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歯周病治せば肝炎・糖尿病も改善 全身疾患と関連 解明進む

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NIKKEI STYLE

 歯がグラグラして最終的には抜けてしまう歯周病は、成人の多くが患っている炎症性の病気だ。虫歯と並ぶ歯科の二大疾患だが、影響は口腔(こうくう)内にとどまらない。これまでの研究から、肝臓病や心臓病、糖尿病など全身の疾患とも密接に関係していることが分かってきた。歯周病を治療すれば、こうした全身疾患の症状改善にもつながる。

歯周病は歯と歯茎の間に細菌の塊である歯垢(しこう)や歯石がたまり、細菌感染を引き起こす。この結果、歯の周りに炎症が起こる。初期は歯茎が腫れる歯肉炎、進行すると歯を支える骨が破壊される歯周炎と呼ばれる。軽い症状まで含めると日本人の成人の約8割が歯周病にかかっている。自覚症状がないまま進行し、放置すると歯が抜け落ちてしまう。さらにその影響は全身に及ぶ。

◇            ◇

神奈川県在住の女性のAさん(46)は肥満などが原因で発症する「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」を患っていた。肝機能に障害も出て横浜市立大学付属病院(横浜市)を受診し、食事制限とともに積極的に体を動かす食事運動療法に半年間取り組んだ。薬物治療も受けたものの、「ALT」という肝機能を示す数値は異常値のままだった。

Aさんは歯茎に出血もみられたため、神奈川歯科大学付属横浜クリニック(横浜市)で歯周病の治療をすることにした。口の中の状態が改善すると、ALTの値がほぼ正常値まで下がった。横浜市立大病院消化器内科と横浜クリニックで診療にあたる結束貴臣医師は「歯周病菌が血液中にしみ出して全身を巡り、肝臓に届いて炎症を起こしている。歯周病の改善でこうした症状が抑えられたのだろう」と指摘する。

肝炎と飲酒は関係が深いが、NASHはアルコールをたしなまない人でも肝臓に脂肪が蓄積する。これまでも「食事療法や薬物投与によっても症状が改善しない患者が一部いる」(結束医師)ことが知られていた。こうした患者に歯周病治療を施せば、NASHの症状改善につながる可能性があるという。

このため、年内にも横浜市立大病院と神奈川歯科大付属病院(横須賀市)、横浜クリニックで医師主導の臨床試験(治験)を始める予定だ。20歳以上でNASHと歯周病を患い、食事運動療法と薬物が効かない200人が対象になる。

歯科医が歯磨きの方法を指導したり、歯に付いた歯石を取り除いたりする。歯周病の症状が進んだ人では、歯茎を局所麻酔して、歯根と呼ばれる歯茎で隠れた部分に付着した歯周病菌を除去する。こうした治療によって肝機能が改善するか詳しく調べる。

歯周病と関連があるとされる病気はほかにもある。よく知られているのが糖尿病だ。この病気は血糖を下げるホルモンのインスリンがうまく働かなくなったり足りなくなったりする。東京都健康長寿医療センター研究所の平野浩彦専門副部長(歯科医師)は「糖尿病の人は歯周病にかかりやすく、歯周病の人は糖尿病が重症化しやすい。相互に関係している」と指摘する。

米国の研究によると、生活習慣などから発症する2型糖尿病の患者は糖尿病ではない人に比べ、歯周病が重症化するリスクが1.5~3倍程度高かった。糖尿病患者は病原体などから身を守る免疫の働きが低下しており、炎症による組織の破壊が進みやすいことなどがその理由とされている。

また、歯周病菌から出される毒素が血管内に入ると、炎症性物質がつくられ、インスリンができにくくなり、血糖値が上がることも分かっているという。「薬や食事のコントロールをしても血糖値が下がらない患者が、歯医者に行くと症状が改善することもある」(平野専門副部長)。歯周病の治療によって、インスリンの作用を阻害する炎症性物質の血中濃度が減少するためだと考えられている。

◇            ◇

歯周病は中年以降に多い病気だと思われがちだが、若い世代でも発症するタイプもある。「侵襲性歯周炎」と呼ばれている。細菌感染で起こるのは通常と変わらないが、家族内で発症するなどの特徴から「遺伝が関係している」と神奈川歯科大学の鎌田要平助教は説明する。

侵襲性歯周炎の人は20~30代で歯を支える骨の状態が通常の人より大きく悪化しており、歯が抜けやすくなっている。妊娠・出産をする女性が歯周病だと「早産や低体重児出産のリスクが高まる」(横浜市立大の結束医師)。妊娠前に歯科医院を訪れて口の中をチェックすることが大切だと専門家は注意喚起している。

明確な関係性の解明はこれからだが、高齢女性に多い骨粗しょう症患者も歯周病に気をつけた方がよさそうだ。骨粗しょう症では破骨細胞による骨の破壊が骨の再生能力を上回ることで、骨がもろくなってしまう。「歯周病患者は歯周病菌の影響で骨を支える部分の破骨細胞が活発になっている」と松本歯科大学の宇田川信之教授は話す。歯周病にも気をつけることが、骨折などを防ぐのに役立ちそうだ。

歯周病は、心筋梗塞などにつながる動脈硬化、慢性腎臓病、誤嚥(ごえん)性肺炎などとの関連も指摘されている。口の病気だと甘く見ずに、しっかり治療することが他の病気を防ぐことにつながる。

◇            ◇

「一生つきあう病気」 口腔ケア大事

歯を十分に磨けていないと歯と歯茎の間に歯垢がたまってしまう。その結果、歯と歯茎の間の溝である「歯周ポケット」が深くなって、さらに歯垢がたまり、炎症が拡大する。最終的には歯を支える土台である歯槽骨が破壊され、歯が抜け落ちる事態を招く。

歯周病になる歯が1本ということはない。このため「歯周病で炎症を起こした部分の面積を足し合わせると、手のひらほどの大きさになる」と東京都健康長寿医療センター研究所の平野浩彦専門副部長は話す。もし、やけどがこれほどの大きさだったら放置しないだろうが、歯科医院に行かない人も一定数いるのが現状だ。

歯周病は歯が残っている人に起こるから自分の歯がない人は関係ないと思うかもしれない。しかし、近年普及している人工歯根(インプラント)を埋め込む治療でも「インプラント周囲炎」という症状が出ることがある。これは歯周病と同じく歯垢や歯石などが原因で起こる細菌感染による炎症だ。「歯周病は一生つきあう病気と考えるべきだ」と専門家は口をそろえる。

(新井重徳)

[日本経済新聞朝刊2015年11月15日付]

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