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竜田揚げの由来は? 奈良を流れる川面の紅葉

2017/5/9付 日本経済新聞 夕刊

「美幸 mikou」(奈良県生駒市)では本場の鶏たつた揚げが存分に味わえる

 奈良県北西部を流れる紅葉の名所、竜田川。川面に浮かぶ紅葉からその名が付いたのが竜田揚げだ。唐揚げとしてひとくくりにされやすく作り方の誤解も多いため、地元の生駒市と斑鳩町が本場の味の普及に動き始めた。しょうゆをベースに下味をつけてサクサクに仕上げる本来の調理法を守りつつ、魚や鹿など鶏以外にも材料を広げている。

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 生駒市観光協会は2014年に「たつた揚げプロジェクト」をスタートした。現在31の飲食店、旅館を本場の味の提供店として認定している。その一つ、近鉄生駒駅から徒歩約3分の居酒屋「美幸 mikou」をたずねた。「たつた揚げ定食」を注文すると、大盛りサイズの鶏の竜田揚げと刺し身、自家製豆腐、かす汁が付いた御膳が出てきた。竜田揚げはサクッとした食感。かむほどに肉汁が口の中に広がり、まろやかなしょうゆ味がほど良くご飯が進む。

 「竜田揚げ」の名の由来は、揚げた肉の赤色と衣の部分的な白色が竜田川の紅葉と光る水面に似ているところからきたという。いつ頃から名称が使われ始めたのかは不明だが、ヒントになるのは「唐揚げ」が外食メニューに登場したのが昭和初期という点だ。

 ただ、「唐揚げ」の多くが小麦粉で揚げるのに対し、竜田揚げはしょうゆベースの下味を付けて片栗粉で揚げる。片栗粉で揚げることで衣の一部が白くなりやすい。百人一首の在原業平の和歌が情景を歌う。

 ちはやぶる 神代も聞かず竜田川 から紅に水くくるとは

「美幸」では、国産鶏肉に丁寧に下味をつけて一晩寝かせる

 地元が目指すのはまさに和歌が表現する鮮やかな赤い仕上がりと和の食味だ。「美幸 mikou」の厨房で基本的な作り方を聞いた。国産の鶏もも肉を一口サイズに切り、丁寧にたれに浸す。たれは濃い口しょうゆ、みりん、酒、しょうが、ニンニクなどから作る。それを一晩寝かした後に片栗粉をまんべんなくまぶし、通常の揚げ物より低い160度程度で揚げる。

 「揚げた時の油の泡は最初は小さくて多い。その泡が大きく少なくなった時にさっと引き上げると鮮やかな赤になる」。店主の荻原左久雄氏(73)が揚げるポイントを教えてくれた。

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