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早食いは過食しがち 良くかめばエネルギーも消費

2015/10/8 日本経済新聞 プラスワン

 あなたは食べるのが早い方だろうか、遅い方だろうか。早食いの人は太りやすいといわれるが、最近の研究でそのメカニズムが分かってきた。早食いを改め、よくかんでゆっくり食べるようにすると、太り過ぎも予防できるようだ。秋の味覚についつい食が進む季節。食べ方を見直してみてはどうだろう。

 子供のころ、「よくかんで食べなさい」と言われた人は多いだろう。だが、大人になって時間に追われる生活で早食いが習慣になった人も少なくないのではないか。

 早食いの難点は、よくかまずにのみ込むので胃腸に負担がかかること、脳が満腹感を覚える前にたくさん食べてしまうので、過食になりやすい点などが挙げられる。

 東京工業大学社会理工学研究科の林直亨教授は、「早食いの人は太りやすいと多くの研究で報告されている」と話す。林教授らが女子大学生84人におにぎりを食べてもらい調べた研究でも、かむ回数が少ない早食いの人ほど体重や体脂肪率が高くなる傾向があった。

■肥満4倍多く

 さらに岡山大学が大学生1314人を3年間追跡調査したところ、早食いの人はそうでない人より4.4倍肥満になりやすかった。早食いの習慣は、他の「油っこい食事を好む」「満腹まで食べる」といった習慣よりも肥満になるリスクをあげていた。

 早食いの人が肥満になりやすい原因は過食だけではないらしい。林教授らの研究では、食事量は同じでも、早食いの場合は、食べ物の消化や吸収などに費やされるエネルギー「食事誘発性体熱産生(DIT)」が低く抑えられることが分かった。

 1日の総エネルギー消費量の内訳は、呼吸や体温などの生命維持に必要な基礎代謝量が約60%、運動などの身体活動量が30%、そしてDITが10%を占めている。食べることはエネルギーを摂取することであると同時に、エネルギーを使う行為でもある。

 実験では10人を対象に、試験食をできるだけ早く食べる場合と食塊がなくなるまでかんでから飲み込む場合とでDIT量を比較した。その結果、食後90分間のDIT量の平均値は、早く食べるよりゆっくり食べた方が明らかに多かった。

■脂肪1.5キロ増

 「体重60キログラムの人が1日3食よくかんで食べると、食後にDITとして生じるエネルギー消費量は早食いの場合よりも年間で約1万1000キロカロリー多い。体脂肪に換算すると1.5キログラムほどに相当する」(林教授)。逆に、早食いの人はほかの条件が変わらなければ計算上、1.5キログラムの脂肪がつくことになる。

 よくかんでゆっくり食べると胃や腸の血流量が増えるが、早食いではそれが少ないという。林教授は「この差がDITに反映されているのかもしれない」と話す。

 早食いは糖尿病とも密接な関係がある。金沢医科大学公衆衛生学の桜井勝准教授らは、ある企業の従業員2050人(35~55歳)の健康診断結果を7年間追跡調査した。食べるのが早い人は遅い人に比べ、糖尿病の発症が約2倍多かった。

 「早く食べると血糖値が急上昇する。それを抑えようと膵臓(すいぞう)から大量のインスリンが分泌される。この状態が長期間続くと膵臓自体が疲れてしまい、糖尿病になりやすくなるのではないか」(桜井准教授)。また、早食いは肥満を招くので、肥満が糖尿病発症の危険性を高めるとも考えられる。

 早食いを改めるにはどうしたらいいのか。まずはよくかむことだ。一口に30回を目標にといわれるが、これが意外に難しい。林教授は「私自身、早食いの癖をなかなか直せなかったが、『よく味わおう』と発想を変えたら、自然とよくかむようになった。今は以前よりも素材の味がわかるようになった」と話す。

 また一口の量を減らすのも効果的だ。「スプーンより箸の方が一口量が少なくてすむ」(桜井准教授)。根菜類など食物繊維の多い歯ごたえのある食べ物を食卓に取り入れると、かむ回数も増える。「肉や魚を骨付きのものにすると食べる速度が落ちるほか、汁物も飲むときに茶わんを置くので、間を作ることができる。ただし、汁物でご飯を流し込むような食べ方はダメ」と桜井准教授。

 かんでいる間は、いったん箸を置くのもよい。一人で食べるより、家族や友人と会話を楽しみながら食事をとることも大切だ。食べ方を変えるだけで、肥満や糖尿病予防につながる。

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■食後にガムをかめばやせる?

 食後のガムもエネルギー消費量を増やす一助になりそうだ。「ガムの大きさやかむ回数にもよるが、1分間かむと約1キロカロリーを消費する。実験では15分ほどでDITが増えることが確かめられた」(林教授)。砂糖不使用で虫歯予防効果のあるガムなら一石二鳥だ。

 ただし、ガムをかんでも早食いのデメリットを帳消しにするほどのDIT増加効果は期待できない。「DITは単にかむ回数を増やせば増えるわけではなく、食べてのみ込むことに大きな意味があるようだ」と林教授。食事はゆっくりよくかんで食べ、そして食後にガムもプラス。これがDIT増加の得策といえそうだ。

(ライター 佐田 節子)

[日経プラスワン2015年10月3日付]

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