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現場経験 いつか海外に

ユニ・チャームは病院や介護施設への紙おむつや尿漏れパッドの販売にも力を入れている。首都圏第1支店(東京・港)で働く堀内悠香子さん(26)は激戦区の東京・多摩地区を担当する。入社以来、同地区で新規顧客を開拓し、成績を上げ続けている。もともと海外志向。「介護先進国」の日本で力をつけることが世界につながると研さんし、自己流の講座開設などを通じて施設の支持を集めた。

「パンツ型のおむつの中央に尿取りパッドをつけてはいてみましょう」。堀内さんは介護施設の職員を前に、おむつのずれに悩むお年寄りの体を抱えて紙おむつの使い方を実演する。自分で考えた「おむつの当て方講座」だ。

1回の講座は30分~1時間。施設に求められれば出向き、週に2~3回開くこともある。ある施設で講座を開いた際は職員にパンツ型のおむつと尿取りパッドの併用で夜間のおしめ交換が不要になると提案したところ、ユニ・チャームの商品に切り替えてもらった。

◇     ◇

堀内さんは2014年4月に入社した。同年10月から首都圏第1支店に配属され、病院や介護施設、老人保健施設に大人用紙おむつなどを売る「プロケア営業」の担当となった。

担当する多摩地区は東京都の面積の53%を占め、営業先は約70ある。都心の高齢者の受け入れが進み、介護市場の競争が激しい。堀内さんは新規顧客を次々と獲得している。

プロケア営業の担当になった時、上司に「どんな仕事でもできる人になってほしい」と言われた。堀内さんが取った行動が資格の取得だ。

入社後半年で「介護職員初任者研修」の資格を取得した。過去には「ヘルパー2級」とも呼ばれ、介護職員の基本業務ができる。堀内さんのように資格を持つ人は少ない。自費で土日に講座に通って2カ月かけて学んだ。

高校や大学時代に東南アジアでボランティア活動をしたこともあって、海外勤務を夢見てユニ・チャームに入社した。入社が決まった時には「海外の消費者に紙おむつや生理用品を売っていきたい」と思った。

入社後の研修で介護の現場を見て、「介護先進国の日本にいれば経験値が上がるのではないか」と考えるようになり、プロケア営業を希望した。日本で能力を磨いて海外で結果を出す――。この発想が自己研さんにつながった。

◇     ◇

着任直後には、担当地区の大病院で競合メーカーに契約を切り替えられる苦い経験をした。

「取られてもあきらめない」との思いで同僚らと再契約の機会を探った。「お困りのことはないですか」。病院の調達担当と話すうち、施設と在宅の2つの介護サービスを利用している高齢者が多いことが分かった。

ユニ・チャームの商品は施設用と在宅用で仕様は同じ。堀内さんは「在宅介護になっても使いやすさは変わりません。使い勝手が分かっているおむつの方が家族も安心できるのでは」と1年がかりで働きかけ、契約を取り返した。大規模な施設でも細かな困りごとを聞き出せるかどうかがカギを握ると痛感した。

家から直行・直帰ができるため、朝に施設を訪ねる前や帰宅する前には卸会社にも立ち寄る。少しでも他社の動きをつかむためだ。得意先にはおむつの使用枚数の推移を示した自作のリポートを渡し、おむつを通じてどう介護活動が変わっているかなどを施設とともに分析している。

「日本の介護の質を上げればいずれ海外の営業でも役に立つ」と話す。経験や知識を身につけて海外勤務に臨もうと、施設の人たちの声にできる限り耳を傾けようとする。将来の自身の姿を重ねることが日々の営業活動の糧になっている。

(佐々木元樹)

 ほりうち・ゆかこ 2014年上智大法卒、ユニ・チャーム入社。同年10月からジャパンプロケア営業統括本部プロケア営業本部の首都圏第1支店(東京・港)で東京エリアコーディネーターを務める。
[日経産業新聞2017年4月12日付]

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