スマホアプリも登場 赤ちゃんの便は「色」でチェック
便は健康のバロメーターといわれる。色や固さ、量など、そこから健康状態について様々なことが分かる。言葉が話せない乳児であれば、便はなおのこと雄弁だ。最近では乳児の便をスマートフォン(スマホ)で撮影し、診断してくれるアプリも登場。乳児の便のどういった点に着目すればいいのか、ポイントをまとめた。
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一般的に乳児の便は成長するごとに色が変わってくる。例えば生まれてすぐの乳児の便は濃い緑色をしている。これは胎内で飲んだ羊水などが便として出るためで、通常は数日後に黄色い便になる。
離乳食が始まる前までの数カ月間の便は明るい黄色。これは胆汁の色のせいで、体に異常があるわけではない。離乳食が始まれば大人のように茶色に変わってくる。緑色で酸っぱいにおいがする場合もあるが、母乳に含まれる成分によって便が酸性化するために起こるもので、心配は不要。
食べたものが便に混ざっていることもよくあるが、乳児は消化機能が大人ほど発達していないので、こうしたことが起こる。
注意すべきは「黒」。黒い便は消化管から出血した血が原因のことがある。腸閉塞の一種である「腸重積症」も疑われるため、早めの受診が必要だ。
便の色が徐々に薄くなり、白っぽくなるときにも注意したい。胆道閉鎖症の可能性があるからだ。この病気は肝臓と十二指腸の間にある胆管が細くなり、肝臓から腸へ胆汁を送ることができなくなる病気。放置すると肝臓が萎縮・硬化する肝硬変となり、死に至る可能性もある。新生児1万人に1人の割合で発症するとされている。
和田小児科医院(東京・足立)の和田紀之院長は「便の色以外にも、黄疸(おうだん)が徐々に濃くなっていないか、尿の色がウーロン茶のように濃くなっていないかどうかもチェック項目になる」と語る。胆道閉鎖症は生後60日くらいまでの発症が多いといわれるが、5カ月目くらいまでは注意が必要な病気。「不安になったらすぐに小児科医を受診すべきだ」と和田院長は強調する。
便の色は見る人の主観が入り込み、正確に判断できないこともある。そうした事態を防ぐため、聖路加国際大学公衆衛生大学院講師の星野絵里氏が中心となって、便の色から新生児の病気をできるだけ早く発見するための研究を進めている。文部科学省からの助成を受けた研究だ。
その一環として開発されたのが、便の色の自動判別機能を備えたiPhone(アイフォーン)向けアプリ「Baby うんち」。便の写真を撮れば判定結果が出る仕組みだ。このアプリを使う人が多くなるほど、便の色に関するサンプルも集まるので、判別機能の精緻化も進む。胆道閉鎖症をはじめ、胆道拡張症など6つの病気についての診断機能を備えている。
実は星野氏自身も胆道閉鎖症の子どもを持つ母親だ。「胆道閉鎖症は知名度が低いわりに、発見が遅いと命に関わる病気」と指摘する。一般的に胆道閉鎖症の子どもの便は白っぽい色をしているが、「黄色から徐々に白色に変わる場合も多い」(星野氏)という。
色が変わってくる段階で目視で病気に気づくことは困難。進めている研究では1万人単位で便のサンプルを集めたい考えだ。それだけ集まれば、診断の信頼性は相当に高まる。スマホアプリを通じた機械的な診断は早期発見の有効な一手となりそうだ。
母子手帳は7色で判断 黄→白など推移に注目
乳児の便の色から病気の傾向を推し量るためには、母子手帳の「便色カラーカード」を利用する方法もある。7つの色のパターンと便の写真が表示されており、実際の便と見比べることで胆道閉鎖症などの判断ができる。
その時々の便の色に気をつけることも重要だが、大切なのは色の推移だ。カラーカードには生後2週、1カ月、1~4カ月のそれぞれの時期の便の色の記入欄がある。黄色から白色に全体が変わっていったときは速やかに小児科医の診察を受けるように促している。
色の比較をできるだけ正確にするために、明るい部屋や太陽光のもとで見ることも大切だ。
ただ色の認識には個人の主観が入り込みがちで、絶対に信頼できるわけではない。またカラーカード自体の知名度も必ずしも高くない。迷ったら、すぐに診察を受けるようにしたい。
(小川和広)
[日本経済新聞夕刊2017年4月20日付]
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