コットンパール 気負わず「真珠」のおしゃれ
軽さに驚き 光沢柔らか
アクセサリーパーツを販売する貴和製作所のラフォーレ原宿店(東京都渋谷区)。そのワークショップコーナーで、ナイロンワイヤにパールの粒を次々に通している女性たちがいた。コットンパールと花をモチーフにした飾りを組み合わせたネックレスの手作り講習会の参加者たちだ。
「コットンパールを使った講習会は、募集するとすぐ満席になる人気ぶり」と話すのは、スタッフの染谷実紅さん。「当店で扱い始めたのは2年前。最近はコットンパールを目当てに来店する人が増えている」
コットンパールは、ふわふわの綿を球状に丸めて圧縮し、表面に光沢を与える加工を施したフェイクパール。素材が綿のため、ふんわり羽のように軽い着け心地が特徴だ。「ガラス製などは重くてすぐ外したくなる。でもこれはとにかく軽い。肩が凝らなくていい」(講習会に参加した山下泉さん)
また表面のざらざらした微妙な凹凸が、独特の温かみと柔らかな光沢を醸し、どこかアンティーク風なのも魅力だと愛用者は語る。同じく講習会に参加した和田由紀さんは「つるっとしたプラスチックパールは、ともすると安っぽく見える。コットンパールは内側から発光するよう。本真珠でないのに輝きが上質で、味のある風合いなのがお気に入り」という。
コットンパールは、古くから人造真珠が地場産業だった大阪府和泉市で、戦後に製造されるようになった。本真珠よりずっと安価なコットンパールは、数十年前に一時ブームになったことも。しかし、さらに安価に量産できるプラスチックパールの登場で生産が終了し、すっかり忘れられた存在となっていた。
そんなコットンパールが再び脚光を浴び出したのは、3~4年前。同市のある人造真珠メーカーで、倉庫に眠っていた古いコットンパールが2000年に見つかったのがきっかけだ。この在庫を細々とアクセサリー業者に販売していたところ、非常に好評だったため09年から再び製造を始めた。すると、ほどなく生産が追いつかないほど人気が広がり始めたのだという。
異素材ミックス楽しむ
「マットな(光沢のない)質感はコンサバになりすぎず、どんなファッションにも合う」と、コットンパールに注目するのは、スタイリストの川田亜貴子さんだ。雑誌で自身がプロデュースするコットンパールアクセサリーを紹介したところ、同誌の通販サイトでは発売日に完売するほど反響があったという。
「大胆なボリュームがあっても軽くて疲れない。たとえば200センチを超えるスーパーロングネックレス。じゃらじゃらと4連に巻けば、顔回りがぱっと華やぐ」。シャツやニットにも、シンプルなワンピースにも。気負わず日常使いできるのは、リーズナブルなコットンパールならでは。
「コットンパールにリボンを組み合わせたブレスレットは、異素材効果で"当たり前にならない女らしさ"を演出できる」。くるくると巻くだけで、ボリュームがありつつ軽やかな手元に。リボンとの組み合わせは最近のトレンドだ。手作りなら、季節に合わせてリボンの素材を替える楽しみもある。
「コットンパールは中身が綿なので穴を広げやすく、手作りに適している」(染谷さん)。リボンに限らず、キラキラしたクリスタルのビーズと組み合わせるなど、オリジナリティーの出し方は無限大だ。
ちょっといびつな独特の風合いが魅力のコットンパール。いま注目のアクセサリーである。
(ライター 松田 亜希子)
[日経プラスワン2014年11月15日付]
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