夏フェス、トップ10 子連れもキャンプ、気配り充実
野外フェスとも呼ばれ、音と自然との一体感が非日常へ誘う。
家族で楽しめる仕掛けも増え、今やアウトドアの定番になりつつある。
アウトドア気分満喫/年間動員200万人超
CD販売が減少し続ける一方で、音楽ライブに人が集まっている。とりわけ夏の野外で行うことが多いフェスが人気だ。ぴあ総研によると、2015年のフェス全体の動員数は234万人と初めて200万人を突破した。
最近はアウトドアイベントとして注目を集め、各フェスは食事やキャンプサイト、子ども向け施設などを充実させている。音楽面でも進化が著しい。アンプやスピーカーなどの機材が充実し、よりダイナミックな音響を味わえるようになっている。今回は夏フェスと呼ばれる野外フェスに絞り、子連れでも快適に楽しめる要素に焦点を当てた。
名だたるフェスを抑えて1位になった「ニューアコースティックキャンプ」は文字通り楽器本来の響きを重視したライブ。水上高原のゴルフ場が会場で、芝生の快適さや子ども向け施設の充実度が評価された。
2位の「フジロック」は10人すべての選者がベスト10に入れ、うち4人が1位に選んだ。音楽性に加え、自然との共生・一体感が支持された。ランク外だが群馬県のプレジデントリゾート軽井沢で初開催の「ザ・キャンプ・ブック」(6月10、11日)も「親子連れには期待大」と注目を集めた。遊びと学びをテーマにキッズエリアが充実しているという。フェスの家族志向はますます強まっている。
まったり空間(群馬県・水上高原リゾート)
「わらう、うたう、たべる、ねっころがる」がコンセプトで今年で8回目を迎える。ロックやジャズなど様々なジャンルのアーティストが集う。「音楽はアコースティックがテーマなので子どもも楽しめ、秋開催なので熱中症などの心配が少ない」(竹下沙弥香さん)。会場はゴルフ場で芝生が気持ち良く、子どもがはだしで遊べる。「ハンモックやお絵描き、ラフティング、ポップコーン作りなどワークショップが豊富で犬連れの客も多い」(住川亮さん)
「授乳とオムツ替えのテントが完備している」(石原永二郎さん)うえ、「キャンプのレンタルができるのでアウトドア初心者にもやさしい」(渡部郁子さん)。「アーティストとの間には柵がなく、来場者のマナーによって成り立っているピースフルな雰囲気」(田中穣二郎さん)が家族向けのフェスとして高い評価を得た。
(1)開催日 9月16、17日(2)交通手段 上越新幹線・上毛高原駅とJR水上駅から有料シャトルバス(3)公式サイト http://newacousticcamp.com/
自然と共生 幼児にも配慮(新潟県・苗場スキー場)
初開催は1997年。当初は山梨県で開かれ、99年から新潟県に。「フジ」の名はその名残だ。「日本の野外フェスの礎を築いたフェス」(杉岡中さん)で、国内外約200組が参加する国内最大規模のイベント。「夏の苗場に世界中からジャンルを超えてアーティストが結集する。その非日常的な空間そのものが魅力」(高橋修さん)といえる。
自然との共生をテーマに、幼い子どもが遊べるキッズランドなど親子で楽しめる仕組みが考えられている。「保護者同伴なら中学生までチケット不要でファミリーにやさしい」(渡部さん)。「車、電車ともにアクセスが良い」(雨宮健一さん)点も評価された。音楽と自然と遊びが満喫できる。
(1)7月28~30日(2)上越新幹線・越後湯沢駅から有料シャトルバス(3)http://www.fujirockfestival.com/
洋楽・邦楽の人気者一堂に(千葉市・大阪市)
東京会場(ZOZOマリンスタジアム・幕張メッセ)と大阪会場(舞洲スポーツアイランド)で同日開催される。「ラッパーからアイドル、Kポップまで洋楽、邦楽問わず人気者が一堂に会するラインアップを都会で見られる」(高橋さん)のが魅力だ。「子どもに人気のアーティストによる演奏もあり、盛りだくさんのイベントで楽しめる」(石原さん)
音楽だけではない。「多国籍なフードやスイーツ、体験型ブースなど遊びきれないほどのあらゆる楽しみがいっぱい」(河村亮太さん)。
(1)8月19、20日(2)東京会場(千葉市):JR海浜幕張駅から徒歩、大阪会場:地下鉄コスモスクエア駅から有料シャトルバス(3)http://www.summersonic.com/2017/
会場内にはプール(兵庫県・三田アスレチック)
様々なジャンルのアーティストが集う。「大人も子どももみんなで遊べるフェス」(田中さん)。会場内にはプールが設置され「とにかく子どもが飽きず、夏休みを楽しめる」(石原さん)。「アスレチックなど子ども向け施設が充実。0~3歳児でも安心して遊べる」(渡部さん)。関西では数少ないキャンプができるフェスとして支持された。
(1)8月26、27日(2)JR福知山線、神戸電鉄三田駅からバス(3)http://www.onemusiccamp.com/
BBQにも舌鼓(北海道・石狩湾新港樽川ふ頭)
広い会場内にステージが点在し、自由に見て回れる。日本初のオールナイト野外フェス。「キャンプサイトの数が多く、キャンプ中心で楽しみたい家族におすすめ」(渡辺梢さん)。北海道ならではの食事の環境も充実しており「バーベキューやジンギスカンを頬張りながら楽しめる」(雨宮さん)のも魅力だ。真夏のフェスだが、涼しく楽しめる。
(1)8月11、12日(2)地下鉄南北線麻生駅から有料シャトルバス(3)http://rsr.wess.co.jp/2017/
邦楽系が充実(茨城県・国営ひたち海浜公園)
2000年から開催している。14年からは計4日間で開催し「邦楽系のアーティストの充実度では群を抜く」(高橋さん)日本最大の野外ロックフェス。広大な敷地内に遊園地や水遊びができるスポットがある。「ベビーカーでも移動しやすく、ステージ脇にテントエリアがあるので、小さな子ども連れでも過ごしやすい」(竹下さん)。
(1)8月5、6日、11、12日(2)JR常磐線勝田駅、水戸駅から有料シャトルバス(3)http://rijfes.jp/
海岸近くの芝生でキャンプ(静岡県・吉田公園)
海岸近くの芝生で快適なキャンプをしながら楽しめる。「駐車場、キャンプサイト、会場のすべてがほどよいコンパクトさで、子連れでも移動がラク」(住川さん)。中学生以下は無料だ。キャンドルの明かりだけで楽しむライブもある。「会場は自然エネルギーを使用しており、環境への意識が高い」(杉岡さん)ことも評価された。
(1)6月3、4日(2)JR東海道線島田駅から無料シャトルバス(3)http://www.itadaki-bbb.com/2017/
ライブの合間に観覧車(北海道・いわみざわ公園)
いわみざわ公園内にある遊園地「北海道グリーンランド」で行うフェス。「音楽ライブに飽きたら観覧車や様々な乗り物がある遊園地で遊ぶことができる」(住川さん)。チケットには遊園地の入場券が含まれるので子連れにはうれしい。地元の食材を生かした食も豊富。「札幌から車で30分程度というアクセスの良さも魅力」(田中さん)だ。
(1)7月15、16日(2)JR岩見沢駅から臨時バス(3)http://www.joinalive.jp/2017/
富士山眺めながら(山梨県・山中湖交流プラザきらら)
会場は山中湖畔。富士山を眺めながら音楽を楽しめる絶好のロケーションが魅力だ。「各ステージの距離が近いので、子連れでも複数の会場を移動して楽しめる」(竹下さん)。授乳、オムツ交換スペースのほか気球やカヌー体験も。「天気が変わりやすいのでブーツやポンチョを用意するとよい」(渡辺さん)。
(1)8月25~27日(2)JR御殿場駅、富士急行富士山駅からバス(3)https://www.sweetloveshower.com/
電源はすべて太陽光から(岐阜県・中津川公園)
東日本大震災をきっかけに発案され、「電源はすべて太陽光からとっている世界でも例を見ないフェス」(杉岡さん)。邦楽のロックが中心だが「キッズエリアも設置され小さな子どもも楽しめる」(河村さん)。親子で参加できるワークショップや青空ミュージックスクールなど音楽を楽しみながら自然について学べるのが魅力だ。
(1)9月23、24日(2)JR中津川駅から有料シャトルバス(3)http://solarbudokan.com/2017/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。名称、場所。(1)開催日(2)交通(3)公式サイト。写真は1位Zeppライブ、2位(C)Yasuyuki Kasagi、3位Creativeman Productions、4位(C)Hiroshi Maeda、5位n-foto RSR team、6位ロッキング・オン・ジャパン、7位(C)ITADAKI CAMERA CREW、8位マウントアライブ、8位SPACE SHOWER NETWORKS、10位ワイズコネクション提供。
調査の方法 専門家の協力で6月以降の音楽フェスを20選定。音楽祭としての魅力、家族で楽しめる、快適さなどを総合評価した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
雨宮健一(KNT-CTホールディングス国内旅行部)▽石原永二郎(昭文社家族でおでかけ編集担当)▽河村亮太(日本旅行総研)▽杉岡中(大人のMusic Calendar編集長)▽住川亮(小学館ビーパル編集部)▽高橋修(ミュージック・マガジン編集長)▽竹下沙弥香(いこーよ編集部)▽田中穣二郎(コズレ代表取締役)▽渡部郁子(アウトドアナビゲーター)▽渡辺梢(ビーズDOD WEB担当)
[NIKKEIプラス1 2017年5月6日付]
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