仕事に効く身だしなみ・男性編 爪磨き、髪整えて
信頼感、プレゼンは赤ネクタイ 謝罪では無地か小さな柄
地域で保険商品を販売する田村慎吾さん(仮名)は、商品知識が豊富で話術にもたけている。しかし、営業成績が伸び悩んでいた。なぜだろうか。
日本サービスマナー協会の講師、三上ナナエさんによると、田村さんは髪形に問題があったという。「髪が少しツンツンはねた、今どきのヘアスタイルで、地域での営業では信頼感に欠ける。『整髪剤を携帯し、髪がはねないように整えて』とアドバイスした」(三上さん)
田村さんは、指摘を受けて髪を整髪剤で整えるようにしたところ、翌月から営業成績が1.5倍に伸びたという。職種や業種のイメージに合わせて身なりを整えることで信頼感を生み、仕事で成果を上げた一例だ。
カフリンクス着ける
身だしなみでは、「人は端っこに目が行くから、指や爪にも気を配ることが大事」と三上さんは指摘する。男性でも、汗を拭いたり商品説明をする場面などで、指や爪も意外と見られている。爪は短く切って整えるのが基本。爪磨きなどでツヤを出す人も増えているという。
スーツで出勤するビジネスマンは、ネクタイの色柄に気を配りたい。例えば、急に取引先などに謝罪に行く場合。「キャラクター柄のネクタイのまま行ったら、『ふざけているのか』と怒られた人もいる。謝罪に行くときは無地か小さな柄のネクタイをつけるのが原則。いざというときに備えて無地のネクタイを会社に常備すると安心」と三上さん。逆にプレゼンテーションのときはエネルギッシュな赤いネクタイを締めると、モチベーションも上がる。
地味でオーソドックなスーツでも、相手に存在感を印象づけることはできる。ファッションプロデューサーのしぎはらひろ子さんは、カフリンクスやジャケットのフラワーホールにアイコンとなるモチーフを着けることを薦める。
「グローバルな仕事をしている人に地球儀のピンブローチ、亀田さんという方には亀のカフリンクスを薦めたことがある」としぎはらさん。「名前や仕事を印象付けたり、会話の糸口ができて話が弾んで関係性が築けたりして、ビジネスがうまく回ったケースは多い」と話す。
「部下が昇進するタイミングで身だしなみの話をすることが多い」と言うのは、野村総合研究所の人事部長、大元成和さん。役員と同席する場合にスリーピースを着たり、改まった席やパーティーにも対応できるようにポケットチーフを用意したりするなど身だしなみに気を使うことで「責任をもって仕事に臨む意気込みだな」と周囲に思わせる効果があるからだという。
中堅社員になったときや、女性が多い職場では、周囲への気配りを服装で表現することも必要だ。日本服装心理学協会代表理事でパーソナルスタイリストの久野梨沙さんは「女性が多いコールセンターや女性向け商品の開発部署に異動になった男性から、『女性が話しかけやすいイメージにしたい』と相談を受ける」と言う。
服はサイズに注意
話しかけやすいイメージを醸し出すには、ワイシャツなどにパステルカラーやアースカラーなどの優しい色をとり入れるのが第一歩。さらに「柔らかい生地のスーツを選んだり、ジャケットとパンツを別のものにしたりして、少しカジュアルに見せてもいい」と久野さん。
ただ、カジュアル感を出す場合も、サイズには注意したい。カジュアルなイメージの服でも、肩幅や体形に合った物を選べば、きちんとした印象になり、オフィスでも周囲から浮くことがない。
服装に気を使う人が仕事ができる人とは限らない。しかし、大元さんは「身なりがきちんとしている人は全体的に余裕があり、やっつけ仕事や遅刻をしないことが多い。ムダや無理を減らしてスマートに仕事を片付けようという意識がある」とみる。
仕事のスキルを高めるのも重要だが、服装や身だしなみにも気を配ってイメージアップを図り、仕事の評価や実績アップを目指そう。
(ライター 加納 美紀)
[日本経済新聞夕刊2015年11月16日付]
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