ビアカクテル、食卓華やぐ 季節の味に舌鼓、夏を満喫
新緑を吹き抜ける風はビールをおいしくする。渇いたのどにグッと一杯も悪くないが、たまには趣向を変えてはどうだろう。ひと味加えれば苦み走った表情が消え、夏らしく変身する。
「女性はビールの炭酸や苦みを敬遠する人が多い。でも工夫次第でぐっと飲みやすくなります」。フードコーディネーターの根岸絹恵さんに聞くと、ひと味加えたビアカクテルは夏の料理に合わせやすいという。
あっさり料理の代表のそうめん。ビールの苦みとは合わないように思えるが、根岸さんはふくよかで繊細な味わいが特徴の白ビールを勧める。ラガービールより苦みが少なく「共に原料が小麦なので相性がよい」。フルーツジュースを入れた「フルーツビア」は、さわやかな酸味も加わって、食が進む。
原料の相性考慮 加える味工夫
定番の枝豆なら、ラガービールにグレープフルーツジュースを同量加えると合わせやすい。ビールの苦みが和らぎ、枝豆の甘味が引き立つ。莢(さや)ごと油でいためた枝豆には、ジンジャーエールを加えた「シャンディー・ガフ」を。焼きトウモロコシには、やはりトウモロコシが主原料のバーボンウイスキーを少量加えた「ボイラー・メーカー」。双方の香りが重なり増幅する。
意外だが、スパイシーなカレーにもビアカクテルは合う。勧められたのはビールに同量のヨーグルトを加えた「ハイジ」というカクテル(写真の左端)。混ぜればどぶろくかマッコリを思わせる液体になるが、口に含めば酸味と炭酸がさわやかで、ヨーグルトのコクもある。スパイスの刺激を優しくくるんでくれる。
東京・代官山のミニ醸造所「スプリングバレーブルワリー」の協力で、他のビアカクテルも作ってみた。ビールに炭酸水とレモンを加えた「パナシェ」(写真の左から2番目)、トマトジュースで割った「レッド・アイ」(同右から2番目)は酸味が特徴。ペパーミントのリキュールを4分の1ほど加えた「ミント・ビア」(同右端)はグリーンが鮮やかで、ミントのすっきりした香りが涼しさを呼ぶ。黒ビールをスパークリングワインで割った「ブラック・ベルベット」、ラガービールに白ワインを加えた「ビア・スプリッツアー」などもある。
もともとビールは男性の飲み物というイメージが強い。本場のドイツでは1516年に「ビール純粋令」が制定され、原料は麦芽、ホップ、水、酵母のみという製造基準をかたくなに守ってきた。
日本のビールもこれに倣ってきたが、果実を加えたベルギービールが人気になり、最近は小さな醸造施設で造るクラフトビールが増加。コンビニでも黒ビール、白ビールやアルコール度数高めのIPA(インディア・ペールエール)などたくさんの種類が買えるようになった。スプリングバレーブルワリーの中水和弘さんは「ビールの味や香りの幅がぐっと広がり、男性も女性も様々なタイプを気軽に楽しむようになった」と話す。
家庭で作るなら、従来の発想を転換し、思い切った組み合わせに挑戦するのもいいだろう。意外な相性を発見できるかもしれない。ただ、おいしく飲むにはいくつかのポイントがある。
グラス冷やし ジュースは冷凍
「グラスにもこだわって」と京王プラザホテルでメインバーテンダーを務める小鷲崇文さんはアドバイスする。食洗機や食器棚から取り出してそのまま使うと、他の食材や家具の臭いがグラスに付着していて、味を損なうからだ。
飲む前には丁寧に水洗いすることを忘れずに。洗い終わったグラスは布ではふかずに、自然に水を切り乾燥させるのがいいという。「泡立ちすぎを防ぎ、炭酸が長持ちする」効果がある。
もう一つはビールと副材料をよく冷やすこと。ビールはキンと冷えていても、ジュースなどが常温では混ぜれば温度が上がる。「グラスも事前に冷蔵庫に入れておけば、ぬるくなるのを防げる」
もっと冷たくしたいなら、ジュースを冷凍庫で凍らせてビールに浮かべるのも面白い。クラッシュアイスのように砕いてグラスに盛れば、見た目も涼しい。
でも、ビールの醍醐味はそのままぐっと飲んでこそという人も多いだろう。そんな場合は発泡酒や第三のビールがお勧め。独特の味が消え、代替品であることを忘れさせてくれる。これはこれでいい。
(田辺省二)
[NIKKEIプラス1 2017年5月20日付]
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