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富山の昆布締め 刺し身や山菜にギュッとうまみ

2017/4/25付 日本経済新聞 夕刊

昆布の上にサス(カジキ)をきれいに敷き詰める(富山県魚津市のかねみつ)

 もともとは冷蔵庫のない時代の漁師町の保存食だった「昆布締め」。今では、食材を日持ちをさせるという本来の目的に加え、一手間かけて味に深みを出すための調理方法として富山に根づき、商品化も進む。

 昆布締めという食文化の由来は江戸時代にまでさかのぼる。富山の岩瀬や伏木などの港には、北海道でとれた海産物を日本海を経由して大阪まで運んだ「北前船」が寄港した。その際に持ち込まれたのが昆布だ。

 浄土真宗の信仰があついという土地柄から、魚肉類が使えない精進料理のだしとしても使われた。「天然のいけす」とも呼ばれる富山湾では収穫されない昆布だが、生活の中に「当たり前にある」食材として定着したという。

 昆布締めの作り方は単純だ。海産物などの食材をそのまま昆布で挟んで押し、しばらく寝かす。食材の水分を昆布が吸い込む一方で、グルタミン酸など昆布のうまみが食材に染み込むことで熟成した味となる。

◇     ◇

 商品として提供され始めた歴史は意外に浅い。「昆布締めには相性がある。脂の多い魚では味がなじまない」。1973年に県内で初めて海産物を昆布締めにして商品化した食品加工業「かねみつ」(魚津市)の金三津貢社長(78)は話す。定番と言えば富山ではサスと呼ばれるカジキ。ほかにも、マダイやヒラメなどの白身の魚、富山湾ならではのシロエビやホタルイカなど季節の魚介類の昆布締めが店頭に並ぶ。

 作り方がシンプルなだけに、素材にはこだわる。昆布も北海道函館近辺でとれる真昆布を選ぶ。魚の切り身などを洗うのは毎日くみに行くという富山湾の海洋深層水。昆布のうまみが負けてしまうので添加物は一切使わない。「こだわりがなければダメ」というかねみつの昆布締めの小分け詰め合わせ「こぶじめ・ひとりじめ」は、観光庁が後援する「おみやげグランプリ2017」のフード・ドリンク部門のグランプリにも選ばれた。

山菜の昆布締めもある(富山市の山彩工房ひまわり)

 昆布で締めるのは海産物とは限らない。海の幸と山の幸を組み合わせたのが、岐阜県との県境に近い富山市南部にある食品加工業「山彩工房ひまわり」で作られる山菜の昆布締めだ。「昆布のうまみが山菜に染み込むとやさしい味になる」と、同工房の江尻敍子さん(82)と下坂照子さん(78)は口をそろえる。

 使う素材は、飛騨(岐阜)と越中(富山)の山で育つシイタケ、ワラビ、フキ、ススタケなどの山菜。アク取りなどの下処理をして昆布だしで下味を付けた後に、昆布で締める。昆布の味がなじむ2週間から3週間くらいが食べごろだ。

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