水引アレンジで心のこもった祝儀袋
オリジナル 特別感演出
「外れないように指で押さえて、ギュッと巻いてくださいね」。講師の説明に、色とりどりの水引を手にした女性たちが真剣な面持ちで手元に見入る。5月中旬、カルチャーセンター産経学園(東京・目黒)で水引アレンジの教室が開かれた。
作ったのは赤や黄の外包みに、白や金、ピンクなどの水引を組み合わせたカラフルな祝儀袋。包み紙を折り、ちょうちょの形をした水引飾りとのし付けを、2時間ほどかけて作る。参加は3回目という会社員の毛利京子さんは「ちょうちょの飾りは、祝儀袋以外にもちょっとした贈り物のラッピングに使えそう」と仕上がりに満足げ。
講師は水引を使った商品のブランド「OTUTUMI(おつつみ)」のデザイナー、村田繭衣さん(31)。本来、婚礼祝いに何度も結び直せるちょう結びは使わない。村田さんは伝統的な結び方「茗荷(みょうが)結び」をアレンジして、「ほどけないちょうちょ結び」を考え出した。
大学で工芸を学んだ村田さんは「水引飾りの日本的な造形美に引かれる」と魅力を話す。5年ほど前に「贈る相手や好みによって色や形を選べたら楽しそう」という思いでアレンジを始め、伝統を踏まえた現代的な結び方で祝儀袋の飾りやイヤリングやブローチなどのアクセサリーも提案する。
結び方の基本となる、3つの輪で作るシンプルなあわじ結びも、色の選び方や並び順次第で印象を変えられるという。あわじ結びは輪を1つ増やせば菜の花結びに、2つ増やせば梅結びにというふうに花の形に応用できる。金具を付けてイヤリングやブローチにしても華やかだ。
水引は紙芯に着色したり、フィルムや飾糸を巻いたりして加工されたもの。うまく扱うコツは「最初、2、3度しごいて自然な丸みをつけること」(村田さん)。片手で持った水引の端からもう一方の手の親指の腹でしごく。特にコーティングされたものは念入りにしごくと扱いやすくなる。
きれいに結ぶには、最後まで初めに並べた1本1本の順を崩さないこと。ねじる時は端をそろえて色の並び順を確認するとよい。最初はすべて色の違う2~3本で練習するとわかりやすい。
相手に合わせ使い分け
本来、慶事や弔事に使う水引は形や色などに決まりがある。「同世代の親しい友人には自由なアレンジでもよいが、目上の人に贈る場合や格式ある場では伝統の作法を踏まえてほしい」と話すのは「清紫会」新・作法学院(東京・千代田)学院長の近藤珠実さん。
結び方は大きく2つ。婚礼、仏事など「一度きり」であってほしいことは結び切りやあわじ結びなど。出産や昇進祝いなど「何度あってもいい」祝い事全般はちょう結びが一般的だ。色は慶事は紅白や金銀、弔事は黒白や黄白の組み合わせで、右側に濃い色を置くのが基本。アレンジの際は、祝い事では黒やグレーなどの暗い色は避けたい。白い紙の外包みにも「相手のために用意した新品だという意味がある」(近藤さん)
本数は原則として5、7、9の奇数で、数が多いほど格上になる。婚礼祝いには基本の5本を二重にした10本が正式。とはいえ、単に豪華にすればよいのではなく、包む額に見合った飾りを付けるのが祝儀袋のマナーだ。近藤さんは「5千円以下なら水引柄が印刷された袋、5万円以上なら金銀の豪華な水引飾りと高級和紙の外包みがふさわしい」と指摘する。
水引飾りは贈り主が心を尽くした証し。相手の喜ぶ顔やシチュエーションを想像し、気持ちを込めて結んではいかが。
(柳下朋子)
[日経プラスワン2015年6月6日付]
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