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 ビジネスの世界でよく使われる用語「ホウレンソウ」。報告、連絡、相談の頭文字をつなげた造語で、仕事を円滑に進めるために欠かせない要素とされる。だが、入社間もない若手ビジネスパーソンには、どのタイミングで上司や先輩に相談や報告に行けばいいか戸惑うことも多いのではないか。ホウレンソウの基本を押さえ、夏休み明けに本格的に仕事を任されても大丈夫なよう、準備をしておこう。

化学メーカーに勤めるAさん(43)は若手の頃の失敗をよく覚えている。人事部門に配属されて間もなく、先輩から「最近の我が社の人員採用実績をまとめてくれ」と言われた。採用人数なら手元の資料をみればすぐに分かると思い別の仕事をしていたら、1時間後に先輩から「資料はできたか」と聞かれたのだ。

順番は相→連→報

数時間後に部内で開くミーティングに出す資料で、先輩は、Aさんなら1時間もあればできるだろうと思って当てたのだ。急いで資料を作って手渡したAさんだったが、終了後に上司らから「『工夫が足りない。経済界全体の採用動向や景気動向など、背景となる数字も加えてほしかった』と言われてしまった」。

Aさんの場合は「依頼されたときに、いつ使う資料なのか、何年分の実績があればいいのか、業界や社会全体の動向も必要なのかといったことを先輩に聞くべきだった」。リクルートワークス研究所(東京・千代田)のWorks編集長で、人材マネジメントを研究している石原直子さんは指摘する。

「調べ始めたらキリがなくなってしまうこともある。どの程度の内容を求めているのか聞いてみれば、先輩も教えてくれたはず」と石原さんはいう。Aさんがホウレンソウを怠らなければ、必要かつ十分な資料作成が可能だったかもしれない。

企業の人事研修などを手掛けるハイブリッドコンサルティング(東京・港)の吉山勇樹代表によると、「ホウレンソウで最も重要なのは相談」という。「ソウ→レン→ホウの順で進めると仕事の効率がアップする」と話す。

若い人の中には「この程度のことを先輩や上司に尋ねたら、自分の評価が下がってしまうのではないか」と考え、相談をためらっている場合も多いといわれる。吉山さんは「期限間際になって、上司や先輩が考えていたものと全然違う資料を作って持ってこられても困る。仕事を進める上では上司と方向を一致させておくことが大切で、早めに相談するのがいい」と助言する。

仕事が2割進んだと思ったら、上司に相談して方針がずれていないか確かめよう

仕事が2割進んだと思ったら、上司に相談して方針がずれていないか確かめよう

吉山さんは相談するタイミングの目安として「2割進んだと思ったら、相談に行く」ことを勧める。石原さんも「自分で袋小路に入っていかないこと。わからないなら、そう言った方がよい。それこそがスマートに働くということ」という。

上司らに相談するときは、自分はこのようにしたいと方向を示すようにする。それを聞けば上司らも「そのまま進めてよい」とか、違う場合には「そうではなくて、こういった要素を入れなさい」などと指示がしやすくなる。

まず相談から始めて、進捗状況を連絡、報告する。2割の次は、5割前後進んだところで相談や報告に行く。そうすれば「この項目をもっと詳しくとか、この部分はいらないよ」などとアドバイスをもらえる。最後は8割前後の段階で報告すれば、上司らの意図とずれることなく仕事を進めていける。

難易度で分類

ただ、来た仕事を無計画にこなしているだけでは、ホウレンソウを心がけようにもなかなか難しい。そこで、いま自分が抱えている仕事を把握しておくことが大事になる。

吉山さんが若手の頃に心がけていたのは「抱えている仕事を難易度によって分けること」だったという。1週間以内でやる仕事か、それ以上かかる仕事かに分け、「できるものから相談して進めていくようにした」。

ホウレンソウをする相手は社内の人であることが多いが、「社外の人と交渉する際にも役立ってくる」と石原さんは指摘する。例えば営業マンであれば、取引先に「資料にどのような要素があれば、お話を聞いてもらえますか」と相談して、それに沿った資料を持参していけば、交渉もスムーズに運ぶだろう。

ホウレンソウを心がけると上司や先輩、後輩などと意思疎通が良くなる。新たなアイデアが浮かんだり、ミスやトラブルを未然に防げたりするので、仕事のモチベーションを上げることにもつながりそうだ。

[日本経済新聞夕刊2015年8月10日付]

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