腰痛や肩こりは「座り方」が原因 1分ストレッチを
座り仕事が多い人にとって、腰痛や肩こり、血行不良による冷えの悩みは深刻だ。原因の多くは、座り方にある。座ってできるストレッチを取り入れて、机に向かう姿勢を見直し、血流を促進しよう。
職場や書斎でパソコン作業中、どんな姿勢になっているだろうか。仕事中の人に多い座り方に「骨盤後傾・背中丸め」「脚組み・前かがみ」「もぐりこみ」がある。共通するのは、骨盤が後ろに傾いている点だ。
骨盤が後ろに倒れた座り方は、リラックス感が得られる半面、骨盤に連動する脊柱がたわむため、腰椎の圧迫につながる。さらに、首回りの筋が、たわんだ脊柱の上にある頭部を持ち上げるために緊張し続けて、肩こりを招きやすい。このような座り方を続ければ、おのずと腰痛に至る。
椅子に座り続けると、股関節の周辺や膝の裏を圧迫するため、下肢の血流や体液の循環も悪くなる。その結果、むくみや冷えを引き起こす。冷房を使い始めるこの時期は特に、注意が必要だ。
仕事でデスクワークが多い人は、自らの身体を守るために、姿勢改善を促すポーズを取り入れよう。
まずは「太もも周りのストレッチ」を試そう。お尻を座面の左側にずらして座り、左脚を後ろに投げ出す。背筋を伸ばして気持ちいい程度に、伸ばした脚の位置を調整しよう。同様に反対側も伸ばす。太ももの付け根にある大きなリンパの流れと、下肢の血流を促す。
続いて「太もも後ろ側のストレッチ」。浅めに座り、片脚を前に伸ばす。伸ばした脚のつま先を上に向け、踵(かかと)を押し出す。太もも裏側のハムストリングからふくらはぎが伸びる。
次は「お尻のストレッチ」。足首を反対の脚の膝近くに乗せて、背筋を伸ばしてみよう。お尻の上にある大臀(でん)筋や中臀筋、内側の梨状筋などが伸びる。各ポーズを約15秒ずつ、デスクワークの合間に取り入れるだけで、座り姿勢によるマイナスの影響を減らせる。
座り仕事中、30分に1度は椅子から立ち上がって、動くように心がけたい。長時間座ることで、心疾患など生活習慣病を招くとの指摘もある。
時には思い切って立って作業するのも有効だ。足元に小さな台を置いて片脚を乗せると、立っている時の腰痛を緩和する。台につま先を乗せて、ふくらはぎを伸ばしながら立ち作業することもできる。立ち姿勢、座り姿勢の両方に合うように高さ調整が可能な上下昇降デスクもある。
作業するデスクの環境は重要だ。身近な物を使って、自分の体に合わせたい。椅子に座布団やクッションを置いて高さを上げつつ、座面が前下がりになるように調整しよう。太ももの付け根の圧迫や、骨盤が後ろに傾くのを防ぐ。前かがみ姿勢を避けるため、本や箱を重ねて、パソコンを置く台も高くする。
座り仕事が避けられなくても、負荷がかかりにくい姿勢を取ったり、合間にストレッチを取り入れたりして、健康リスクを減らそう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2017年6月3日付]
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