はあるわね。ただ、人工知能が普及すればその作業を命令したり見守ったりする人間の役割も広がるわ。過去にはいろんな機械が発明されたけれど、新しい仕事もどんどん増えたでしょ。人工知能を暮らしを便利にするための手段と位置づけて、使い方をみんなで考えてみたらどうかしら。からすけも、まずは人工知能に負けないように勉強しないとね。

■安全確保は科学の責任

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 SF作家のアシモフは、ロボットについて「人間に危害を加えない」「人間の命令に従う」「自らの身を守る」との三原則を挙げました。これだとロボットは自ら考え判断してはならず、悪い命令にも従うことになります。一方でSF作品には、コンピューターが知能を持ち、人間を有害な存在と認識して人類を危機に陥(おとしい)れるものもあります。
 人工知能の研究は急速に進化しており、近い将来、自ら判断能力を持つかもしれません。そのとき、人間のように感情を持ったり葛藤(かっとう)したりするのでしょうか。SF作品が描いたように、人間を排除(はいじょ)する意図を持つかもしれません。人工知能の性能の安全性を確保するのは自然科学の責任であり、使用の規範(きはん)をつくり制御(せいぎょ)するのは社会科学や人文科学の役割ではないでしょうか。

今週のニュースなテストの答え 問1=ドイツ、問2=青森

[日経プラスワン2016年1月9日付]

働き方・学び方