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『カフェ・ソサエティ』 すれっからしの女への愛

2017/5/12付 日本経済新聞 夕刊

 ハリウッドとニューヨークを舞台にユダヤ人青年が恋に揉(も)まれながら成長していく。時代は監督・脚本のウディ・アレンが大好きな1930年代。ロマンティックでおかしくて少々ほろ苦い映画が生まれた。

東京・有楽町のTOHOシネマズみゆき座ほかで公開中 Photo by Sabrina Lantos(C)2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

 監督ウディの若い日を思わせるジェシー・アイゼンバーグ演じるボビーは、大物芸能エージェントの叔父を頼ってハリウッドへ行き、叔父の美しい秘書ヴォニー(クリステン・スチュワート)に恋をするが、彼女には他の男がいた。

 失意のボビーは生まれ育ったニューヨーク、ブロンクスへと戻り、ギャング稼業の兄が仕切るナイトクラブのマネージャーの仕事を得た。この仕事が性にあったようで店に来た美女ヴェロニカ(ブレイク・ライブリー)に恋をして所帯を持った。ヴェロニカの愛称がヴォニー、愛した女が同じ名前なのは運命の皮肉? そこへ叔父の再婚妻になったヴォニーが夫と一緒にやって来た……。

 2人の女にはシャネルが似合う旬の女優を起用、流行に翻弄される映画界と派手なクラブの世界(カフェ・ソサエティ)を華やかに描く一方、ボビーのユダヤ人家族の賑(にぎ)やかで飾り気のない庶民生活も交えてウディ自身が愛してやまない時代を陽気に描き出す。

 深みのある色調と端正な映像が愛されるイタリアの名撮影監督ヴィットリオ・ストラーロ(40年生まれ)のカメラが写し取るウディの涸(か)れることのない才能。

 片や80歳過ぎの監督ウディ、片やもうすぐ80歳の撮影監督ヴィットリオ、というベテラン映画人が楽しみながら作ったように見える人間臭い世界。華やかだが、粋とかお洒落(しゃれ)というだけでなく、少しばかりすれっからしの雰囲気も見えて、そういえばウディって昔から我が道をいく、自立心旺盛なすれっからしの女たちを愛してきたなあ、としみじみさせられた。1時間36分。

★★★★

(映画評論家 渡辺 祥子)

[日本経済新聞夕刊2017年5月12日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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