「細マッチョ」目指す50代 筋トレのポイントは?
風呂上がり、鏡に映った我が身(59)を見て驚いた。筋肉が落ち、弱々しい体になっている。ダイエットのせいか、加齢のためか。筋肉が減ると見栄えが悪いし、身体機能の低下につながる。筋肉をつけたい!
手っ取り早く筋肉をつけるには、筋肉トレーニングが必要だろう。だが、筋トレで腰や膝を痛めてしまったシニアもいるという。どうするか。
書店をのぞくと筋トレ本が並ぶ。「定年筋トレ」というタイトルの新書が目に留まった。表紙には「60代は筋トレ適齢期! 筋肉を増やせば第2の人生が輝く」と惹句(じゃっく)が踊る。これこれ。共著者の吉田直人さんに指導をお願いすることにした。
向かったのは、筋力トレーニングでアスリートの障害予防やパフォーマンス向上を目指すNPO法人、NSCAジャパン(千葉県流山市)。吉田さんは同NPOでヘッドストレングス&コンディショニングコーチを務めている。
「早速、やってみましょうか」。吉田さんに促されて、同NPOが備えるストレングスルームに入った。ベンチプレスなどトレーニング機器が目に飛び込んでくる。
「機器は使いません。自重トレ(自分の体の重さを利用したトレーニング)から始めましょう」と吉田さん。自重トレの基本3種目は、腕立て伏せ、スクワット、腹筋。「この3種で主要な筋力を効率よく鍛えることができる。シニアはこれで十分」という。
「えっ、そうなの」。筋トレという語感から「苦行」というイメージを抱いていたが、何とかなりそうだ。
準備のストレッチをしてから、まず、腕立て伏せに挑戦。腕立て伏せでは体重の約7割が両腕に負荷としてかかると言われており、「上腕、肩、胸の筋肉はもちろん、バランスを取るため全身の筋肉が鍛えられる」(吉田さん)。
手の位置は、肩よりも手ひとつ分後ろに。背筋を伸ばし、体をまっすぐに保ちそのまま下げ、上げる。腰が落ちたり突き出たりするのは禁物。
「うわっ、きつい」。なまった体には、腕立て伏せは思った以上にこたえる。筋トレの腕立て伏せは、1セットを10~12回とし、間隔を20~30秒空けて、2~3セットこなす。日ごろ運動をしていないと、10回やるのも苦しい。
「これ、相当ハードですね」と吉田さんに訴えると「負荷を増やさないと筋肉は増えないですよ」とほほえむ。やはり、楽して目標を達成しようというのは虫が良すぎる。
次は下半身の筋肉を鍛えるスクワット。背筋をまっすぐ伸ばし、体の上げ下げを繰り返す。腰を落としたとき、膝がつま先より前に出るのはNG。筋肉にしっかりと負荷をかけるため反動をつけないようにするのが肝心だ。
最後に腹筋。筋トレには太もものところに置いた手を滑らせて膝を触るところまで上体を上げる「ニータッチシットアップ」が良い。手を頭の後ろで組んでやると反動がつきやすいので、腹筋に負荷がかからない。
3種目をこなすのにかかった時間は15分程度。終えると、息が上がり、筋肉がかなり疲労しているのを感じる。
筋肉の量は20代がピークとされる。それでも「トレーニングをすれば何歳でもつけられる。いつから始めても遅くはない」と吉田さんは言う。
シニア向けの筋トレはほかに、ダンベルを持って片足を前に踏み出す動作をする、膝を曲げて腰を下ろし、上体を後ろに倒して両腕で支え上腕三頭筋を鍛える、などの種目がある。3種目と組み合わせてやるとさらに効果的というが、還暦が目前の身には基本種目だけで十分だ。
いま週3回、自宅で筋トレをしている。まだ、筋肉がついたという実感がないが、吉田さんは「1カ月半程度で効果が表れてくる。見た目が変わりますよ」と励ましてくれる。楽しみだ。
継続のためジム利用も
自宅での筋トレは「お金がかからず、いつでも気軽にできる」(吉田さん)。しかし、ともすると怠け心が起きがちで、挫折してしまう例も少なくない。「筋トレの日」を決めて、「都合でできなかった場合は翌日にするというルールをつくっておくと続けやすい」(吉田さん)。
継続するにはジムを利用するのも効果的だ。バーベルやマシンを使ったり、トレーナーから指導を受けたりすると、モチベーションが高まる。吉田さんは「自宅での筋トレに体が慣れてきたら、ジムでのトレーニングに進むといい」と勧める。
無理をしないことも大切。筋トレはシニアにとってきつい運動。体調がすぐれないときは控えよう。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2018年3月10日付]
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