くらし&ハウス

暮らしの知恵

夫婦で家買うならローンに注意 まず頭金、減収も考慮

 

2015/11/7 日本経済新聞 夕刊

 共働き夫婦が協力してマイホームを購入するケースが増えている。1人の場合よりも住宅ローンの借入額が増やしやすいため、「理想の我が家」を手に入れる早道と考える夫婦も多い。だが、共働きゆえの様々な注意点も存在する。住宅購入前に知っておきたい基本ポイントをまとめた。

夫婦で購入した世田谷の一戸建て(内観)

 東京都世田谷区で3LDKの一戸建て住宅に夫と一人息子と暮らす看護師のAさん(40)。4000万円超の住宅購入費は会社員の夫と2人で組んだローンでまかなった。購入前、夫が転職したばかりだったこともあり、1人ではローンが希望額に届かなかったためだ。Aさんは「ローンの負担は軽くはないけど、勤務先にも、実家にも近い場所に家が持てて満足」と話す。

 Aさんのように経済力の高い、働く妻が増えたことで、夫婦で協力しての住宅購入は増加傾向にある。2人分の収入を背景に、高額住宅に手が届いたり、ローン負担感が軽減できたりすることが魅力だ。ただ、そうしたメリットの裏には色々と注意すべきことが潜んでいる。

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 まず購入時期だ。ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんは「新婚ですぐ住宅購入する共働き夫婦は多いが、これは避けた方がいい」と助言する。最近は、結婚を機にどちらか一方がすぐ仕事を辞める夫婦は必ずしも多くない。2人分の収入があり、家計に余裕があるので「賃料を払うくらいなら、ローンを組んでマイホームを早く買おう」というわけだ。

 しかし、まだ子どものいない新婚夫婦の場合、住宅購入後に産休、育休などで妻の収入が減ることが多く、場合によっては働き続けられないこともある。そうなると、当初は2人で無理なく返せると思っていたローンが突然、家計に大きな負担となってのしかかってくる危険がある。

2人でローンを組み、立地などの希望をかなえた(外観)

 新婚期は貯蓄を優先し、十分な住宅購入の頭金をつくっておく方が安心だ。「上の子どもが小学校入学する直前あたりの時期が妻の収入も安定し、住宅購入にベストなタイミング」(深田さん)になることが多い。晩婚で年齢が高めの夫婦は多少異なる場合もあるが、結婚後すぐではなく、ある程度の期間は計画的に頭金をためておくという基本的な考え方は同じだという。

 さて、いざ購入となったときは多くの世帯は住宅ローンを使うことになる。ここで、気をつけたいのは借入額の設定だ。通常、1人より2人の方が借りられる額は大きくなるが、過度に多いローンを抱えるとリスクも大きくなる。購入時期を調整したうえで減収リスクも考慮し、借入総額はできるだけ抑える。夫婦それぞれの負担率も工夫しておくといい。

 現在、夫婦用の住宅ローンは夫と妻が1本ずつローンを借りる「ペアローン」が主流で、夫婦の各1本のローンは借入額、金利タイプ、返済期間は個別に設定できる。現在の夫婦収入がほぼ同じでも将来、減収の可能性がある方の借入額は少なくし、返済期間も短くするといい。もし実際に収入が減った時にも返済が行き詰まるような事態を避けやすいし、早めに1本のローンを完済しておけば将来、子どもの教育費などが膨らんだ時にも家計の収支計画を立てるのが容易になるからだ。

 もう1つ、見落としがちなのが返済中に夫婦いずれかが亡くなるリスクだ。ペアローンの場合、夫婦はそれぞれ団体信用生命保険に加入するのが普通。ただ、夫婦のどちらかが死亡したときに保険でゼロになるのは亡くなった人のローンだけ。もう1人のローンは残る。深田さんは「夫婦でローンを組んだら、2人の生命保険の死亡保障額も見直すのが原則だ」と話す。

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 最近は夫婦2人で住宅ローンを使うことを想定したサービスや商品も多くなった。みずほ銀行の「ライフステージ応援プラン」は妻の産休による収入減、子どもの独立による支出減など共働き世帯の家計変化に応じて一定期間の返済額増減に応じるサービスだ(減額は条件あり)。三井住友銀行には上乗せ金利を払うことで、夫婦のどちらか一方が死亡した時は夫婦全体のローンをゼロにする新型保険付き住宅ローン「クロスサポート」を今年、始めている。

 住宅は人生最大の買い物といわれる。互いに忙しい共働き夫婦だからこそ購入前の話し合いが大切だと覚えておきたい。

■持ち分と負担割合同率で
 夫婦で買った住宅の名義は共有にして、持ち分は夫婦2人の購入資金の負担割合と同率にする。異なる率にすると夫婦間の贈与として課税されかねないからだ。税理士の市川恭子さんは「税務署は非常に細かく見ている」と注意を促す。

(マネー報道部 堀大介)

[日本経済新聞夕刊2015年11月4日付]

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