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衰えぬ占いブーム 不安の裏返し 女も男もハマる神秘

NIKKEIプラス1

2017/4/8付 NIKKEIプラス1

むつ市観光協会提供
 占いは女性誌の定番といえるページだ。実は男性向けの雑誌でも根強い人気がある。幸運に身を委ねたい気分は時代を超えて続く。衰えないブームは不安や不満の裏返しかもしれない。

 女性誌で初めて星占いの特集を1970年に掲載した「アンアン」の編集部を訪ねた。占いを載せた女性誌は60年代からあったが、編集長の北脇朝子さんは「毎週必ず星占いの特集ページを載せたのはアンアンが最初」と言う。現在は「恋と運命」といった占い特集号と、「開運レッスン」といった暦の知恵や幸運を呼ぶ暮らしを導く特集号を年2回ずつ出している。

 この特集号は売れ行き好調だ。その背景について北脇さんは「ライフスタイルの変化と、時代の先行きが不透明になったことで、見えない不安が増えている。ポジティブになるヒントや生き方の後押しが必要とされていると思う」と語る。

 60年代から占いや手相のベストセラー本が相次ぎ、アンアンをはじめとした女性誌の占いページは定着した。73年の「ノストラダムスの大予言」を含め第1次ブームが起きた。このころは占いと言えば女性誌が中心だった。

 精神科医の和田秀樹さんは著書「なぜ男はギャンブルに走り、女は占いにハマるのか」で「日本では特に女性が受け身の文化を背負ってきたことが大きい」とし「女性の社会進出がもう少し容易で、容認されているアメリカでは、それほど女性誌をにぎやかな占いページが占めていない」と書く。

 これに対し、アンアンの北脇さんは「むしろ、社会進出した人ほど受け身ではなく、自分の生き方の指針として占いに興味を持つのだと思う」と指摘する。

 79年の「天中殺」や「六星占術」を経て、占い専門誌が登場する第2次ブームでは、新たな動きが生まれた。男性読者が約8割を占めるゲーム雑誌「週刊ファミ通」が89年から占いのページを始めたのだ。林克彦編集長に聞くと「雑誌の様々なコーナーの一つとして占いは貴重な箸休め、あるとうれしいコンテンツという位置づけ」と返ってきた。

 ファミ通で当初から占いを担当する日本占術協会の福田有宵会長は「企業人でも政治家でも野心と不安が大きい人ほど先行きを知りたがる。その欲望に歴史で培われた専門知識と技術で応えるのが占い」と話す。そして「人のためになるのが占いの第一条件。占師はあくまでアドバイザーの立場です」と強調する。

 心理学の世界では、プラシーボ効果(偽薬効果)との関係を指摘する。患者に薬だと信じさせて砂糖を与えると効くといったものだ。例えば、占いで「すてきな出会いがある」と言われ、仕事やプライベートで会う人に心を開くことで特別な関係が生まれることはあるだろう。信じることが幸運を引き寄せる心理的な効果は侮れない。

 占師は英語で「フォーチューン・テラー」つまり「幸福を告げる人」と呼ばれる。それに符合するような調査結果がある。ネット調査会社のマイボイスコム(東京・千代田)のアンケート調査によると、占いに関する意識調査(複数回答)で、「占いは信じない」に次いで「結果が良ければ信じる」という回答が多かった。

 第3次ブームといわれる現在は動物占いやスピリチュアル、パワースポット人気に加え、インターネット上では様々な占いサイトが広がる。暦の研究者として知られる永田久さんは著書「暦の知恵・占いの神秘」の中で「暦の数理に意味づけられた夢と想念が占いとして私たちの前に現れるのである」と書いている。占いは科学ではないかもしれないが、科学としての暦が基礎にある。人をひき付ける魅力がそこにあるのだろう。

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■就職情報にも占星術師

 占師には公的な免許はない。日本占術協会によると、同協会に5年以上在籍して占術の経験を重ね、小論文と面接などの試験に合格すれば「認定占術士」の資格を得る。最近は、就職情報誌が占星術師を職種として紹介するなど「なりたい人が増えている」(福田有宵会長)という。

 青森県のイタコのように、故人と交信して予言や助言をするいわゆるシャーマンはかつて、盲目の人が多かった。「感覚が研ぎ澄まされて霊感が養われ、世間から大切にされた」(福田会長)

 新潟県の盲目の女性旅芸人「瞽女(ごぜ)」も雇用の受け皿や社会的弱者との共生という側面がある。私は日ごろ占いには頼らない。ただ、特別な能力で不安や不満を解消する共存共栄の世界観には少しひかれる。

(大久保潤)

[NIKKEIプラス1 2017年4月8日付]

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