木の器、長くつきあう 使い込むほど味
温かみのある木のプレートやボウルを、カフェや雑貨屋で目にする機会が増えた。木の器の魅力は、使ううちに色味や風合いが変わっていくこと。扱い方やお手入れのコツを知って、長くつきあいたい。
「木の皿は手作り感が演出できるので、気軽なおもてなしやホームパーティーにぴったり」。料理研究家の山口はるのさんは木の食器の良さを語る。陶磁器やガラスの器と違って、落としても簡単には割れないので子どもにもお勧めだ。取り扱いが難しそうなイメージがあるが、木ならではの特徴に気を配れば、意外に長く使い続けられる。
木の食器と言ってもさまざまな種類がある。「街の木を活かすものづくりの会」(東京・世田谷)代表で、自身も木の食器を作る湧口善之さんは「色など好みで選ぶ人が多いが、木は素材によって特徴が違う」と話す。例えばヤマザクラは表面の強度が高く、長持ちする。クルミは軽くて丈夫で衝撃に強い。ケヤキは木目がはっきりしていて水に強いが、加工次第で黒くなりやすい場合もある。まずは素材ごとの特徴を押さえよう。
次に塗装の種類。木の食器には表面にウレタンを塗装したものと、「オイルフィニッシュ」と呼ばれる油を塗って仕上げたものがある。ウレタン塗装の器は食材から出た汁が器に染み込みにくいので、日常使いにおすすめだ。オイルフィニッシュだとシミが付きやすいが、濃い色を選んでおくと「多少シミが付いても、それが味わいになり、気にならない」(山口さん)。
つけ置き厳禁 カビはやすりで
木の食器を使うとき、気をつけたいのが洗い方だ。長時間水につけるのは塗装の種類を問わず避けよう。「お湯をかけるくらいなら大丈夫」(湧口さん)だが、水を吸って変形するのを防ぐため、つけ置き洗いは厳禁だ。使い終わったら速やかに洗おう。
食器用の中性洗剤を使って、柔らかいスポンジや指でやさしく洗い、布巾で水分を丁寧に拭き取る。最近は洗った食器を拭かずに自然乾燥する人が多いが「水切りカゴなどに立てかけたままにすると、器の下部に水分がたまり、黒ずみができることもある」(湧口さん)。拭いた後は、風通しの良いところでしっかり乾かしてからしまおう。
長期保管にも注意が必要だ。湧口さんは「使っているうちに器の含水率が上がっていく場合がある。カビの原因にもなる」と指摘する。久々に取り出してみたらカビが生えていた、といった事態を防ぐには「表面の乾燥で安心せずに、中まで完全に乾かすこと」(湧口さん)。密封して保管するなら、乾燥剤を入れるのも良い。
うっかりカビが生えても、あきらめるのはまだ早い。サンドペーパー(紙やすり)でこすって取り除くことができる。紙やすりの表面の目の粗さを示す「番手」が400番以上の、目が細かいサンドペーパーを選ぶ。力を入れず、様子を見ながらやさしくこする。「木目に沿って一方向にかけると、傷が目立ちにくくなる」(湧口さん)。表面の落ちにくい汚れも、同様に削って落とすことができる。
こすった後は、食品衛生法に適合した「木固め剤」と呼ばれる木工用塗料を使って仕上げよう。
木の食器は急激な温度変化に弱い。普通のお皿の感覚で、電子レンジや食洗機には入れないようにする。冷蔵庫で冷やすのも避けよう。そもそも木の器は食品の保管には不向きだ。
和洋問わず 料理にマッチ
料理を盛りつけるときは、一工夫すると器が長持ちする。「ドレッシングや汁気を含んだあえ物は、ココットや小皿に入れてからプレートに載せるといい」(山口さん)。サンドイッチを包むのに使うワックスペーパーを敷くと、木の器の保護と装飾の二役を兼ねておすすめだ。レタスなどの葉物野菜を小皿のように使うのも手だ。カレーは油分が染みたり、色移りしたりするので木の食器には向いていない。
ふだんの食卓に上る料理なら、和洋問わず木の器にマッチする。おもてなしに使うなら「円皿だとよりカジュアルで家庭的になり、角皿を選ぶとおしゃれ感が増す」(山口さん)。おにぎりやいなりずし、ハンバーガーなどの主食とおかずを一緒に載せたワンプレートごはんも、木の食器を使えば絵になる。一人でも大人数でも、いろんな楽しみ方ができそうだ。
(南優子)
[NIKKEIプラス1 2017年4月15日付]
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