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子どもの学び

月の裏側がいつも見えないのはなぜ?

 

2015/9/29 日本経済新聞 プラスワン

■月の裏側がいつも見えないのはどうして?

スーちゃん 27日は中秋の名月だね。近くの天文台で、大きな望遠鏡で観察。月のもようは「うさぎのもちつき」っていうけど、いつも同じなのはどうしてかな。


■月の自転と公転周期が同じだからだよ

森羅万象博士より 満月のときにウサギの耳の位置を覚えておいて、半月や三日月のときに探してみよう。もようは一部が欠けてしまうけど、耳はいつも同じ位置にあるとわかるよ。

 つまり、月は地球からながめたときにいつも同じ面を向けているんだ。だから、月の裏側は地球からは見ることができない。地球から見えるのは月の表面の6割くらいだといわれているよ。旧ソ連の月探査機ルナ3号が1959年に月の裏側にまわって写真をとるまで、月の裏側の様子はわからなかったんだ。

 月がいつも表側を地球に向けているのは、月が地球を一周する間に、月も1回転しているからだよ。月はほぼ27.3日かけて地球を一周する。これが公転周期。月が回る自転の周期も約27.3日で、ぴったり合っているんだ。

 なんで自転と公転の周期が同じになるのかな。月は重さの中心となる「重心」が球体の中心からずれていて、地球に近い側に寄っているからなんだ。月の表側には鉄など重い物質が多く存在し、裏側はカルシウムなど軽い物質でできている。月はちょっとだけ重い表側を引力が強い方向に向けたまま安定したと考えられているんだ。

 伝統工芸品の起き上がりこぼしと似ているよ。これは倒しても自然に起き上がってくる。みんな赤ちゃんだったころに遊んだと思う。起き上がりこぼしも重心が形の中心よりも下にある。重いお尻の部分を下側、すなわち地球の方に向けたときに安定する。それで、どんなに倒しても起き上がるんだ。

 地球と月の間に働く引力には、月の自転周期をいつも同じように保つ役目もある。月の表側は強い地球の引力に引っぱられる。これとは別に、月が公転する速さはジェット機の3倍くらいあるから、月の裏側には遠心力が働く。この2つの力によって、月はわずかに細長く伸びている。

 たとえば、月の自転が速くなって、長くなっている方向が地球の中心からずれると、地球の引力が引き戻すように働いて自転のスピードがおそくなる。反対に自転がおそくなったら、早めるように働く。こうして月の自転周期が調節されて、公転周期と同じになってくるんだ。

 太陽系には、公転と自転の周期がぴったり合う衛星(えいせい)がけっこうあるよ。木星ではガニメデやイオ、エウロパ、カリスト、土星のタイタンなどがあてはまる。ふつうの天体望遠鏡でも見える大きな衛星ばかりではなく、小さくていびつな形をした火星のフォボスとダイモスも公転と自転の周期が同じだ。

 月は表側と裏側で様子がまったくちがう。表側で地球から見ると暗く見えるのは海と呼ばれる地形で、こい色の岩石でおおわれた平原だ。白っぽくてクレーターがたくさんある地形は高地と呼ばれる。表側は海が表面の約30%あるけど、裏側には2%ほどしかないから、明暗がほとんどない。もし裏側が地球を向いていたら「月のうさぎ」は生まれなかったかもしれないね。

■直径は地球の4分の1

博士からひとこと 月は衛星(えいせい)としては非常に大きくて、直径は地球の4分の1もある。かつて9番目の惑星(わくせい)だった冥王星(めいおうせい)よりも大きいんだ。太陽系で最も大きい衛星のガニメデは木星の直径の約27分の1、2番目のタイタンは土星の約23分の1しかない。
 月は地球に火星ほどの星がぶつかり、宇宙にちらばった岩石が集まってできたと考えられている。他の衛星は小さな天体が惑星の引力につかまったものが多い。月が衛星としては飛びぬけて大きいのは、その成り立ちと関係しているといわれているよ。月の石やこれまでの探査機(たんさき)の研究から最も有力な説だと考えられている。

(取材協力 縣(あがた)秀彦・国立天文台准教授)

[日経プラスワン2015年9月26日付]

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