クリスマス、各国の定番ドリンクを楽しむ
卵と牛乳使った甘い一杯
「飲むカスタードクリームみたい」。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーにこの冬、新しいホットドリンクが登場した。その名も「エッグノッグ」。卵と牛乳をベースに作る甘い飲料で「米国ではクリスマスの定番」(オリエンタルランド)だ。ラムなどアルコールを入れることもあるが、ディズニーでは入れない。クリスマスまでの限定販売を予定している。
エッグノッグは米国やカナダで古くから親しまれている。名前の由来には諸説あり、その一つが「ノギン」という木製の器からくるというもの。「エッグ&グロッグ」が語源との説もある。英和辞典によると「グロッグ」は強い酒を意味し、ふらふらする状態を表す「グロッギー」もこの言葉から派生した。
米国人にとってエッグノッグはどんな存在か。米大使館に尋ねたところ、こんな話を聞いた。元農務担当公使のジェフリー・ウィギンさんは毎年、クリスマスになるとエッグノッグ作りに力を入れた。4時間以上かけてじっくり仕上げたという。「時間をかける価値がある一杯だ」と常々語っていて、今もレシピが残っている。米初代大統領ジョージ・ワシントンも大好物だったようだ。
エッグノッグの作り方をフードコーディネーターで世界の食文化に詳しい一門真由美さんに聞いた(レシピ参照)。ポイントは、最初と最後にしっかり泡立てること。ふわふわの食感が楽しめる。卵は卵黄と卵白に分けるやり方もあるが、分けなくても十分おいしい。アルコールを加えるならラムやブランデー、バーボンがおすすめ。飲み過ぎには注意したい。
米国にはもうひとつ、定番の飲み物がある。「ホットアップルサイダー」だ。サイダーといっても炭酸飲料ではない。一門さんによると、米国では多くの場合、ろ過処理をしないリンゴジュースのことをサイダーと呼ぶ。果肉などが残っているのが特徴だ。
リンゴやオレンジをクローブやシナモンスティックなどのスパイスと一緒に15分ほど煮込む。沸騰寸前の状態を保つのがコツだ。英国の「ワッセイル」という名前のリンゴ酒と作り方が似ている。ワッセイルには「健康であれ」という意味があり、こちらもクリスマスによく飲まれている。
スパイスで体あったか
欧州では、クリスマスにスパイスを入れて煮込んだホットワインを飲む習慣がある。「ローマ帝国時代、ワインにスパイスを入れて飲んでいたとの文献もある」(一門さん)といい、これが欧州中に広まった。ドイツの「グリューワイン」などが有名だ。冬が厳しい地域で体を温める狙いもあったようだ。
ジュース版グリューワインともいえるのが「プンシュ」。ドイツやオーストリアなどで広く飲まれている。ブドウジュースにクローブやシナモンスティックを入れて煮込み、仕上げにレモンを加える。ジュースはリンゴやオレンジにすることもある。
北欧では「グロッギ」がよく知られている。ワインで作ることが多いが、ジュースを使うこともある。フィンランドではクランベリージュースが定番だ。カシスやブドウでもいい。国によって名前が微妙に違い、デンマークやノルウェーでは「グロッグ」と呼ぶ。エッグノッグと同じく「グロッギー」という言葉のもとになっているのかもしれない。アルコール入りの場合、ウオツカやウイスキーを加える人もいるという。
「世界各地で、その地に根ざしたクリスマスドリンクが飲まれている」(一門さん)。歴史や文化に思いをはせ、特別な一杯を楽しむのもいいかもしれない。
(河尻定)
[日経プラスワン2014年12月13日付]
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