しっかり換気 ゲタ箱のにおい、さようなら
梅雨の季節、玄関はカビと靴のにおいに悩まされる。対策は住む環境や生活状況で変わるが、ゲタ箱の通気が大きく影響する。ポイントを押さえて、カビとにおいを撃退しよう。
「我が家にはゲタ箱がありません」。愛知県一宮市に昨年10月、新築住宅を設けた苅谷久美子さんは言う。夫と子ども2人の4人家族の苅谷さん、みんなで70足ほどの靴は玄関のそばにしつらえた「シューズクローゼット」という3.3平方メートルほどの空間にある。この空間に5段の棚を作って靴を収納する。
シューズクローゼットには出入り口が2カ所ある。家族は帰宅すると、たたきの横にある扉の付いた出入り口から入り靴を脱ぐ。そしてもう1カ所の扉のない出入り口をくぐって居間に向かう。たたき横の出入り口に扉があるのはお客にクローゼットを見られないようにするためだ。普段は扉を開けて靴周辺に空気がこもらないようにしている。その結果「いやなにおいがしない」(久美子さん)。
シューズクローゼットを提案したインテリアコーディネーターの水谷聡子さんは「閉ざされたゲタ箱と異なるため、梅雨でも玄関まわりにカビは生えないし、いやなにおいもないだろう」と話す。カビは汚れやたまったほこりに湿気が含まれることで生える。空気のこもりやすい玄関も、通気を良くすれば予防と撃退になるというわけだ。
住宅メーカーのLIXIL住宅研究所(東京・江東)によると、通気や換気を良くしてカビを抑える家づくりはここ数年で盛んになった。
4年前、千葉市内に二世帯住宅を新築した山本浩二さん宅はその一つ。24時間の換気システムが特徴。これにより「小学4年生の長男が泥だらけの靴で帰っても、汚れを落として玄関にしばらく置くと換気の効果で乾く」と浩二さんの妻の三保さんは話す。
扉を外して カビ発生なし
本格的なリフォームなどを行わず、ちょっとした知恵で玄関まわりの環境を変えることもできる。
横浜市内で築50年以上の一戸建てに住むAさんは、5月に入りゲタ箱の扉を外した。日当たりの悪さと家の老朽化でカビに悩まされており、例年6~7月になると最新の除湿剤をゲタ箱内に置いたり、抗菌・防カビシートをゲタ箱に敷いたりしてきた。だが抜本解決に至らず、新たな対策として扉を外して通気を良くすることにした。
このゲタ箱、扉の両側にちょうつがいとビスが付いているだけで、ドライバーで簡単に外すことができた。5月に長雨の日があったが、カビは発生しなかった。今後は来客の時、靴を見られないようロールスクリーンを取り付ける。ゲタ箱の横幅を採寸して、それに合った突っ張り棒を渡して設置するという。
Aさんのカビ対策はほかにもある。玄関に扇風機を置き送風。ゲタ箱の上部には格子の付いた網戸付きの小窓がある。小窓を開けて外気を玄関に送り込み扇風機の風とともに環流させ内外の温度差をなくし、通気を良くする。仕事で不在の時は小窓を開け、扇風機にタイマーをかける。
雨にぬれた靴 内側もきれいに
ゲタ箱とともにカビを生みやすくする靴の手入れも大事にしたい。ビジネスシューズ製造、アシックス商事(東京・台東)の芳賀健一さんは「雨でぬれた革靴は外観だけでなく内側もきれいにしてほしい」と指摘する。
靴を脱いだ直後に除菌・消臭スプレーを15センチほど離して内部全体に行き渡るように噴射する。その後、乾燥剤を入れることを励行。丸めた新聞紙を詰めれば水分が取れるという。ちなみに天日干しは革を傷めるため日陰干しを心がけたい。芳賀さんは言う。「人は1日にコップ一杯分の汗を足にかく。靴の中は高温多湿なので、毎日履くと前日の汗が乾く前に水分を吸収してしまう。1日履いたら2日休ませてほしい」
カビを発生させない暮らしは、快適さだけでなく健康につながることも知っておきたい。帝人の抗菌スプレーなどをマーケティングするヘルスケア・ビジネスナレッジ(東京・中央)社長の西根英一さんは「カビが気管支に入り炎症を起こす恐れがある。梅雨時、せきが出るようなら病院で受診して」と呼びかける。
玄関は風水で運気を左右する空間ともいわれる。御利益を願い、風通しを良くするのも悪くない。
(保田井建)
[NIKKEIプラス1 2017年6月10日付]
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