話題の「サードウエーブ」コーヒー通になる
産地こだわり浅煎りで
東京都世田谷区のメロウブラウンコーヒー自由が丘本店。3月末、大学時代の友人2人と横浜市から来た40代の女性会社員は「話題のサードウエーブのコーヒーは香りが良い。豆や抽出法だけでなく、気分に合わせてカップの色も選べるのは初めて」と楽しそう。
同店は大手のUCCグループが今年1月に開いた。南米やアフリカ、東南アジアなど産地だけでなく農園までわかる豆を中心に常時6種類そろえ、抽出方法もドリップやサイホン式など4種類から選べる。落合直人店長は「苦みや酸味、コクなど、お客さんの好みを聞きながら最適な一杯を出せるよう心がけている」と話す。
サードウエーブは米国西海岸が発祥の新しいコーヒー文化で、2010年ごろから国内でも東京の個人営業の店を中心に広がり始めた。今年2月には本場のブルーボトルコーヒーが日本に初出店。(1)生産した地域や農園まできちんとわかる単一品種の豆を使う(2)浅煎りで豆本来の味や香りを引き出す(3)ハンドドリップなどの抽出方法で一杯ずついれる――が主な特徴という。
同じ米国からの流行でも、第2波の「シアトル系」と呼ばれるコーヒー店が焙煎(ばいせん)時間の長い深煎りが中心なのに対し、浅煎りタイプ。中には紅茶のような風味のものもある。カフェ情報サイト「東京カフェマニア」主宰でライターの川口葉子さんは「飲んでみて、コーヒーがこんなにフルーティーなのかと驚く人が多い」と話す。
価格は店や豆の種類などによっても異なる。一杯1000円以上のものがある一方、平均的には300~400円台と品質や手間を考えれば手ごろと言える。浅煎りにすることで豆本来の酸味や甘みを引きだそうとしているため、まずは砂糖やミルク無しで楽しみたい。産地や種類が同じでも、焙煎前に豆の周りの果肉を熟成させる処理法など、加工手順も多様だ。
奥の深そうな世界だが、川口さんは「サードウエーブでは豆や焙煎のことをお客さんに伝えることを特に大事にする。わからないこともどんどん聞いてみて」と話す。会話を通じてお気に入りの一杯をみつける楽しさも格別のようだ。
手仕事の1杯 今も昔も
丁寧に1杯ずついれるコーヒーと聞いて昔ながらの「純喫茶」を思い出す人もいるだろう。サードウエーブの特徴の1つ「ハンドドリップで1杯ずついれる」サービスは、実は日本の喫茶店のお家芸。新しい流行を機に、若い世代に見直す動きも出始めている。
昭和30~40年代に多くできた純喫茶は、装飾的な内装など店主の個性や趣味をはっきり打ち出した店が多い。工場のような無駄のないすっきりした空間作りの店が多いサードウエーブとは異なる。
ただ一方で、「職人技を大事にする点では共通している」とウェブサイト「純喫茶コレクション」を運営する難波里奈さんは説明する。純喫茶ではカタカタとパソコンをたたいて仕事をするのは似合わない。店主と会話を楽しんだり、ゆっくり窓の外の景色を眺めたり。ケチャップたっぷりのナポリタンなどの軽食やケーキなどが味わえるのも純喫茶のうれしいところだ。
昭和から続く純喫茶も訪ね、新旧のコーヒー文化を味わうのもいい。
(高田哲生)
[日経プラスワン2015年4月11日付]
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