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『グレートウォール』 荒唐無稽な光景に重力

2017/4/14付 日本経済新聞 夕刊

 冒頭でこれは事実をもとにしていると言う映画は多いが、この映画は反対。万里の長城にまつわる史実と伝説のうち、「伝説」をえがくとことわっている。つまり、壮大なホラばなしだ。

東京・日本橋のTOHOシネマズ日本橋ほかで公開中(C)Universal Pictures

 監督は、中国を代表する巨匠チャン・イーモウ(張藝謀)。彼のはじめてのハリウッド映画であり、はじめての3D映画だ。製作会社は「GODZILLA ゴジラ」(2014年)、「キングコング 髑髏(どくろ)島の巨神」のレジェンダリー。

 時代は宋代。ヨーロッパに先んじて火薬、羅針盤等を発明していた時代。

 火薬を手に入れてひともうけしようとねらう西洋人ウィリアム(マット・デイモン)とトバール(ペドロ・パスカル)は、万里の長城にぶつかり、捕えられる。莫大な戦力が長城に結集し敵の襲来を待っていた。

 その敵とは、異民族ではなくて、なんと異種生物。饕餮(とうてつ)という怪獣で、60年に1度、大群をなして襲ってくる。そもそも長城を築いたのは、それを防ぐためだったという!

 無慮何万あるいは何十万かの饕餮が、谷の奥からうじゃうじゃとあらわれては長城に押しよせ、壁に跳びあがってくる光景は、すさまじく不気味。娘子(じょうし)軍がバンジー・ジャンプよろしく直下降する勢いで饕餮を斬るが、餌食になる者続出。

 チャン・イーモウは、かつて手がけた武侠アクション「HERO」(02年)や「LOVERS」(04年)のようなファンタスティックで耽美(たんび)的でさえあった映像のスタイルは捨てて、むしろ泥臭いくらいにリアリズムに近よせた、普通の史劇スペクタクルのようなタッチで、荒唐無稽な光景に重力をあたえている。その一方で3D効果も上乗。

 なお、饕餮とは中国ではよく知られた想像上の生きもの。「饕餮文」とよばれる文様が古代の器物に見られ、20元紙幣にも毛沢東とならんで刷られている。

 1時間43分。

★★★★

(映画評論家 宇田川 幸洋)

[日本経済新聞夕刊2017年4月14日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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